台湾ではスクーター(原付バイク)が非常に多く、人口当たりの所有率も世界一のレベルとなっており、台湾でバイクが多い理由を少し考えてみましたので、台湾現地からレポートします。
初めて台湾に旅行へ来た時に台湾のバイクの多さに驚いた方も多いでしょう。日本では、原付バイクを利用している方の比率はそれほど多くはないですが、台湾では一家に1台どころか1人一台くらいのバイク天国です。
そこで、台湾の街を眺めながら、自転車の生産量が世界一(?)の台湾で、なぜ台湾には、これ程までバイクが多いのかを考えてみたというわけです。
一般的な台湾人にとってのスクーターはどんなもの?
日本ではミニバイクと言えば、50ccの原付バイクが主流かもしれませんが、台湾では150ccのミニバイクが最も多いようです。
それは、台湾では原付バイクは1人で乗るものというよりも、夫婦やカップルの2人で乗るものという認識が強いため、少し大きめのモーターを採用しているのでしょう。
ちなみに、日本の運転免許証でも手続きを取れば、台湾で原付バイクに乗車することができますが、日本の普通運転免許証で運転できるバイクは50ccまでです。
そのため、台湾で一般的に普及している150ccのミニバイクを運転する場合は、新たに運転免許試験場に行き、免許証を取得しなければなりません。
台湾でミニバイクが多い理由を私の周りの台湾人の方たちに聞いてみたところ、最も多い回答は、「便利」だからとのことでした。あまりにも期待通りの回答で、拍子抜けしました(笑)。確かに便利ですね。歩くよりも早く移動でき、手軽に乗ることが出来ますからね。
日本以上に台湾でスクーターが普及している5つの理由
それではいつでも何処へでも手軽に移動できる「便利」という理由以外の理由を日本人の視点から考えてみました。
- 免許証の取得
- 交通事情
- 年収
- 維持費
- 駐車場
台湾でのバイクと免許証の取得
台湾でバイクの運転免許証を取得することは、それ程難しくなく、自動車免許証ほど面倒くさくなく、簡単に運転免許証を取得できます。
私は、まだ台湾で運転免許の試験を受けたことがないですが、友人の情報によると筆記試験と実技試験や諸手続きなどを含めても2時間程度で取得可能(?)だそうです。
また、日本の運転免許証を台湾の運転免許証に切り替える方法は下記をご参照下さい。
関連記事: 台湾で自動車に乗るための運転免許証の取得方法
台湾でのバイクと交通事情
次に、一言で言えば、交通事情になりますが、台湾の道路事情は、歩行者や自転車をメインに設計されておらず、自動車やバイクを中心に整備されているようです。
例えば、台湾の郊外を歩いてみれば分かりますが、ほとんどの場所で歩道はなく、自転車が走る道路もほとんどありません。(一部の地域ではサイクリングロードあり)
台湾のほとんどの道路では、自動車が走る車線がほとんどです。例えば二車線あれば、左側が自動車が走り、右側はバイクが走る(バイクが少ない場合は自動車も走る)のが暗黙の了解になっています。また、バイク専用レーンがある車線もあります。
車とバイク利用の比較で、バイクに劣勢を感じるのは、雨の日と排気ガスが多いことでしょう。そのため、雨の日は雨具を着るしかありません。
また、バイクの場合は大気汚染の悪影響を直接受けることになります。そのため、バイク走行中に排気ガスの公害を少しでも予防するため、バイク運転者はマスク着用者が大半です。
台湾でのバイクと年収
台湾と日本を比較すると貧富の差が激しいことは、以前、何度も触れていますが、日本との年収差を考えると台湾人にとっては、バイクの価格と平均的年収のバランスが丁度一致しているのだと思います。
台湾での原付バイクの価格は、一般的な新車の場合で50,000~60,000元程度です。これは大卒初任給の2倍程度でしょうか。そして、中古車であれば、一台の価格は15,000元~程度とのこと。これくらいの価格であれば、年収に関係なく、誰でも手に入れやすい筈です。
台湾では自動車の場合は、中古車であっても日本ほどには安くなく、ましてや新車の場合は日本よりも高いように感じます。
東京などの大都市ではなく、地方都市で生活していれば、日本では学校を卒業すると、自動車を購入することが多いのではないでしょうか。それは、年収300万円程度であっても、ローンを組めば簡単に購入できるからでしょう。一方、台湾の年収レベル考えるとそうはいきません。
比較的若い年齢層で平均的な台湾人の年収事情を勘案すると、自動車を購入するにはハードルが高すぎるのでしょう。一方、ミニバイクであれば、ローンを組まなくても購入できるのかもしれません。
このように、台湾人の年収とミニバイクの価格のバランスが丁度一致しているため、年収を考慮すると台湾社会というマーケットに比較的安く購入できる原付バイクが普及する土壌があったのだと思います。
台湾でのバイクと維持費
バイクに乗る場合に最も多く掛かる維持費は、ガソリン価格でしょう。台湾でのガソリン価格も日本と同様に、原油価格の変動などの影響を強く受け、日々変動しています。
ガソリン価格は日本と比べても台湾の方が若干安くなっています。(日台の物価差を考えると安いとはいえないかもしれませんが)自動車とバイクの燃費を考えると、圧倒的にバイクの方が燃費が良いです。そのため、この辺りもお金に対する台湾人の合理的な思考経路が働いているのかもしれません。
その他、台湾でもミニバイクに対して保険や税金も必要ですが、自動車と比較すれば、それらの諸維持費もバイクであれば非常に安く済みます。
台湾でのバイクと駐車場
そして、交通事情という観点から自動車とバイクを比較すると、街中では自動車の駐車スペースはほとんどありません。そのため、街中で車を運転する時には駐車場を探すだけでも一苦労です。
このように、駐車時のことを考えるとバイクを利用するメリットは絶大です。マンション住まいの方は地下に専用駐車場がありますが、自動車の駐車場代はとても高いのです。
その点、バイクであれば、それ程広い駐車場スペースは必要ありませんね。ところで、台湾の膨大な数のバイクはどこに駐車していると思いますか?
