台湾人が良い仕事を求めて、海外就職する傾向が強くなっているという現地事情を台湾現地からレポートします。
昔から華僑には台湾人が多くいますので、外国へ行くと台湾人も比較的多く出会いますね。
このように、国境をあまり気にしないのが台湾人の海外就職の根底にあるのかもしれません。
それでは、台湾現地での台湾人の海外就職についての現在の事情はどうなのか?
近年の若い年齢層の台湾人の海外就職に関する現地報道をもとにして、現地の若い世代の外国での就職についての傾向をご紹介します。
台湾人の国内の就職事情
台湾国内での就職状況
台湾国内での就職状況について、現地では新卒の初任給は28Kと表現されることがあり、月収28,000元程度とされています。
日本円にすると、10万円強といったところで、これくらいの月収でも生活していくことができるのが、台湾の物価水準と台湾人の生活スタイルなのですが…。
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やはり、何年も同じような給料水準が続いており、年収が低いのが若年層の不満になっているという現地事情があります。
そのため、待遇の良い会社があれば、転々と転職を繰り返すというのが若者たちの行動傾向で、その背景にはインターネットなどによる転職市場が彼らを支えています。
台湾国内には就職口が少ないのかというと、そういう訳でもなく、例えば、直近の失業率に注目すれば、3.8%と、日本ともそれ程変わらない水準です。
また、インターネットの転職サイトを見ても、求人情報で溢れており、台湾国内では若年層の就職口は多くあるというのが現状です。
就職のために海外へ
今回のメインテーマとなりますが、近年、台湾人の若年層を中心とした人たちの中には、台湾ではなく、海外で働くことを希望する人が多くなっています。
日本でも、最近では海外で就職を希望する若年層が増加してるように、その傾向は台湾でも同じような状況です。
海外就職の流れのベースとなっているのは、企業側から見ると、海外拠点を作ることで、人件費や固定費を抑えられるというコスト面で、将来の海外マーケットの礎を作っておくという経営戦略面の両面が見え隠れします。
そのような企業の流れの中で、海外で求人募集している企業が増えていることを受けて、海外での就職が容易になったという背景があります。
それに加えて、インターネットの急速な発展や働き方の変化により、国を選ばずに仕事ができる環境が整備されてきたことも海外就職を促す原動力となってきたのでしょう。
オーストラリアへのワーキングホリデー
台湾人の海外就職を象徴することとして、オーストラリアのワーキングホリデーについて、事例を挙げておきます。
台湾人の間でもオーストラリアのワーキングホリデーは非常に人気があるビザです。
近年ではワーキングホリデーができる国の中では最も人気があり、その理由は現地でのアルバイトの時給が非常に高いからです。
台湾のTV番組などでは頻繁に報道されていますが、フルーツピッキングのアルバイトを1ヶ月ゴリゴリにやれば、一ヶ月の給料は50万円を超えるそうです。
台湾の大卒初任給が月収10万円程度であるのに対して、大学を休学して、オーストラリアにワーホリに行けば、月収50万円になるというのは若者にとっては魅力的に映るのでしょう。
つまり、海外で働くことで、何らかの付加価値が付き、さらに台湾で働くよりも、お金を稼ぐことができるということを象徴しています。
台湾人の海外就職に関する統計データ
台湾人の海外就職について、統計データ上はどのような現象が現れているのでしょうか?
近年は、年々、海外で就職する台湾人の絶対数が増加しています。
以下の通り、2017年は前年と比べて、8,000人増加して、過去最高を突破しています。
- 2016年:728,000人
- 2017年:736,000人
就職先の国別の人数は、下記の通りです。
- 中国 :40.5万人(55%)
- 東南亜:10.9万人(14.8%)
- 米国 :10.1万人(13.7%)
※中国には香港とマカオを含む
2009年と2017年で就職先の国を比較
- 中国 :-4,000人
- 東南亜:+32,000人
- 米国 :+17,000人
- その他:+29,000人
上記の通り、中国を除いた地区では海外就職先として人数が増加していることが分かりますね。
台湾人の海外就職が増加する要因
台湾人が海外就職をする背景には、どのような要因があるのか?
なぜ、台湾人は海外就職をするのか?
上記のような疑問について、いくつかポイントを挙げて考えてみます。
台湾の経済状況は?
台湾での生活でも感じることですが、近年の台湾国内の経済状況は悪くはないというのが実感。
実際に、リーマンショックの際には経済的ダメージがあり、さらに2016年には政権交代により中国との両岸関係が悪くなりました。
それにもかかわらず、台湾国内の経済状況は比較的良好ですので、仕事口がなくて海外就職を余儀なくされているという状況ではないことが分かります。
その反面、東南アジア諸国との関係を強化するなどの政策転換により、経済状況は維持されています。
南向政策
台湾政府が国を挙げて実施している新南向政策とは、東南アジアやオーストラリアやニュージーランドを含めた国々との経済的な結びつきを親密にしていこうという政策です。
実際に、台湾現地では東南アジアから観光客や労働者が年々増加しているのが現地事情です。
そして、上記の統計にもあるように、台湾企業も東南アジアを重視して積極的に外国へ進出しているため、東南アジアでの海外就職先も増加しているのでしょう。
チャンスがある
実際に、海外就職を希望する若年層の労働者や現地で働いている台湾人へのインタビューでもあるように、海外就職の一つの魅力は「チャンスが広がっている」と考えている人が多いようです。
狭い故郷(台湾)を離れて、世界で羽ばたきたいというのは、台湾人だけではなく、日本人の海外就職勢も共感できる点ではないでしょうか?
給料がやや高い
報道のインタビューにもあるように、海外就職をすることにより、給料はやや高くなる傾向にあるようです。
日本の場合であれば、海外就職というと、アメリカや欧米などの一部の国を除いて、待遇麺では海外就職をすると給料が低くなる傾向ですね。
ところが、台湾では中国、韓国、東南アジアでも給料は比較的高くなるようです。もちろん、それなりの仕事と責任が掛かるポジションになることは言うまでもないことでしょう。
まとめ
以上、台湾国内での台湾人の海外就職が増加して、海外で就職する台湾人が過去最高を記録したという現地事情を紹介しました。
現在は、旅行のみならず、生活拠点や働く場所も国を超えてボーダレス化が進みつつある過渡期にあるのかもしれません。
経営サイドから見て、働く際の業務上のノイズがなくなった場合には、今後は一気に海外就職が急加速することを暗示しているのかもしれません。
最後に、台湾人の海外就職の増加についてのポイントをまとめておきますので、参考にしてみてください。
この記事のポイント
- 【現地事情】台湾人の若年層の給料は比較的低い
- 【現地事情】少しでも待遇が良い企業で働きたいという傾向が強い
- 【統計】海外就職をする台湾人は年々増加傾向
- 【統計】東南アジアや米国への海外就職が増えている
- 【要因】新南向政策の下での海外進出企業の増加
- 【要因】台湾人の若年層の働き方の考え方に対する変化
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