台湾での日本の自動車メーカーについて、現地での軌跡と現状について、台湾現地からレポートします。
台湾旅行をされたことがある方は、台湾での日本車の多さに驚かれた人も多いのではないでしょうか?
台湾での自動車メーカーは日本のメーカーがシェアの大半を占有しています。
そこで、以下では台湾での日本の自動車メーカーの歴史的背景を辿り、現状の市場シェアを確認し、台湾で日本車の人気が高い理由を考察します。
台湾での日本の自動車メーカー
台湾での自動車で、日本のメーカー・ブランドの乗用車は、下記の通りです。
- トヨタ
- 日産
- ホンダ
- マツダ
- 三菱
- SUBARU
- スズキ
日本のトラックメーカーは、下記の通りです。
- 日野
- 三菱ふそう
- いすゞ
各メーカーの合弁会社
日本の自動車メーカーは、どの会社も台湾の現地企業との合弁会社との協力関係を形成しています。
台湾での日本メーカーと台湾メーカーの合弁会社とブランドは、下記の通りです。
- 裕隆汽車(Luxgen、Nissan、Dongfeng重車)
- 中華汽車(CMC、Mitsubishi、Fuso)
- 福特六和(Ford、Mazda)
- 國瑞汽車(Toyota、Hino)
- 台灣本田汽車(Honda)
- 台灣五十鈴汽車工業(Isuzu Forward中型貨車、LT134客車底盤)
(引用元:維基百科)
上記の通り、台湾では日本の自動車メーカーは一部の会社を除き、台湾の現地企業と協力して合弁企業を設立してきたことが確認できます。
これは、海外で事業をする上でのポイントとなる考え方で、日本企業が台湾進出をする際の成功要因の一つとも考えられます。
各メーカーの概要
以下では台湾で人気がある主要な自動車メーカーの現地法人または合弁協力会社の概要を台湾進出の年度順に紹介します。
裕隆汽車
- 会社名:裕隆汽車製造股份有限公司(Yulon Motor Co., Ltd. ,裕隆汽車)
- 設立年:1953年
- 合弁相手:日産自動車
- 生産拠点:苗栗縣三義郷西湖村
- 販売会社:裕隆日產汽車
中華汽車
- 会社名:中華汽車工業股份有限公司(CMC、中華汽車)
- 設立年:1969年
- 合弁相手:三菱自動車
- 生産拠点:桃園市楊梅区
- 販売会社:中華汽車
福特六和
- 会社名:福特六和汽車股份有限公司(福特六和)
- 設立年:1969年
- 合弁相手:マツダ自動車
- 生産拠点:桃園市中壢区
- 販売会社:品爵汽車
國瑞汽車
- 会社名:國瑞汽車股份有限公司(國瑞汽車)
- 設立年:1984年
- 合弁相手:トヨタ自動車
- 生産拠点:桃園市中壢区、桃園市観音区
- 販売会社:和泰汽車
台灣本田汽車
- 会社名:台灣本田股份有限公司(台灣本田)
- 設立年:2002年
- 合弁相手:本田技研工業
- 生産拠点:屏東縣屏東市
- 販売会社:台灣本田
日本メーカーの台湾進出の歴史
上記の時系列の会社概要の紹介では、日産が最も早い時期に台湾進出をしたように見えますが、実は最初に台湾へ進出したのはトヨタです。
戦後、台湾に日本の自動車メーカーが進出したのは和泰商行(現在の和泰汽車)がトヨタの自動車を輸入販売したことから始まります。
その後、1984年に和泰汽車とトヨタ自動車は現地で合弁会社(国瑞汽車)を設立するに至っています。
日産自動車は、1957年に裕隆と協力関係を結ぶと、1960年に裕隆汽車製造有限公司に社名変更し、乗用車と商用小型トラックの生産を開始しました。
中華汽車は裕隆汽車の創業者が1969年に設立した会社で、翌年の1970年に三菱自動車と協力関係を結んで、1973年には桃園市で三菱ふそうの大型トラックとデリカの生産を開始しました。
福特六和は、元々、トヨタ自動車と合弁関係にあり、当時はミニエースやコロナを生産していましたが、現在はフォードとの提携関係を築いており、日本メーカーではマツダと資本関係があります。
台湾本田は主要な日本メーカーの中では最も後発組となり、2002年に屏東県の大慶汽車の工場を買収し、現地生産を開始しました。2007年には製部門を分割し、台灣本田汽車股份有限公司を設立しています。
