海外留学・日本留学をする台湾人が多い理由は何?遊学も多過ぎ!

海外留学をする台湾人が多い理由を、台湾で生活した経験と彼ら台湾人と生活を共にして分かり始めた台湾人の思考を基に、台湾現地からレポートします。海外留学をしたことがある方であればご存知の通り、台湾人の海外留学経験者は非常に多いですね。

それは、台湾で生活していても、知り合った人の中でも思った以上に人が欧米や日本へ留学経験者であったりします。更に極端な話をすれば、大学で教鞭をとっている教員の方たちの経歴を見れば一目瞭然です。非常に多くの人が、欧米や日本へ留学して海外でPh.Dや博士号を取得しています。なぜ、台湾人の海外留学経験者はこれ程まで多いのでしょうか?その真相を考えてみます。

 

台湾人は海外留学する人が多い

私も以前、1年間アメリカに留学(語学研修)していたことがありますが、その(遠い)昔でさえ、10人程度のクラスに日本人と同じくらい台湾出身者が在籍していました。その当時は、韓国人が大挙して米国を初めとした英語圏へ遊学していた留学ブームの時期でしたので、最も多い出身国は韓国でした。

それに次いで、日本人と台湾人が同じくらいいました。人口比率を考えると、日本人は台湾人の5倍以上です。そのことを考えると、留学している人数も5倍以上出会ってもおかしくないのですが・・・。

現在は中国経済の発展を背景に、日本を含めた海外の大学や大学院では中国人が溢れかえっていることでしょう。私が在籍した大学院でも中国人留学生がかなり多くいました。その中でも、台湾人は昔も今も、多くの人が海外へ留学しています。これが、海外留学に関する台湾人の現状です。

 

略奪された歴史の反映 移住できる国へ

台湾の歴史を紐解いてみると、台湾の400年の歴史でも分かる通り、400年の間、外国から植民化され続けてきた過去があることが分かります。極論を言えば、台湾原住民からすれば、今なお漢民族に統制され植民化されていると考えることさえ出来るわけです。

このような歴史的背景を考えると、またいつ、外国に国を乗っ取られるか分からない・・・そんな無意識の感情が遺伝的に台湾人に組み込まれていても不思議ではないでしょう。現在でさえ、国民党政権から民進党政権に移行し、中国との関係は不透明な方向へ向かっています。このまま、中国経済の膨張に伴い、台湾も中国に飲み込まれてしまうのではないかという潜在意識があるのは周知の事実でしょう。

有事の際には、いつでも逃げ込める退避地を確保しておくというのは常套手段です。かつて、国民党が中国・南京から台湾へ逃げ込んできたように、多くの台湾人が有事の時には、移住先としての海外拠点を確保するしているのではないでしょうか。そのため、裕福な家庭の親は子孫を海外へ留学させ、あわよくば海外へ移住させているようにも感じます。こう考えると、台湾人は強かな国民ですね。

このような考え方は日本人には思いも付かない発想かもしれません。一般的には、日本人が留学をする場合は、数年で日本へ帰国することを前提に海外へ向かいます。ところが、台湾人の留学先を考えてみると、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドなどの国は、かつては比較的永住権を取得しやすい国として知られていました。そして、事実、これらの国では台湾人移民や香港人移民が非常に多い国としても知られていますね。

※日本が台湾を統治していた歴史時代背景が台湾人が日本語学習や日本への留学に影響しているのであろうと言う話は別記事にするとして割愛します。

 

面子と富の象徴

台湾人を含めた中華民族の特徴のひとつとして、「面子」文化があります。台湾の面子に関する私の印象は下記記事を参照してください。
台湾人にとって大切な面子文化と日本の世間体文化

日本人とは少し異なり、中国人と同じように台湾人も面子は非常に重要です。一般的に、多くの台湾人は面子を潰されると激怒します。お金の次に面子が重要、あるいはお金以上に面子を大切にしている台湾人は多くいます。特に、富裕層の台湾人ほど面子を大切にする印象を受けます。

