台湾と韓国の違いを統計データを中心とした数字で比較してみました。
台湾と韓国は日本人にとっては近隣国であり、戦前は日本が統治していたという背景があり、良くも悪くも身近な国ですね。
近場で海外旅行をしようとすれば、台湾と韓国がツートップとなり、それぞれの国に旅行をされたことがある方も多いのではないでしょうか。
例えば、台湾の西門町や韓国のミョンドンなどは東京の渋谷と同じような雰囲気さえあります。
何となく、ぼんやりと文化的に違いあったり、似た部分があったりという意見は多くありますね。
また、どちらも経済的に発達していることは分かってはいても、具体的にどのような違いがあるのかということを明確に答えられないのが実状ではないでしょうか?
そのため、個別の統計データで比較することで、各国の社会の特徴や違いがより明確になるのではないでしょうか。
具体的には、国という社会基盤を作る国土や人口の比較、国の経済活動を示す経済指標、社会の状況を示す社会指標などを用いてみました。
このような数字が少しでも頭の片隅にあると、台湾旅行や台湾滞在の際には、少しだけ社会の見方が変わり、現地の人と話をする場面でも役立つことでしょう。
国土
- 台湾:35,801km²
- 韓国:100,210km²
上記の通り、台湾と韓国を比較すると、台湾は韓国の3分の1程度の国土の面積になります。
台湾の国土はおおよそ九州の面積と同じくらいとされていますので、韓国は九州の3倍くらいという見方も出来ますね。
また、台湾は台湾本島の西側に人や産業が偏っているため、体感的には更に狭く感じることも多いのが実状。
人口
- 台湾:2358万人
- 韓国:5147万人
人口は社会を形成する最も重要な要素の一つです。特に、将来の社会にとっては最も影響を与える要素になります。
台湾の直近の人口は2358万人で、韓国は5147万人となっています。
台湾の人口は韓国の人口の2分の1以下となっています。
ここでは直近の人口のみを比較していますが、どちらの国も人口構成では少子高齢化を反映して、高齢者の比率が高く、若い年齢の人口が少ない傾向にあります。
人口密度
上記の国土面積と人口をもとに、人口密度を比較すると、台湾と韓国の人口密度は下記のようになります。
- 台湾:647人/k㎡
- 韓国:513人/k㎡
台湾は世界的に見ても、人口密度が非常に高い社会を構成していると認識されていますが、韓国も同様に人口密度が比較的高いことを示していますね。
ところが、人口密度については数値では現れない現地事情として、台湾は台湾本島の西側に人口が極端に集中しています。
関連記事:台湾の人口‐都市別人口から分布が分かり人口密度の特徴が見えてきた
上記の記事でも書いていますが、島の西側に人口が偏っているため、実際に台湾で生活してみると、人口密度の数字以上に人の密集度を体感します。
政治‐立法府議員数
政治について概観する指標として、立法府(国会)の議員数が挙げられます。
- 台湾:113議席
- 韓国:300議席
立法府の議員数は上記の通り、台湾は113議席に対して韓国は300議席となっています。
人口との比率を考慮しても、台湾の中央政府の議員数は相対的に少ないことを示しています。
この背景にあることとして、台湾では中央政府と地方政府が明確に分けられており、地方分権が強い傾向にあります。
また、台湾では数年前に中央政府の立法委員(国会議員)の議席定数を半減したため、立法府はスリム化されています。
一方、韓国では日本と同様に、中央集権の傾向が強く影響しているのかもしれません。
国家予算
国家予算は国の規模を判断する指標の一つとして用いられることがあります。
台湾と韓国のそれぞれの2018年の国家予算は下記の通りでした。(日本円換算)
- 台湾:7兆円
- 韓国:43兆円
台湾の国家予算は極端に少なく感じるかもしれませんが、上述した通り、地方分権の傾向を受けて、国がすべき政治と地方がすべき政治を切り分けている影響でしょう。
国家予算を一つ挙げてみても、台湾と韓国の社会の特徴がぼんやりと見えてきます。
小さい政府の台湾と中央集権国家として国の力が強く反映している韓国の違いが透けて見えます。
実質GDP
実質GDPは国内総生産から物価上昇の影響を差し引いた経済指標です。
そのため、国の経済規模を示す指標として用いられることが多いですね。
- 台湾:59兆円
- 韓国:160兆円
上記の通り、2017年の台湾の実質GDPは59兆円であるのに対して、韓国の実質GDPは160兆円となっています。
大まかに各国の産業の違いをみると、台湾は半導体メーカーを中心としたハイテク産業が中心となっています。