台湾での日本の自動車メーカーの市場占有率
世界の自動車メーカーの市場占有率
世界の自動車メーカーの市場占有率(シェア)の状況(2017年)は、下記の通りです。
順位 | メーカー | 販売台数 | 前年比 |
---|---|---|---|
1位 | VW | 1074万1500台 | (4.3%増) |
2位 | ルノー・日産 | 1060万8366台 | (6.5%増) |
3位 | トヨタ自動車 | 1038万6000台 | (2.1%増) |
4位 | GM | 990万台 | (4%減) |
5位 | ヒュンダイ | 726万台 | (8%減) |
6位 | フォード | 660万台 | (1%減) |
7位 | ホンダ | 530万台 | (7%増) |
8位 | FCA | 474万台 | (0%減) |
9位 | PSA | 363万台 | (15%増) |
10位 | ダイムラー | 327万台 | (9%増) |
(引用元:Nikkei Asia Review)
上記の通り、フォルクスワーゲンが世界の販売台数ではNo.1で、ルノー・日産連合、トヨタが上位トップを競っています。
上記の3つのメーカーに加え、GMを含めて、世界の4つの自動車メーカーが世界の自動車シェアを占有しているということが分かります。
台湾での自動車メーカーの市場占有率
台湾での自動車メーカーの市場占有率は、どのようになっているのでしょうか?
下表は自動車販売台数(2017年)を基準にした台湾での自動車メーカーのマーケットシェアを示しています。
順位 | メーカー | 販売台数 |
---|---|---|
1位 | トヨタ | 131273台 |
2位 | 中華三菱 | 48209台 |
3位 | 裕隆日産 | 42630台 |
4位 | ホンダ | 34071台 |
5位 | ベンツ | 27932台 |
6位 | マツダ | 22357台 |
7位 | フォード | 20181台 |
8位 | BMW | 18813台 |
9位 | ラクスゲン | 14983台 |
10位 | VW | 13765台 |
台湾での自動車メーカー別に販売台数をみると、台湾での人気メーカー・ブランドが一目瞭然ですね。
一目で分かるように、圧倒的にトヨタの人気が高く、販売台数で断トツで抜きん出ていることが見てとれますね。
そして、意外かもしれませんが、2位には中華三菱がランクインしています。
この要因は、中華三菱は商用車を製造・販売しており、詳しくは後述しますが、バンタイプの商用車の販売が好調なことが背景にあります。
3位以下は、日産とホンダと続き、5位にランクインしているのが、なんとメルセデスベンツです。
この結果を見ると、高級車もよく売れるというのが台湾の自動車マーケットの特徴の一つなのかもしれません。
また、意外かもしれませんが、フォルクスワーゲンは10位と台湾では低迷していることが注目されます。
上記の台湾での自動車シェアの結果から見えてくることは、世界シェアと比べて、台湾では日本車の人気が高く、台湾国内の市場占有率に、その傾向がよく表れていますね。
台湾で人気が高い車種
(引用元:CARLINK鏈車網)
上表は台湾での直近の単月(2018年11月)での自動車の車種ごとの販売台数の1位~5位までを示しています。
以下では、台湾で販売台数が多く、人気が高い車種を画像と併せて紹介します。
トヨタ Altis
- 車種:トヨタ カローラ Altis
- 排気量:1800cc
- 燃費:15.6km/L
- 価格:65万~80万台湾ドル
トヨタ RAV4
- 車種:トヨタ RAV4
- 排気量:2000cc
- 燃費:13.6km/L
- 価格:85万~100万台湾ドル
ホンダ CR-V
- 車種:ホンダ CR-V
- 排気量:1500cc
- 燃費:14.6km/L
- 価格:75万~85万台湾ドル
CMC Veryca
- 車種:CMC Veryca
- 排気量:1300cc
- 燃費:12.3km/L
- 価格:50万~60万台湾ドル
日産 Kicks
- 車種:Nissan Kicks
