台湾と日本の違いは?政治・経済・社会について数字で比較検証

台湾と日本は政治、経済、社会という軸から数字を使って比較すると、どのような景色が見えて来るのか?

台湾社会を概観するために統計データを使って、2つの社会を比較することで、台湾と日本の違いを考察して見ましょう。

台湾へ観光旅行をするだけであれば、台湾人と深く交流する機会はないかもしれません。

ところが、台湾に長期間滞在したり、台湾に留学したり、台湾へビジネスや出張で訪れる場合は、現地で少なからず台湾人と交流する機会があることでしょう。

そのような際に、日本に興味がある台湾人は日本について知りたいと思う方も多くいます。

このような場面では、日本人としては自国である日本の基本的な情報を知っていると同時に、台湾のことも知っていると、話題作りにもなります。

逆に、自国のことも他国のことも知らないと、相手から見下されるようなことも考えられます。

そこで、以下では台湾と日本の違いを、政治、経済、社会に関する基礎的な情報をまとめつつ、(単純比較ですが)両国の違いを比べてみました。

その結果、台湾の社会の特徴が少しだけ見えてきました。結論のキーワードを挙げれば、「コンパクト」と「効率的」になります。

 

 

政治

台湾の政治体制

  1. 戦後~1987年:国民党による一党独裁体制
  2. 1990年代以降:李登輝政権以降に民主化
  3. 現在:民主進歩党(民進党)と中国国民党(国民党)の二大政党+少数野党

戦後の台湾の政治体制を大きく3つに区分すると、上記のように、一党独裁体制の時代、民主化の時代、二大政党の時代に分けられます。

台湾の国会議員

日本では国会議員にあたる代議士のことを「立法委員」と呼称しています。

つまり、国会に相当する「立法院」に所属する議員を立法委員と呼んでいます。

なお、日本では両院制ですが、台湾では一院制の立法府となっている点が異なりますね。

台湾の立法委員は113人で構成され、4年ごとに直接選挙で改選されます。

立法委員の113議席の内訳は、下記の通りです。

  • 小選挙区:73議席
  • 原住民:6議席
  • 比例代表・海外華僑代表:34議席

2018年時点の各党の所属議席数は、下記の通りです。

  1. 民進党:68議席
  2. 国民党:35議席
  3. 時代力量:5議席
  4. 親民党:3議席
  5. 無党団結聯盟:1議席
  6. 無所属:1議席

台湾と日本の比較

台湾日本
政治体制民主共和制立憲君主制
政府の長蔡英文安倍晋三
立法府立法院国会
議員名称立法委員国会議員
議員数113議席707議席
衆議院465議席
参議院242議席

日本では人口10万人当たりの総議員定数は0.57人で、国際的には人口に対して定数が非常に少ないとされています。

それに対して、台湾では人口10万人当たりの総議員定数は0.48人となり、更に少ないのが特徴です。

ただし、2008年までは台湾の立法委員定数は225議席でしたので、以前は議員定数が多かったのですね。

2008年にザックリと議員定数を半数に削減して、コンパクトになったと言うわけです。

 

関連記事:台湾の400年の歴史

関連記事:台湾の歴史・文化・社会を知るための書籍

 

経済

台湾のGDP

  • 実質GDP:16兆3,350億台湾ドル
  • 一人当たり実質GDP:693,012台湾ドル
  • 実質GDP成長率:2.9%

(引用元:JETRO,2017年の実績)

一方、日本の実質GDPは2017年ベースで約531兆円とされています。

一人当たりの実質GDP(2017年)は419万円となります。

同時期の実質GDP成長率は1.7%ですので、台湾の経済成長率が日本を上回っていることになりますね。

台湾と日本の数値を比較して、台湾に対する日本の状況をまとめると、下記の通りになります。

ここに注目

  • 実質GDP:台湾(約59兆円)、日本(約531兆円)→9倍
  • 実質GDP/人:台湾(249万円)、日本(419万円)→約1.7倍
  • GDP成長率:台湾(2.9%)、日本(1.7%)→0.58倍

消費者物価

台湾の消費者物価上昇率: △0.3%(2015)、 1.4%(2016年)、0.6%(2017年)

(引用元:JETRO,2017年の実績)