実は、画像のようにマンションやアパートの周囲に勝手に駐車しています。マンションの歩道は常にバイク駐車場と化しています。マンションの所有地内には駐車しないように、黄色のテープが張られていたりします。
そして、マンションの裏側に行ってみると、画像のように道路の3分の1くらいをバイクが占拠して、駐車場のように隙間がないくらいギッシリと並べられています。このように、台湾では歩道や道路の路肩は常にバイクで溢れ返っている状態になります。
台湾社会でのスクーターの位置付け
台湾では、交通手段として原付バイクを使う人が非常に多いです。信号待ちで車を停車していると、アリの巣の近くに砂糖を置いたかの如く、見る見るうちに原付バイクの群れができてしまいます。そして、信号が青に変わると、一目散にその群れがまるで暴走族の如く、群がりつつも散らばっていきます。
台湾では成人年齢は18歳とされているため、自動車もバイクも18歳から免許証の取得が出来ます。当然、日本とは異なり、台湾では18歳に満たないと運転免許証を取得できません。
ところが、原付バイクは運転が簡単なこともあり、免許なしで運転している人も随分いるそうです。それが、理由かどうか分かりませんが、台湾ではバイクの事故を目にすることも非常に多いです。
バイク運転に関わる台湾に特徴的な交通ルールとマナー
特に台湾の地方都市に行くと交通ルールはあってないようなもので、残念ながら信号無視などが多く、交通マナーはあまりよくありません。そのため、交通監視をしている警察官が多いこともあり、街角で警察官に捕まっている人も頻繁に見かけます。
台湾でバイクを運転する場合に特徴なことは、「左折」です。台湾では日本とは異なり右側通行ですので、右折する場合は信号が青であれば、そのまま右に曲がれば問題ありません。
台湾でバイクを運転している人は左折する時にはどうするか? 一般的には、バイクは車線数に関係なく、最も右側の車線あるいは路肩を走行します。そのため、左折をする際は、常に車線変更を強いられます。
只でさえ多いバイクが左折するために車線中央に集中してしまったら、交通渋滞を招くだけではなく非常に危険です。そのため、台湾でバイクは必ず二段階左折をしなくてはいけません。交通ルールに緩い台湾人ですが、二段階左折に関しては、ほとんどの人が遵守しています。
台湾でのバイク所有率は世界一!?マーケットに合致したバイクビジネス
台湾を一度でも訪れたことがある方は、分かると思いますが、どこの国でも同じことですが、台湾の都市部のラッシュアワー時の交通渋滞は凄まじいです。
その中でも目を見張ることは、都市部の中心地での原付バイクは、凄まじい台数です。自動車を運転していて、信号待ちをしていると、10秒と経たないうちに、原付バイクに囲まれてしまいます。
そんな訳で、とある夜市(ナイトマーケット)に行ったときにヘルメット専門店を見かけました。その中には変わったヘルメットもあります。台湾でもバイクを乗る時は、ヘルメットの着用が義務付けられています。
ところが、田舎の方に行くと、ヘルメットなしで原付バイクを運転している光景もよく見かけられます。都市部では、ノーヘル違反や信号無視で捕まっている人をたまに見かけますが、大抵、捕まっているのは男性です。まさか、台湾の警察は、女性には甘い?ってことはないと思いますが…。
ヘルメット専門店以外にも、台湾の都市部の空気は排ガスで汚染されていますので、バイクを乗車する時には多くの人はマスクをします。そのため、多種多様なマスクを取り扱うマスク専門店も存在します。
女性の場合は、スカートでバイクに乗ることも多いため、その際にはスカートが捲くれ上がってしまいますので、スカートをはいてバイクに乗る時に専用の足元を覆う前掛けのようなものも販売されています。日本では、存在しないようなミニバイクを運転する方にターゲットを絞った専門店が存在するのも台湾の特徴です。
画像はヘルメット専門店で、文字通りヘルメットしか販売していません(笑)。
台湾のスクーターについてのまとめと私見
私は台湾では、まだバイクを運転したことがありませんが、バイク天国というメリットとデメリットが共存していることを日々感じています。
例えば、救急車が出動するような多くの交通事故はバイクが絡んでいます。また、都市部の大気汚染の最も大きな原因は、密集した地域でバイクから排出される排気ガスでしょう。
このようなデメリット以上に、台湾では利用者の一個人の視点から見れば、原付バイクを利用するメリットが大きく、交通事情やマーケットを含めた台湾社会も、そのような市民の需要を受け入れているように感じます。
今後、台湾が更に経済発展をして、MRTや路線バスなどの都市機能が今以上に整備された暁には、現在は移動手段として主流を占めるミニバイクの需要が低くなり、その時には台湾政府も本格的に環境問題に取り組むようになり、台湾での交通手段の変革が起こるのかもしれません。
コメント