- 排気量:1500cc
- 燃費:17.3km/L
- 価格:70万~80万台湾ドル
台湾で日本車の人気が高い理由
上記のように、台湾では日本車の人気が高い現状を確認できたのではないでしょうか。
普通車のセダンタイプとして人気があるのがトヨタのカローラ(Altis)です。
また、台湾での最近の傾向として、全般的にメーカーに関係なく、SUVタイプの車種が人気が高いのがトレンドです。
以下では、台湾で日本車の人気が高い理由について、現地事情と個人的な考察を交えながら考察してみます。
品質
自動車に限らず、日本製の製品の品質に対する信頼性は非常に高いのが台湾で実感することです。
ある台湾人の知人に日本車の人気が高いのはなぜかと聞いてみたところ、開口一番で、日本車は品質が高いからと応じられました。
このように、台湾での日本ブランドへの信頼度は非常に高く、その信頼を支えているのが品質の高さということです。
価格と実用性
日本車以外の欧米車も台湾では販売されていますが、価格が非常に高いことに驚きます。
海外からの輸入車のため、高級車は1000万円程度しますので、日本車の価格は相対的に安く感じるのでしょう。
さらに、比較的低価格で、機能的で実用性が高いのが日本車の特徴でしょう。
品質の高さを含めて、一言でまとめれば、コストパフォーマンスが最も高いのが日本車となります。
小型車と交通環境
台湾で車を運転して気が付くことの一つは、道幅もあまり広くなく、バイクが多いこと。
このような交通環境を考慮すると、小型車が最適で、アメリカのような小型トラック車のような車体が大きな車はマッチしないという実状があります。
また、台湾では路上に駐車場が設けられていますが、大きな車体の車は駐車スペースにも困ってしまうため、日本の小型車が現地事情に適合しているのでしょう。
歴史
ご存知の通り、戦前は日本が台湾を統治していた歴史があり、台湾の人にとって日本は最も親近感を感じる国となります。
さらに、上述したように、戦後の日本の自動車メーカーの台湾進出は他国のメーカーより先んじて台湾に進出してきました。
そのため、台湾での自動車マーケットを先行者有利で販売網を広げてきたという歴史的な背景があります。
合弁と政財界との関係
日本の自動車メーカーは現地の台湾企業との合弁で現地での足場を固めてきたという軌跡があります。
同時に、企業同士のつながりを通して、政財界との関係についても良好な友好関係を築いており、現在も日本企業と台湾企業との経済的な結び付きが強いのが実態。
現地工場で現地の台湾人を雇用して雇用機会を作り、台湾に税金を納め、台湾の経済と社会に間接的に貢献してきたことを示しています。
合弁企業という形式で現地の経済界を通して、企業イメージを強化して、現地に根ざした経済活動をしてきたことも日本車の人気を支えている要因のひとつでしょう。
ブランド構築
日本車は品質が高いという信頼性のイメージを定させながら、台湾社会に日本ブランドの構築をしてきたことが人気の背景にあるのでしょう。
高品質な日本製品という日本ブランドを毀損しないことが、今後の台湾での日本ブランドの人気を永続的に続けるポイントとなりそうです。
まとめ
以上、台湾での日本の自動車メーカーについて、過去から現在の歴史的背景、現状の台湾での自動車メーカーの実状、台湾での日本メーカーの人気やシェアを考察しました。
台湾での現状の自動車マーケットの状況や現地で日本車の人気が高い事情を少しはシェアできたのではないでしょうか?
最後に、台湾での日本の自動車メーカーについてのポイントをまとめておきますので、参考にしてみて下さい。
この記事のポイント
- 日本の自動車メーカーは戦後、いち早く、台湾市場に参入
- 日本メーカーは台湾の現地企業との合弁会社により提携協力関係を構築
- 台湾では日本車は品質が高く、信頼性の高いブランド力を醸成
- 現状、台湾では日本の自動車メーカーは高い評価を受けている
- 結果、台湾での自動車シェアの大半を日本車が占有している
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