台湾から日本へのインバウンド観光で、今後台湾人の需要が高まりそうな観光資源について、台湾現地からレポートします。
円安主導による爆買い需要が一巡して、高価な家電製品を中心とした商品群から、日用品の商品群へとシフトしてきていると言われています。
そして、さらに日本への旅行リピーターの目的は、モノからサービスの消費へと変化し始めているとも伝えられ始めています。
そこで、台湾社会の状況を観察する中で、今後、台湾人が日本へ観光をする場合の消費行動はどこへ向かう可能性があるのかを検討してみました。
「買う」「食べる」ための観光旅行は永遠に続かない
なぜ台湾人は日本への旅行を選んでいたのか?
1ドルが120円以上になっていた円安効果もあり、私の友人や知人も日本への観光旅行をしていた方が多くいます。その当時、彼らに日本へ旅行へ行く理由を聞いてみると…。
多くの方は、円安で安く旅行が出来ること、距離的に近いため短期間で旅行が出来ること、日本と台湾の航空便が増えたため旅行がしやすくなったこと、などが挙げられました。
台湾人の観光旅行の目的は?
彼らの日本への観光旅行の目的は、ショッピングとグルメがほとんどでした。日本への観光で印象的だったことや観光で、どこへ行ったのかという質問をすると…。
大型家電店、有名ショッピングモール、アニメキャラクターの専門店など、主に「買う」ための観光が最も多く、次にガイド本やテレビなどのマスメディアで知られるようになったグルメが目的の「食べる」ための観光が多いわけです。
まだまだ、日本へのインバウンド観光は続くと思いますが、旅行リピーターは毎回同じ商品を購入して、同じようなグルメを食していても飽きてくることでしょう。
逆に考えれば、日本人でも台湾LOVEな方が何度も観光で台湾に来ても、同じ場所や同じグルメを食べていても楽しみの幅は広がりませんね。そうなると、次に考えられる観光旅行の目的は何があるでしょうか?
台湾にはないレジャー・アクティビティに大きなチャンス
台湾人が好きな観光地はどこ?
台湾人の知人などに日本へ旅行するとしたら、北海道と沖縄の二択であれば、どちらを選ぶかという質問をすると、案の定、多くの台湾人は北海道へ行きたいと答えます。
それは、台湾では一部の山間部以外では雪を見ることが出来ないだけではなく、雪と戯れて遊ぶことも気軽には出来ません。そのため、台湾人にとって「北海道=雪国」のイメージが強い観光スポットを必然的に選択するわけです。
台湾人が観光で求めることは何?
雪国で楽しむことと言えば、スキー、スノボー、スケートになります。台湾では、このようなウィンタースポーツが出来る施設がほとんどありません。
ましてや、これらの冬のスポーツ用品が販売されているお店を見かけたこともありません。今後は、台湾にはないアクティビティがテレビなどのマスメディアで紹介され、観光庁やそのような観光資源がある各都市が一体となって、観光客を誘致すればブレークする可能性は十分あります。
台湾人が最も観光をする時期はいつ?
このような冬のスポーツのシーズンは、日本では12月から3月くらいまでになるでしょう。この時期に、最も多くの台湾人が旅行できる期間は、毎年2月頃の春節(旧正月)です。
ここにターゲットを絞り、台湾からのインバウンド客を取り込み冬のアクティビティの楽しさと日本や日本人の御もてなしを堪能してもらえれば、場合によっては、毎年の常連客になってもらえるチャンスもあることでしょう。
観光工場にも大きなチャンスがあり
台湾が政府を挙げて取り組んでいることとは?
台湾では、政府主導で観光資源の開発に乗り出しています。必ずしも、ターゲット客は海外からのインバウンドに限定しないで、国内での各都市間のインバウンドを狙ったものも多いです。
その中でも、最近、社会に普及し始めている観光資源は観光工場です。観光工場と言っても、工場内を案内に従って見学するだけのものではなく、体験型の観光工場です。
例えば、木工品の工房が業態を変えて、ただ木工品を製作するだけの製造業から、製作工程を楽しんでもらうため、お客さんに木工品を作る楽しみを味わってもらうというサービス業への転換です。
また、農業であれば、農産物を作り農会(農協)へ卸すだけの生産者だけではなく、観光農園として農産物を収穫して、自ら採取した農産物を使って加工品を作るなどのサービス業です。台湾では、このような観光工場や観光農園がちょっとしたブームになっています。
訪日台湾人のインバウンドのチャンスは何?
このブームの流れを考えると、台湾人が日本へ旅行する目的の一つとして、日本でしか体験できない観光工場や観光農園も、今後は有望な観光資源となる可能性があるでしょう。
「~~発祥の地」「~~伝統の街」「~~日本一の街」など特徴的なモノやサービスがあれば、その観光資源を肌で感じることが出来るような体験型観光として醸成することが出来れば、「台湾人には」有名な観光スポットとして名を挙げることが出来るでしょう。
日本酒、うどん、アニメ、真珠、漁業…、台湾にはない「何か」を作り出せば、アイデア次第で何でも観光資源になりえます。
マニアだけではなく一般客も満足する特化した観光ツアー
典型的観光パターンからの脱皮
日本人でも、台湾を何度も何度も旅行をした方は、有名な観光スポットを網羅し、ガイドブックに掲載されれているB級グルメを食べつくし、テレビで見たマッサージやエステなども概ね体験してしまえば、その次には自分の趣味趣向にあった観光旅行がしたくなることでしょう。
例えば、観光スポットへ行くにしても、歴史に残る観光地へ特化した旅行をしたり、原住民の村に特化した観光旅行をしたり、漁業が盛んな街に特化して安い値段で特産品を堪能するなどです。
台湾人の志向も典型的な観光から特化型の観光へ
台湾人も同様に、一通り日本の観光スポットを訪問したことがある観光客は、自分の趣味にあった観光スタイルで旅行をしたくなることでしょう。
例えば、台湾では「ラーメン」と言えば、大きなブームとなり日本食として認知されつつあり、もはや社会に普及しています。日本のラーメンを食べ尽くすツアーがあってもよいでしょう。
あるいは、温泉に特化して、九州の温泉を巡るツアーがあってもよいでしょう。また、漁港で寿司や刺身を堪能するツアーがあってもよいでしょう。
地方毎に特別な観光資源があれば、それは観光スポットになりえるということは上述の通りですが、ラーメンや温泉や漁港など各地方で特産となるモノやサービスを繋げば…。
各都市の特定の特産品を巡るための特化した観光資源が醸成されることでしょう。例えば、「各地の特産品のラーメンを巡る旅」や「各地の特産品の日本酒を巡る旅」のように。これこそが、外国からのインバウンドを誘致できる観光資源になり、地方創生の起爆剤となるのではないでしょうか。
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