台湾の過去3年間の消費者物価上昇率は比較的低く維持されているという数値を示していますね。

ところが、実際の生活で見えて来る物価は数値以上に上がっている印象を強く受けます。

おそらく、食料品などの生活に直接関連する物価上昇率は比較的高く、家電製品や家賃など価格にインパクトがある品目の物価は競争により抑制されている等。

価格が上昇している品目と維持・下落している品目が相殺されて、数字の上では全体として消費者物価は低く抑えられているのでしょう。

失業率

台湾の失業率:3.8%~3.9%

(引用元:JETRO,2017年の実績)

過去3年間の実績を確認すると、台湾の失業率は3.8%~3.9%と安定しています。

2018年時点の直近の日本の失業率は2.2%、アメリカの失業率が4.0%を考慮すると台湾の失業率は悪くはないでしょう。

国家予算

  • 歳入:1兆9,191億7,500万台湾ドル
  • 歳出:1兆9,668億6,230万台湾ドル

(引用元:中華民国行政院、2018年予算)

歳出・歳入は日本円(3.6円/台湾ドル)で約7兆円程度の規模だということが分かります。

一方、日本の2018年の国家予算(一般会計)は97兆7,128億円です。

日本と台湾の国家予算を比較すると、台湾の国家予算は日本の14分の1程度となります。

一人当たりの国家予算を日本円ベースで計算し、台湾に対する日本の比率を求めると、下記の通りになります。

ここに注目

  • 国家予算:台湾(7兆円)、日本(97兆円)→約14倍
  • 国家予算/人:台湾(約30万円)、日本(約77万円)→約2.5倍

平均年収

台湾の平均年収:約48万台湾ドル(約180万円)

一方、国税庁の「民間給与実態統計調査」では、日本の平均年収は422万円とされています。

上記の平均年収の数値から、日本の平均年収は台湾の2.3倍程度となります。

実は、台湾の平均年収は業種や職種により大きく異なります。

そのため、一概に全国民に当てはまるわけではありません。

台湾の平均年収については、下記記事で詳しく紹介しています

関連記事:台湾の平均年収と平均月収はいくら?【最新】統計情報を基に検証

 

社会

人口

台湾の人口:2358万人

台湾の人口は2018年時点で2358万人とされています。

一方、日本の人口は2018年10月時点で1億2644万人です。

上記より、日本の人口は台湾の人口の5倍程度と覚えておけばOKでしょう。

関連記事:台湾の人口‐都市別人口から分布が分かり人口密度の特徴が見えてきた

面積

台湾の国土の面積:35,801km²

台湾本島の面積は、35,801平方kmで日本の九州とほぼ同じ程度の広さです。

 

一方、日本の国土の面積は378,000km²とされていますので、日本は台湾の10倍以上の国土面積が有ることが分かりますね。

人口密度

台湾の人口密度:647.67人/k㎡

台湾は世界でも屈指の人口密度が高いことで知られています。

一方、日本の人口密度は337.64人/k㎡です。

上記の数値から台湾の人口密度は日本の約2倍程度と覚えておけばOKでしょう。

実際に、台湾で生活してみると分かりますが、主要都市では明らかに日本とは人口密度が高いことを実感できます。

とにかく、バイクも乗用車も人も多く、人がひしめき合って暮らしていることを日々実感しています。

関連記事:台湾の人口‐都市別人口から分布が分かり人口密度の特徴が見えてきた

治安

台湾の治安は良いのか悪いのか?

しばしば議論されることですが、台湾で暮らしている中で実感することは、日本と同じくらい治安は良いという結論になります。

一般的には、大都市になればなるほど中心都市での犯罪が多く、治安が悪くなるというのが定説なのですが…。

統計データを調べてみると、台北の治安はその他の地方都市よりも、むしろ犯罪率が低かったりします。

世界の国際都市として、台湾の中央政府と台北市が治安の維持に努めている結果なのでしょう。

台湾の治安や犯罪について、詳しくは下記記事にまとめていますので、ご覧ください。

関連記事:台湾の治安‐犯罪の多い都市と滞在中に注意したいことと危険な場所

教育 – 識字率

  • 台湾の識字率:98.7%
  • 日本の識字率:99.0%

社会の成熟度は教育レベルにより押し上げられるのが常です。

教育レベルを国際的に測る指標として識字率も一つです。

そこで、識字率を調べてみると、上記の通り、15年ほど前の数字になりますが、かなり高い指標になっています。

直近の指標ではもう少し高いはずですが、いづれにしても、文字が読めない人がほとんどいないと言ってもよいでしょう。

 