それに対して、韓国は自動車、家電製品、半導体…と多方面に経済発展の裾野を広げているのが特徴。
産業構造の面では台湾はハイテク産業に一極集中しているため、その分、脆弱性が指摘されますが、韓国は産業の裾野をグローバル化しているため安定性を感じますね。
一人当たり実質GDP
一人当たりの実質GDPは実質GDPを人口比で計算したもの(=実質GDP÷人口)です。
- 台湾:249万円
- 韓国:309万円
国内での経済活動で産み出した経済力を貨幣価値で示すと上記のような結果になったというわけですね。
台湾は約250万円に対して、韓国は約300万円と記憶しておくと覚えやすいかもしれませんね。
少し見方を変えると、台湾は少ない人口で効率的な経済活動をしていると考えられますね。
台湾の企業は労働集約的な生産活動を出来る限り排除して、ハイテク技術をフル活用しているという特徴が想像できます。
経済成長率
経済成長率は実質GDP成長率で測られます。毎年、実質GDPがどれだけ成長したかを図る指標になります。
- 台湾:2.9%
- 韓国:3.06%
直近の経済成長率を比較すると、台湾も韓国も3%程度の経済成長をしていることを示していますね。
台湾はTSMC(半導体メーカー)や鴻海精密工業などのハイテク産業がアップルなどのIT機器の製造販売が好調だという背景があります。
一方、韓国は現代自動車やサムスン電子などの主要企業がグローバル化して、シェアを拡大しているという背景がありそうです。
インフレ率
消費者物価の上昇率をインフレ率と読んでいますが、文字通り、毎年、物価がどれくらい上がったのか、下がったのかを示す指標です。
- 台湾:0.6%
- 韓国:1.94%
上記の通り、台湾のインフレ率は0.6%であるのに対して、韓国のインフレ率は1.94%とされています。
この数値だけ見ると、台湾のインフレ率は低く抑えられているように感じるかもしれませんが、台湾在住の生活者目線では、台湾の日常的な物価は統計データ以上に上昇しています。
一方、韓国は約2%のインフレ率となっており、日本よりも一歩先に日本の目標インフレ率を達成してしまっている状況ですね。
インフレ率は経済成長率の結果付いてくるものという見方もありますが、同時に貧富の差を広げる要因にもなります。
インフレ率はGDPの推移や経済成長率などと併せて考察すると、実質的な経済成長なのか、世界的な物価上昇や為替通貨の影響なのかが見えてきますね。
失業率
日ごろ、他国の失業率になんて気に掛けるようなことはないかもしれませんね。
だからこそ、一度、自国以外の気になる国の失業率を知っておけば、日本との違いも分かりますね。
- 台湾:3.80%
- 韓国:3.68%
台湾の直近の失業率は3.8%に対して、韓国の失業率は3.68%となっています。
どちらも、それ程悪い失業率ではありませんが、日本の失業率が2%台であるのと比べると、やや高めといったところです。
台湾では失業率がグッと上がる時期があります。それは大学などの学校の卒業時期にあたる6月頃です。
と言うのも、台湾では大学在学中に内定をもらうよりも、卒業後に就職活動を始めることの方が多いからです。
平均年収
他人の年収が気になるのと同じく、他国の平均年収も気になるところかもしれませんね。
- 台湾:180万円
- 韓国:334万円
上記の通り、台湾の平均年収は約180万円くらいとなっています。
一方、韓国の平均年収はどれくらいか、調べてみると300万円~600万円台まで…。
一般的に言って、一人当たりのGDPとあまりにもかけ離れた数字になることはないと思ったため、ここでは韓国の平均年収を334万円としてます。
台湾の平均年収に関する詳細は、下記記事を参考にしてみてください。
関連記事:台湾の平均年収と平均月収はいくら?【最新】統計情報を基に検証
教育‐識字率
識字率は教育レベルと測る指標として用いられることが多いですね。
- 台湾:98.7%
- 韓国:99.0%
台湾の識字率は2016年の内政部統計データでは98.7%となっていました。
韓国の識字率は99.0%とされていますので、両国の識字率は同レベルとなっています。
ほとんどの先進国の識字率が99%以上ということを考慮すると、韓国も台湾も先進国と考えられます。
それと同時に、国の発展には社会に教育というインフラが整備されることが前提であり、経済成長と比例していることをよく示していますね。
生活
それでは、実際に台湾で生活してみた経験から、現地での生活事情を交えて、両国の生活の違いを考えてみます。
以下では、台湾と韓国の比較から、日本人の目線で日本人にとって、どっちの国が暮らしやすいのかを出来るだけ客観的に考えてみました。
