台湾の不動産価格の動向について、私が台湾現地で肌で感じた不動産事情とデータを基に、台湾現地からレポートします。
日本ではバブル崩壊後リーマンショックを経て、ようやく不動産価格が戻りつつあり、主要都市での不動産価格が上がり始めています。
台湾では直近の過去15年間で、主要各都市の不動産は右肩上がりに上昇し、今なお上昇している都市もあります。
ところが、直近数年間では、その上昇率が鈍化している都市や下落し始めている都市も出始めました。
そこで今回は、台湾の主要各都市の不動産価格に注目し、台湾の不動産事情の現状を主に最新のデータを用いて、詳しく解説します。
台湾の不動産事情の特徴
台湾の不動産価格は首都・台北が飛び抜けて高くなっています。丁度、日本の東京の中心部が世界的に見ても、その価格が屈指の高さであるのと同じです。
そのため、一般庶民はもはや台北に住居を構えることすら困難な状況になっています。そのため、新北市やその他の周辺都市に住むことになります。
その結果、台湾全体では、台北を取り巻くように位置する新北市が台北のベッドタウンのようなポジションで台北の不動産価格に便乗するかのように上昇してきました。
その他の都市は、おおむね台湾北部の都市の不動産価格が比較的高く、台湾中部から南部へ行くほど不動産価格は低くなる特徴があります。
そのため、現在でも、相対的には、台北周辺都市よりも台中市の方が不動産価格は低くなっています。更に、台中市よりも高雄市の方が、不動産価格の上昇は低く抑えられているのが現状です。
台湾各都市の不動産価格の時系列変動
それでは、台湾の主要各都市の不動産価格の変動を示す指数を基に、時系列の不動産価格の上昇率を確認してみましょう。
下記のデータは、2001年の各都市の不動産価格を100という指数で基準とした場合の毎年の都市毎の上昇率あるいは下落率を示しています。
台湾 | 台北 | 新北 | 桃園 | 新竹 | 台中 | 高雄 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|
2001年1stQ | 100.0 | 100.0 | 100.0 | 100.0 | 100.0 | 100.0 | 100.0 |
2001年 | 96.4 | 94.5 | 96.9 | 108.2 | 97.2 | 93.4 | 97.8 |
2002年 | 100.1 | 97.5 | 101.3 | 112.2 | 99.4 | 103.0 | 92.4 |
2003年 | 107.3 | 105.6 | 108.3 | 117.2 | 106.5 | 110.1 | 101.8 |
2004年 | 122.0 | 121.6 | 126.2 | 131.0 | 108.8 | 127.0 | 103.4 |
2005年 | 132.0 | 133.4 | 136.3 | 138.3 | 111.4 | 137.6 | 111.4 |
2006年 | 147.1 | 153.2 | 151.6 | 143.6 | 122.0 | 146.6 | 115.2 |
2007年 | 152.6 | 164.9 | 156.2 | 150.0 | 126.3 | 156.3 | 115.9 |
2008年 | 151.7 | 163.5 | 154.9 | 155.1 | 133.9 | 153.5 | 119.5 |
2009年 | 178.5 | 202.0 | 181.6 | 176.1 | 143.3 | 183.3 | 128.6 |
2010年 | 206.8 | 236.6 | 210.6 | 192.9 | 149.6 | 199.3 | 150.6 |
2011年 | 226.9 | 251.7 | 235.6 | 233.4 | 163.3 | 226.0 | 168.8 |
2012年 | 249.0 | 269.2 | 255.2 | 269.7 | 179.1 | 264.3 | 194.5 |
2013年 | 286.5 | 304.9 | 296.4 | 308.0 | 199.1 | 288.6 | 231.5 |
2014年 | 292.6 | 294.3 | 306.5 | 310.6 | 208.8 | 294.2 | 245.4 |
2015年 | 280.6 | 274.0 | 293.4 | 293.6 | 213.6 | 294.6 | 250.2 |
2016年 | 277.1 | 271.0 | 290.1 | 292.9 | 212.2 | 287.7 | 241.4 |
2017年 | 282.0 | 267.7 | 295.6 | 295.1 | 212.2 | 302.7 | 257.1 |
2018年1stQ | 283.3 | 276.3 | 296.1 | 301.0 | 220.5 | 295.6 | 256.2 |
(参照元:上記データは信義房屋様のデータを加筆修正)
台湾と各都市の不動産価格の動向と現状
台湾
- 2003年から徐々に不動産価格は上昇
- 2004年以降に更に急激に上昇を始めた
- 2008年~2012年までは概ね毎年20%以上の上昇
- 2013年には40%以上の上昇を示しバブルのピーク?
