台湾でウクライナ人の女優が台湾国籍を取得したということがニュースになっていました。
ウクライナでも日本でも2重国籍を認めていないという点では、その関連する法制度は基本的に同じだと思います。
この件について、少し気になったため、日本人が台湾国籍を取得する場合の要点についてもまとめておきたいと思います。
一般的な国籍変更に関する重要な2つのポイント
国籍を変更する場合は、二国間に跨る問題のため、2つの側面があります。
- 外国が国籍取得希望者に国籍を与えるかどうか?
- 日本が外国籍取得希望者の日本からの国籍喪失を認めるかどうか?
日本国籍放棄の場合は単独国籍になるのが一般的
そもそも二重国籍を認めていない現状で、日本では日本人が外国の国籍を取得する場合、国籍離脱と外国籍取得がセットになるのが原則です。そのため、例えば、日本人がアメリカ国籍(永住権じゃないよ)を取得する場合、日本国籍喪失届を申請して日本国籍を放棄する必要があります。
その上で、アメリカの国籍を取得することが可能となるのでしょう。厳密には、米国籍の取得が先なのか、日本国籍の喪失が先なのかは分かりませんが・・・。(これは今回はどうでもよい問題)
日米間の国籍変更は二重国籍を認めていない国の典型的な国籍変更の一例でしょう。日本国籍を喪失して米国籍を取得する。つまり、国籍を交換する形になるため、この場合は結局、米国籍だけの単独国籍となります。
日本政府は台湾を国籍と認めていない
話が前後しますが、当然、国籍問題は2つの国が関与することになります。また、日本と台湾の国籍に関して言えば、日本の国籍法と台湾の国籍法は異なります。法制度上、日本は二重国籍を認めていません。そして、台湾も二重国籍を認めてはいないのですが、実際には便宜的に容認しているようです。実際、私の知り合いにも日本と台湾の2重国籍を取得している人は存在します。
それでは、日本人が台湾国籍を取得する場合と米国籍を取得する場合ではどこがどう違うのか?日本とアメリカは国交があるが、日本と台湾では国交が締結されていません。つまり、日本は政府の見解では、公式的には台湾を「国」と認めていないわけです。そこに、日本人が台湾国籍を取得する場合の全ての問題が起因しています。
国ではない台湾への国籍離脱は不受理
日本人が台湾国籍を取得する場合、日本政府に対して台湾国籍を取得するための国籍喪失届を申請します。そうすると、日本は台湾を国として認めていないため、国籍喪失届は日本政府によって受理されません(つまり不受理)。これが受理された場合は、日本政府が台湾を国と認めたことになり、中国との国交問題に発展してしまいます。そのため、その日本人は日本政府から国籍喪失届不受理証明書を受け取ることになるようです。
一方、日本人が台湾国籍を取得する際には、台湾政府は台湾国籍法で「原国籍喪失証明書」(日本政府が発行した証明書)の提出を求めてきます。ところが、日本政府はこの証明書を発行しないで、不受理証明書を発行します。台湾政府は、この矛盾を埋めるために便宜的に日本政府発行の「国籍喪失届不受理証明書」を「原国籍喪失証明書」に代用して容認しているようです。
日本人に台湾国籍を認めるかは台湾政府の決定権
つまり、結果的には、日本人は日本国籍を放棄しなくても台湾国籍への帰化申請が可能となってしまうということになります。(2000年に台湾国籍法が改正されてこのようなことが可能になったとのこと)
あとは、台湾政府がその日本人に台湾国籍を認めるかどうかの問題になります。この決定は台湾政府側の問題になります。つまり、それは日本側の二重国籍問題とは全く別問題で台湾国籍法上の問題となります。台湾政府がその日本人に台湾国籍を与えるに足る人物と認めれば台湾国籍を取得することができるわけです。
その結果として、一般的には形式的に二重国籍が認められない日本人でも、実質的に二重国籍を取得することができてしまうわけです。といっても、振り出しに戻りますが、日本は台湾を国と認めていないため、日本政府側から見ると二重国籍とは言えないでしょう。
台湾国籍の二重国籍問題をドラえもん共和国に例えてみた
言い換えると、私が勝手にドラえもん共和国を建国して「ドラえもん共和国」の国籍を取得したと宣言します。日本政府が「ドラえもん共和国」を国として認めるはずがなく、日本側からすれば日本国籍だけの単独国籍となります。その一方で、「ドラえもん共和国」側からすると、日本国籍と「ドラえもん共和国籍」の二重国籍になってます。という例え話にすれば分かり易いかもしれません。
国籍は人生の中で最も重要な属性なので自己責任で慎重に。
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