台湾と韓国で異なる点と日本人にとっての住みやすさ(購読者様)
購読者の方から以下のようなコメントを頂きましたので、日本人にとって台湾と韓国はどう異なるのか、日本人が住むとしたら、それぞれの国で何か違うのかというポイントを中心に私の経験を踏まえて紹介します。
韓国と台湾
よく韓国と台湾が比較されます。感情的に韓国を批判するのではなく、なるべく客観的に比較して、どちらが生活し易いか、比べてみたいと思います。
私の韓国渡航歴は7回くらいだと思います。100回を超える台湾と比較するのは難しいですが、下記の事項を感じました。
韓国:
1.ホテル代が高い。
2.食事代も台湾に比べて高い
3.反日感情が強い。
4.漢字が無いので、わかり難い。
5.平均所得は台湾より、韓国の方が高いと聞いた。
6.韓国は大企業中心の社会、台湾は中小企業中心の社会。台湾
1.漢字が溢れている。
2.食事代が安い。特に自助CANは安い。
3.対日感情が良好。
4.一般的な所得が低い。
5.中小企業が多く、いわゆる大企業のエリートは少ない。中流は個人経営者、夫婦共働き世帯が占めると思われる。
6.韓国に比べて、女性が大事にされている。
7.韓国人に比べて、台湾人は率直。ゆるい気質。韓国の方が競争社会。
同じような所
1.日本経済との結びつきが密接。日本の影響を多く受ける。
2.日本語が出来る人が多い。
3.生活レベル。台湾の方が所得が低いが、その分、物価も安い。上手くかけないところも有りましたが、思いつくままに、書いてみました。
好きか、嫌いかで言えば、台湾の方が好きですが、韓国と日本も仲良くして、もう少し友好的で有って欲しいと、願っています。
住みやすさ
元々、台湾と韓国は、1980年代にはアジアのNIESと呼ばれ、それぞれライジングドラゴン、コリアンエクスプレスという呼称で、アジアの成長経済を担っていました。
私は韓国には居住したことがなく、韓国への渡航歴も5~6回くらいと、海外留学時代に韓国人の友人3人と1ヶ月ドライブ旅行をした程度の経験しかありません。(ご了承ください。)
仕事‐台湾人と韓国人の違いは個人プレーと組織プレー
その経験から言えることは、韓国人と日本人では、物事を進める上での団結力が強いという点で、よく似ているなと感じました。
ところが、彼ら韓国人の視点からは、韓国人は組織内でも自分の意見の主張ばかりしていて結束力がないが、日本人は常に組織の結束力が強固だから、世界の舞台で大企業が活躍しているのでしょう…という見方をしていたのが印象的でした。
そのことについて、現在、台湾で生活していて感じることは、台湾人は個人主義で自分の意見は強く主張するが、それぞれの個をまとめるような組織力が弱いため、物事を進める際、それぞれの個が好き勝手に動くため、組織行動は常にバラバラという印象が強いです。
これは、台湾では中小企業が多く、個人経営者が多い一つの要因ではないかなと思います。
単刀直入な感覚としては、台湾人の多くの人は、みんな社長に成りたがっていて、少し経験を積んで会社を退職して、同業の商売を始めるという流れが多いように感じます。
そのため、街を歩いてみれば、小さな商店ばかりです。最近はエリアチェーン店、全国チェーン店が少し増えてきたのかもしれませんが…
台湾人の国民性として個人主義の文化が潜在的に社会を構成する要素となっていることは、間違いないと思います。
そのため、一緒に仕事をするとすれば、組織的に結束力が強い韓国人と働くほうが、組織で動く仲間としては働きやすいかもしれません。
暮らす‐日本人にとって韓国より台湾のほうが住みやすい理由
日本人が居住するとしたら、やはり韓国よりも台湾の方が住みやすいでしょうね。
その大きな理由は、漢字文化、物価、社会全体の反日感情に対する日本人が受ける印象の3点です。
韓国に行って、最も苦労するのは言葉の問題で、どこに言ってもハングルばかりでハングル語ができないと食事も満足にできないなと感じました。
もちろん観光地に行けば、日本人向けの日本語表記はされていますが、日本人にとっての漢字文化圏のど真ん中(簡体字でもない)の台湾はどこに行っても見慣れた文字で表記されていますので、アジアの中では日本人が最も精神的ストレスなく生活できる国だと思います。
やはり、韓国よりも台湾のほうが物価が随分安いと感じます。韓国の観光地で食事をしたら、日本とあまり変わらないくらいだったと記憶しています。
台湾は、外食文化が発達した国ですが、韓国はそれほど外食文化が主流ではないのか、台湾のようにいつでもどこでも気軽に小吃というわけにはいかないと思います。その点では、台湾は非常に生活しやすいのではないでしょうか。