自分の子供が海外留学をして海外で生活をしていることは、台湾人にとっての一つの「富の象徴」と考えられているのかもしれません。言うまでもなく、海外留学には非常に多くのお金が掛かります。ましてや、台湾人の平均的年収からすれば、留学に伴う費用は日本人が考えている以上の金額と考えられます。
台湾人の平均月収と平均年収はいくら?|統計情報を基に検証

このことを考慮すれば、自分の子供を海外留学させることは、裕福な台湾人の富の象徴とも考えられます。実際に、台湾人の行動の「あるある」習慣の一つの家族紹介では、聞いてもいないのに、自分の息子や娘が、海外留学、海外の大学卒業、海外に居住していること、など自慢げに話されたりすることが多くあります。このような行動を目にすると、日本人の視点からは、「大人のエゴ」が透けて見えたりすることさえあります。

 

教育熱:幼稚園から英才教育が当たり前

台湾の教育熱はかつての日本の受験戦争を見ているかのように感じます。街を歩けば、「補習班」(学習塾)に当たるというくらい、教育ビジネスが蔓延っています。幼稚園からの英才教育は当たり前の台湾では、私立幼稚園では英語の授業さえ当たり前のように組み入れられています。

幼稚園の時からabcを教えられ、小学生や中学生にもなれば放課後は学習塾へ直行して、英語と数学を学ぶという実態が台湾の過熱した教育熱の現状です。このように育てられた子供たちは、英語プログラムが充実している欧米系ハイスクールに入学し、高校卒業後はそのまま海外留学へ向かうと言うルートが出来つつあるように感じます。

 

学歴社会

日本とは異なり、台湾はコネ社会と同時に学歴社会だと強く感じます。例えば、就職する時には、台湾では最も人脈が威力を発揮しますが、その次に重視されるのは学歴のように感じます。

例えば、企業別の給料を比較してみれば、学歴社会の一端を見ることが出来ます。一般的に、台湾では国内企業(台湾企業)の給料は、外資系企業(日系企業も含む)の給料は非常に高く設定されています。つまり、台湾では外資系企業である日系企業のサービスを受けようとすれば、それ相応の高い対価が必要になることになります。例えば、台湾でBIG4と呼ばれる大手会計事務所のスタッフの給料は非常に高いものですが、その企業が相手にしている企業は日系企業をはじめとした外資系企業で、会計サービスの対価も非常に高くなっています。
※台湾は貿易業が盛んで外資系企業が多いのも台湾人に留学志向が高くなる要因かもしれません。

話を元に戻すと、このような給料の高い企業に就職しようとすれば、高学歴が必要条件になります。こうして醸成された高学歴社会では、結局のところ、高学歴同士の競争になり、学歴の劣る者は弾き飛ばされていくわけです。台湾で生活してみて分かった現実ですが、台湾ほど親の所得と学歴が密接に相関している社会はないのではないでしょうか。

 

まとめ

度重なる外国からの台湾へのプレッシャーという歴史的な背景が台湾人の心の奥底に有事の際は台湾からの退避と言う意識的あるいはそのような無意識の感情を生んでいるのではないでしょうか。その延長線上に、子孫を海外へ送り込み、海外の移住拠点を子供に託しているかのように感じます。

また、台湾人特有の面子文化にとって、子供の海外留学は家族紹介の自慢話に花を添えます。自分の子供が海外の大学を卒業すれば、子供への教育投資の成功は富の象徴をも意味しているようにも感じます。日本人もそのような側面がないとは言えませんが、謙遜の美徳を重んじる世間体文化の日本社会ではそこまで海外留学を大っぴらにしないのも事実です。

教育熱が過熱しきっている台湾社会では、小さい頃から英語学習を重視し、その延長線上には海外留学が存在し・・・裕福な台湾人は子供を投資の対象として考え、子供の教育に見境なく投資しているようにさえ感じます。そして、台湾は現代に至るまでに高学歴社会が形成されてきたのでしょう。

ポスドクが溢れかえる日本では、もはや学歴社会は崩壊し始めている現状を考えると、台湾社会は日本の10年前あるいは20年前を見ているようにも感じます。いずれ、台湾は10年後あるいは20年後には日本が辿った道を歩むのではないかと思います。

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