台湾では大学数が増加して、少子化の影響を受けて、大学入学が比較的容易になっています。
その状況に伴い、大学での学生のレベルはどのような状態なのか?こんな疑問を持っている方もいるのではないでしょうか?
今回紹介するテーマには台湾の大学での学生数と少子化という社会構造の変化という背景があります。
その上で、台湾の昨今の大学内の状況に照らし合わせて、台湾の少子化と社会の影響について、台湾現地からレポートします。
大学数の増加+少子化=学生数の減少+レベル低下?
購読者の方から以下のようなコメントを頂きましたので、下記の質問に対する答えとして記事にしてみます。
台湾の大学数の増加
私が留学していた頃、相当前です。12万人が統一連合試験(大学)を受け、 合格は2万人だけでした。ラジオで、合格発表がされて、逢甲、静宜女子大等が最下位ランクでしたが、合格できただけでも凄いと、思いました。
今はもっとランクの低い大学が増えました。今は聞くところによれば、誰でも 合格できると、大学の値打ちが下がったそうです。大学生と言っても、エリートと言う感じがなくなったと、
いいぞさんはどう、お感じになりますか?日本も同様ですが。
いただいた質問を簡単に要約すると、大学数の増加と少子化による学生数の減少による大学の影響は? 現場の大学教員として、どう感じるか? という内容として答えてみます。
結論から言いますと、頂いたコメント通り、日本と同様な状況で、台湾の大学も増加傾向で大学の学位の価値も、昔のステイタスや学歴の価値とは比べ物にならないくらい低下していると感じます。
台湾の年齢別の社会変動
まず、台湾の現代の社会変動から考えてみます。台湾は日本以上に少子高齢化が急速に進んでいると言われています。
平均寿命が日本と同じくらい高くなっている上に、夫婦共働き家庭が多く、未婚率が高くなる中で、出生率が低く少子化問題も非常に大きな問題となっています。
例えば、出生率に関しては、2011年における日本の出生率が1.39に対して、台湾は1.16となっており、日本以上に深刻な問題となっております。
2012年での台湾の平均寿命は79.51歳となっていて、日本と同じくらいの水準だというデータでも分かる通り、高齢社会の一つの要因になっています。
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台湾の大学数は増加している!?
それでは、台湾の大学数はどうなっているか?
こちらも、少子化が引き金になって、短期大学や専門学校のような教育機関では学生を募集しても、人気が低いため定員割れを起こしてしまいます。
そのため、短大や専門学校は学生の募集のために離合集散して、4年制大学に鞍替えするケースが多いようです。
これは、短大や専門学校のような形態では学生が集まらないために、4年制大学に格上げして、学生募集を図ろうという魂胆が透けて見えます。
上記で示したような社会変動の中で少子化が進む反面、大学の絶対数は増えているという状況にあります。
このような社会現象と人口状況は、大学そのものにどのような影響を与えるのでしょうか?
日本と同様に、大学間で学生というお客さんのパイの奪い合いが起こることは言うまでもないことでしょう。
しかも、そのパイの奪い合いは、優秀な学生に対する募集に関しては、台湾国内だけでなく世界レベルで起こっています。
大学が学生を選別する時代から学生が大学を選別する時代へ
例えば、日本の大学も少子化の影響を受けて、大学の生き残りを掛けて海外からの優秀な留学生の募集に力を入れています。
(地方の大学では優秀でなくても、学生集めに苦心しているようです。)
そのため、大学を選ばなければ、それほど大学入学のために知識を詰め込んだ学習をしなくても、入学できてしまうという現象が起きます。
そうなると、大学入学後の学習も、そのような学生の受け入れを前提とした教育サービスを提供することに変わっていくことになります。
つまり、以前のような高いレベルの大学教育ではなく、提供する教育サービスが少し低下するということにもなりかねません。
言い換えれば、入学してきた学生のレベルに合わせた教育をしなければならなくなるという結果になります。
大学教員の立場から少子化時代の大学と社会の関係を考察
視点を変えて考えてみると、現在、台湾の大学では、雇用される大学教員は学生から評価を受けるシステムになっています。
そして、学生からの評価が低い教員は、クビとなり強制的に契約が解除されてしまいます。(この評価で一発レッドカードはないですが、2枚か3枚ほどイエローカードを貰うと退場というスタイル)
そのため、大学の教師は、学生の顔色を見ながら、教室で教える教育レベルを考えなければならなくなることもありえます。
そして、担当する学生のレベルがあまりにも低い場合は、教える内容を簡単にしないと、学生が全く理解できなくなってしまいます。
そして、挙句の果てに、そのツケは学生からの大学教員の評価に繋がるため、もし必要であれば、教える側も学生の低いレベルにあった内容に替えざるを得なくなります。
このような悪循環によって、大学に入学する学生の質によっては、大学で提供される教育サービスの低下に繋がり、その向こう側には大学そのものの価値の低下に影響しているという実態があります。
こうして、大学が本来果たすべき高い水準の教育の提供は薄れてゆき、低い教育を提供することになり、それが将来は社会の衰退、国力の低下へと繋がっていくのかもしれません。
少し話が脱線しますが、台湾にも中国からの留学生を積極的に受け入れており、彼ら中国人留学生は、多くの場合は教室の最前列に座って、台湾人の学生以上に真剣に講義を受けているというのが私の経験です。
私が、大学生だった時も同じように台湾人をはじめとした留学生が教室の最前列に席を取り、まじめに講義を受けていたことを思い出します。
その当時、私は教室の片隅でいびきをかいて寝ていたのにも関わらず、今度は教室の片隅でいびきをかいて寝ている台湾の学生を、私が大学で教えることになるとは、何とも皮肉なことです。
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