また、日本に対する国民感情という点では、韓国は国策として反日感情を煽っている部分もあるのか、このような動きは日本と韓国両国にとってマイナスでしかないと思います。
ただ、個人的には、個々の韓国人と付き合ってみると、それほど反日感情に傾いた韓国の方と出会ったことがなく、韓国人は一度仲良くなると、とことん親切にしてくれ頼りになる方が多いと思います。
潜在的に反日感情が強い国で生活することは、やはり精神的ストレスが大きいのでないかなと推測しています。
台湾と韓国の違いの比較一覧表
台湾 | 韓国 | |
---|---|---|
国土面積 | 35,801km² | 100,210km² |
人口 | 2358万人 | 5147万人 |
人口密度 | 647人/k㎡ | 513人/k㎡ |
立法府議員数 | 113議席 | 300議席 |
国家予算 | 7兆円 | 43兆円 |
実質GDP | 59兆円 | 160兆円 |
実質GDP/人 | 249万円 | 309万円 |
実質GDP成長率 | 2.9% | 3.06% |
消費者物価上昇率 | 0.6% | 1.94% |
失業率 | 3.8% | 3.68% |
平均年収 | 180万円 | 334万円 |
識字率 | 98.7% | 99.0% |
まとめ
台湾と韓国について経済指標や社会指標を用いて、2つ国の社会の違いを比較してみました。
20年以上前は、台湾、韓国、シンガポール、香港の4つの国・地域をNIEs(新興経済工業地域)と言って、経済的に成長が著しい地域として注目されていました。
そして、現在の台湾と韓国を比較して見えてきたポイントをまとめとして挙げておきます。
ポイント
- 国土と人口の面から有利な韓国は台湾よりも経済的に発展してきた。
- 国土と人口の面で不利な台湾はハイテク産業を基盤に効率的な経済成長をした。
- 台湾の効率的な経済成長とは半導体分野の開発・製造で成功したこと。
- 台湾は一人当たりのGDPでは韓国よりもやや低いものの経済的に成功している。
- 両国ともに経済成長率を一定以上に維持し、失業率は低く維持されている。
- 表面的には台湾のインフレ率は低く維持され、韓国の近年のインフレ率は高め。
- インフレ率を考慮しても、台湾の平均年収は韓国と比較して低い。
- 両国ともに経済成長とともに教育インフラが整備された。
コメント
素晴らしい比較シリーズですね
暮らすには、台湾が良いですね。
人の良さ(一部は違いますが)
お金持ちでも、偉そうにしない台湾人
お金持ちは、偉そうにする韓国人
美人、イケメンは、大事にされる韓国
台湾も大事にされますが、やはり性格。
特に女性が男性を選ぶのは、性格第一。
寒い韓国、過ごしにくい。
そんな感じを受けます。
コメントありがとうございます。
記事を書いていて気が付いたことですが…
・台湾の国家予算は思っていた以上に少ない
・反面、台湾のGDPは比較的高い
台湾で生活してみて分かることは、台湾のインフラは日本と同レベル。
少ない歳入で、効率的に社会資本に投資できているように感じます。
経営に例えれば、小資本で、高い業績を出している企業となります。
ヒト、モノ、カネの経営資源の効率的な利用のお手本のようなモデルです。
台湾人は商売上手だと言われることがありますが、数字を整理すると、正にその通りの結果になっています。
健康保険
もしご存知なら、一つ質問しても良いですか?
ビザは、何となくわかるのですが、居留証を持っている方は、
月500~700NTくらいで、健康保険を持っておられますが、
少ない時間しか働かない、日本語教師でも居留証がもらえたら、
健康保険を持つことが出来ると思いますが、何か、ご存知ですか?
確かに、クレジットカードの付帯保険は、重病の時は、
便利ですが、普段使いの健康保険が欲しい外国人は多いと思います。
まあ、ちゃんと働いていないのですから、日本で病院にかかるべきかも
しれませんが。
コメントありがとうございます。
居留証を取得できるという前提であれば、台湾の全民健康保険には加入できます。
1.現地企業から就労ビザのサポート
2.居留証の取得
3.台湾での6ヶ月間の滞在
4.戸政事務所で全民健康保険に申請
以前は6ヶ月間の継続滞在が必要でしたが、現在は一時帰国しても合計で6ヶ月間の滞在実績でよいとか…
全民健康保険については、下記記事も参考にしてみて下さい。
台湾の全民健康保険のまとめ|月額費用と加入条件や規定
ありがとうございます。
大変、参考になりました
先ほど、北京の大気汚染のニュースをやっていました、
大変ですね