台湾の加権指数の最近30年間の推移から台湾経済の動向を考察してみました。
加権指数とは台湾の株式指数です。日本で言えば、日経225平均株価のようなものです。
加権指数は、台湾証券取引所上場の全普通株からなる時価総額加重平均指数。指数は 1966 年を基準に算出されている。
(参照元:ブルームバーグ)
台湾加権指数の過去30年間の推移
加権指数の過去30年間の推移グラフを下記に挙げておきます。
このグラフの結果から分かることは、以下の通りです。
- 過去30年間では1990年前後のバブル期がピーク
- 過去30年間で最高指数が12,682に対し最低が1,063
- 台湾の株価は過去30年間で概ね右肩上がりで上昇
現在の台湾の景気は、この加権指数が示すように良いのかどうか?
台湾(台中)の街並みを見る限りでは、公共工事をはじめマンション建設など景気刺激に直接結び付く、ハードへの投資は日本とは比べものにならないくらい投下されていて建設業を中心に活況を呈している印象が強いです。
しかし、台湾人の方に景気が良いか聞くと、それほど景気が良い訳ではないようです。若者の雇用問題や中高齢者の生活状況を見る限り、生活者の視点からはそれほど好景気を感じることはあまりありません。
このことから考えられることは、現在の中国との両岸関係でも分かるように、富裕者層には加権株価指数に見る好景気を感じつつあるかもしれません。
一方、街中を見る限り、再生資源(空き缶や段ボールなど)を拾い集めている高齢者などをよく見かけるように、低所得者層には厳しい景気状況にあるように感じます。
このような貧富の差による好不況の捉え方が異なる状況は、景気が上昇する局面では必ず通る道なのか?
それとも、台湾政府が富める者はより裕福に、経済的弱者はより貧困へと追い込む政策に舵を取っているからなのか?
これから2年後3年後にはその答えが分かることでしょう。
その時期には、現政権を率いている蔡英文総統は任期を終えるでしょう。
過去30年間の加権指数の動向をこのように眺めてみると、マクロ的には右肩上がりで上昇を続けているように見えます。加権指数株価は、日本の日経225平均株価と同じような動きをしています。
そして、加権指数株価から見ると台湾の株価指数は世界経済の影響に左右されるリスクが強く、中国との外交の停滞の影響は見受けられない結果となっています。
台湾元の通貨価値が下落し、台湾の株価を示す台湾加権指数も下落しています。日本への一時帰国中あるいは一時帰国準備中は何かと為替相場が気になるところです。そのため最近は、台湾の通貨である台湾元の変動に注目していたのですが、台湾元が下落傾向にあるようです。
台湾ドルは米ドルに相関
一般的には、台湾ドルは米ドルに連動する傾向にあります。(下記参照)
関連記事:台湾ドルと中国人民元と香港ドルの関係を相関係数と散布図で解説
つまり、下記のような相関関係が強いと言うことです。
- 円安ドル高 → 台湾ドル高
- 円高ドル安 → 台湾ドル安
中国株式の下落が台湾株式の下落に影響
一時期、中国の株式マーケットが混乱し、中国株が急落したことがありました。その後を追うかのように、台湾の株価指数を示す台湾加権指数も下落したことがありました。
そして、安値圏を下回り、さらに下落を続けそうな様相でした。この当時は国民党の馬政権になり、中国寄りの政策を採ってきたため、台湾経済は中国経済に依存する傾向がありました。
中国経済が好調な時には好況が続きますが、一旦、中国経済が減速し始めると、その影響を直接受ける形になりました。中国株式の下落は台湾株式の下落に大きく影響を受ける経済関係になったと思われました。
台湾ドル安と台湾株安から分かること
もう上記に述べた通りですが、下記のような現象が確認できました。
- 中国元が下落すると台湾元も下落する
- 中国株が下落すると台湾株も下落する
- 中国経済が悪化すると台湾経済も悪化する
経済面では中国も台湾も同様の動きをして、台湾の景気は中国の景気と一心同体となり、一つの経済体になったようでした。
ただし、中国の景気が台湾の景気に影響を及ぼすことはあっても、台湾のマーケットは小さいため、台湾の景気が中国の景気に影響を与えることは非常に少ないでしょう。
経済面だけに関して言えば、馬政権以降は中国の属国になってしまったようにも感じました。同様に、日本も中国経済の影響を直接受けるという点では共通していますが…。
日本の場合は、アメリカという最大の貿易国があるため、必ずしも中国景気だけに影響を受けることはないでしょう。その意味では、日本経済はアメリカの属国といえるかもしれませんね。
台湾ドル安と台湾株式の下落のその先は?
台湾元安と台湾株安が続くとどのようなことが予測されるでしょうか?
台湾は日本と同様に資源最貧国で、原油をはじめとした資源を輸入に依存しています。そのため、台湾元が下落することで海外からの調達価格が上がることになります。
一方で、海外への貿易額が上がれば、為替変動が要因の調達価格の上昇によるコスト高と輸出から得られる利益のバランスをとることができるのですが、電子部品を主力とする貿易輸出も低迷することになるとそのバランスが崩れ、コストの上昇と貿易輸出の赤字という二重苦に見舞われることになります。
このような理由から、台湾(人)の立場からすれば、急激な台湾通貨の下落と台湾株式の下落が同時発生しないことを望むのみでしょう。
台湾の株式マーケットの現在位置は?
台湾の株式マーケットにとって最も寄与度が高い銘柄は、TSMCと鴻海精密工業の2トップでしょう。特に、TSMCの個別銘柄が台湾加権指数に及ぼす影響は最も大きくなります。
TSMCはアップルの成長とともに、企業業績を上げてきました。そのため、TSMCの業績はアメリカ景気に最も影響を受けやすいと考えられます。
もちろん、アメリカ景気だけではなく、アップルの業績に対して最も影響を受けると言うことは言うまでもありません。
そのため、今後の台湾加権指数をウォッチする視点として、中国景気よりもアメリカ景気に注目をすべきかもしれません。更には、アップルをはじめとしたTSMCのコアを担う半導体に関連する企業の動向に注目すべきでしょう。
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