- 2015年には下落に転じバブル崩壊の兆候?
台北市
- 2001年~2002年には不動産価格は下落していた
- 2003年から上昇に転じた
- 2009年~2013年の5年間で200%→300%というバブルのピーク
- 2013年にピークを迎え、2014年以降は下落に転じた
- 2017年には下落したが2018年1stQに再度上昇
新北市
- 概ね台北市に追随するかのような不動産価格の変動
- 台北市の価格上昇とは1年遅れで価格は上昇
- 2014年に不動産価格がピークを迎えた
- 2015年から不動産価格は下落に転じた
- 2017年以降、再度、上昇傾向
桃園市
- 主要都市の中では唯一、2001年から上昇し続けている
- 新北市同様に2014年にピークを迎える
- 2015年以降、徐々に価格は下落
- 2017年以降、やや上昇に転じている
新竹市
- 2003年以降に徐々に価格は緩やかに上昇
- 主要都市の中では最も価格上昇が低い
- 価格のピークも2015年と最も遅い都市の一つ
- 2018年、やや上昇傾向
台中市
- 価格上昇に転じたのは新北市と同様に最も早い2002年
- 2002年~2005年まで台湾の不動産の価格上昇を牽引
- 2008年までは価格の上昇率は比較的緩やか
- 2009年~2013年の5年間で急激な上昇
- 2017年に価格のピークを迎え、2018年は下落基調
高雄市
- 主要都市の中では異質の動きをしている
- 各都市の内で最も価格上昇の時期が遅く、その時期は2005年
- 2010年から不動産上昇の動きが出始めた
- その後、2015年にピークを打ったかに見えた
- 2016年に一旦下落したものの2017年第一四半期に再度上昇
- 2017年にピーク、2018年は下落基調
まとめ
上記データを基に考えると、台湾では各都市とも2014年前後を節目に、不動産価格がピークを迎えたことが分かります。
その後、2016年まで下落を続けていましたが、2017年にはやや上昇する都市もあります。そして、2018年現在では台湾北部の都市では上昇、台湾中部以南の都市では下落基調にあります。
この背景には、不動産価格の急激な上昇により、貧富の差が拡大していることも相まって、台湾政府が不動産価格を抑制する政策を打ち出している現状があります。
そして、その裏には、不動産で成金に成り上がった富裕層とは相反して、一方では住居費の上昇や物価の上昇による生活費の負担が重くなっている一般市民の不満があります。
台湾の不動産価格はあまりにも高くなり過ぎたため、日本の不動産価格と比べても非常に高く感じます。例えば、家族で生活する為のマンションやアパートを購入しようとすれば、台中でさえ中古物件が5,000万円~であり、新築マンションであれば一億円以上になります。
日本のバブル崩壊直前に、その当時は政府も不動産バブルを警戒して、極端な金融引き締め政策を引き金にして、不動産の総量規制など、こぞってバブルを潰しに掛かった状況と重なる部分が多いように思います。
台湾の経済のキャスティングボートを握る裏の主役は中国でしょう。少なからず台湾の不動産バブルの要因を作っているのは中国マネーでもあります。台湾と中国との関係(両岸関係)が更に悪化することと、台湾経済の衰退には相関していることを忘れてはなりません。
台湾全体のマーケット気運がイケイケどんどんの楽観論から急激に冷え込み、悲観論に転じた時には、台湾人の熱しやすく冷めやすい国民性を考慮すると、過去に日本が辛酸を舐めた経験を繰り返す可能性は十分あるだろう。
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