まとめ

以上、政治、経済、社会に関して、台湾と日本を対比させて、各種統計データを用いて比較してみました。

以下に、台湾と日本の違いを一覧表で比較してまとめてみましょう。

台湾日本
国土面積35,801km²378,000km²
人口2358万人1億2644万人
人口密度647人/k㎡337人/k㎡
立法府議員数113議席707議席
国家予算7兆円97兆
実質GDP59兆円531兆円
実質GDP/人249万円419万円
実質GDP成長率2.9%1.7%
消費者物価上昇率0.6%0.35%
失業率3.8%2.2%
平均年収180万円422万円
識字率98.7%99.0%

(為替レート:3.6円/台湾ドルにて換算)

上表の通り、日本と台湾の政治、経済、社会の統計データを比較して見えてきたことが一つあります。

それは、台湾の政治・経済・社会に共通することは「コンパクト」というキーワードになります。

人口当たりの政治、人口当たりの経済、人口当たりの社会、これら全てに共通していることは、「コンパクト」。

見方を変えると、効率的な政治、効率的な経済、効率的な社会と言い換えることも出来ますね。

具体的には、政治面では国家元首である総統も立法委員も直接選挙で国民から選ばれ、立法システムが一院制のため、時間を掛けずに意思決定がされます。

また、2008年に議員定数を大幅に削減したため、国家予算の負担も軽くなり、コンパクトな小さな政府となったことが印象的です。

経済面では、国土や人口を勘案すると、非常に効率よく経済成長をしてきたことが特徴として挙げられます。

例えば、国家予算に対するGDP、人口に対するGDP、国土に対するGDPという見方をすれば、日本以上に効率的な経済成長をしていることがよく分かります。

あるいは、社会面についても、人口が日本よりも少ないながら、少ない予算の中で日本と同じ程度のレベルで治安を維持していることなど、コンパクトな社会を形成していることが数値に現れていますね。

最後に、台湾と日本の違いを比較して見えてきたポイントを挙げておきます。

ポイント

  1. 台湾の政治、経済、社会に共通することは「コンパクト」「効率的
  2. 少ない議員定数と一院制によりスピーディな政治上の意思決定
  3. 少ない人口&少ない国家予算での効率的な経済成長
  4. 人口密度が高いながら、少ない予算での効率的な治安維持と教育レベル

コメント

  1. 敏度 より:

    最近先生の台湾政治に関する文章は考えさせることが多いです、私の日本語力でしっかり表現できませんため、コメントを控えました。しかし台湾の立法院は「効率的」、「よりスピーディ」の点にはどうしても疑問があります、もし台湾総統と立法委員過半数の政党が対立すれば(朝小野大)、国家が4年間、下手をすると8年間動けられません、日本の制度では首相もしくは国会議員はコロコロ変わる事可能性があります、これも不効率の原因の一つかもしれませんが、「政府を変える効率」があります、こう見るとそれぞれの制度に利点があると思います。

    • いいぞっ より:

      コメントありがとうございます。
      ご指摘頂いた通り、政治制度には一長一短がありますね。
      台湾の場合は、総統・内閣と一院制の立法院で与党が議席数で過半数を取れば、政治が前へ進みやすくなります。
      日本の場合は、内閣・衆議院、参議院で与党が議席数で過半数を占めれば、政策を推進しやすくなります。
      (過去には与党と野党が衆議院と参議院でそれぞれ過半数を占めていた(=ねじれ国会)ため政治が停滞していました。)
      現在は、台湾も日本も与党が議席数で野党を圧倒しているため、政策を推進しやすく、政治が前へ進んでいますね。
      逆に、与党の議席数があまりにも多くなると、圧制になって少数派の意見が切り捨てられやすくなります。
      台湾は日本より地方分権が進んでいるのか…、数年前に立法委員の議席数を半分に削減して、スリム化して効率の良い政治制度になっているように感じます。
      一方、日本は10年以上前から国会議員の議員数を削減すると言いながら、ほとんど前へは進んでいません。
      このあたりの政治的な判断と実行力について、台湾の政治のスピード感を感じます。

タイトルとURLをコピーしました