年金生活で海外移住する人の所得税と健康保険料は?

海外移住をして、外国で年金生活をしようと考えている方の所得税と健康保険料についてのレポートです。会社を退職したり、自営業を止めて、年金だけで海外暮らしをしようと考えている方は、年齢別の労働力人口などのデータを参考にして考えてみると、今後年々増え続けていくものと思われます。

そこで、今回は海外で生活しながら、年金だけで暮らしていく場合の所得税と健康保険料について、考えてみたいと思います。予め断っておきたいことは、今回は、日本人が台湾で年金生活をした時のケースです。(税金や健康保険の扱いは各国により異なります)

 

購読様からの税金と健康保険についてのご質問

年金生活に関して関心があるのでお伺いさせていただきます。
住民票を抜いて台湾に移住した場合に(台湾人の配偶者がいる前提)公的年金支払いに対しては20%の税金が源泉徴収されます。(租税条約が無いので)

このまま日本の年金だけで生活する場合に(台湾人妻は仕事無し)

1,所得税の対象になりますか?、税率はいくらになりますか?
2,健康保険料はいくらになりますか?

日本では国民健康保険料がバカ高い状態です。

ご教示頂ければ幸いです。

 

質問内容と問題点のポイント

上記の内容の前提ポイントを簡単に箇条書きにしておきます。

  1. 日本から台湾へ移住、台湾人配偶者を伴って台湾で生活
  2. 日本の住民票は抜いておく
  3. 生活費は年金受給のみ(台湾人配偶者の所得はゼロ)

その上で、以下の2点についての質問と認識しています。

  1. 台湾の所得税(税率)
  2. 台湾の健康保険料

台湾人の配偶者として台湾で生活する場合は、配偶者ビザでの滞在になるかと思いますのでビザの問題はないものとして考えてみます。

 

日本での所得税と健康保険の扱い

年金受給に対する所得税については、1年以上(183日以上)台湾に滞在の場合は、日本では非居住者の扱いとなります。非居住者の場合は、1月1日までに住民票を抜くことで、当年度の市県民税の支払い義務がなくなります。

その一方で、所得税は台湾との租税条約がないため自動的に、日本での源泉所得税率が20%程度となるようです。その後、還付対象になれば確定申告をすることで、源泉所得税を還付してもらうこともできます。

住民票を抜かない場合は、国民健康保険などの健康保険に加入し続けることが出来ますが、住民票を抜いた場合は、必然的に国民健康保険には加入できなくなります。その場合は、一時的に民間の海外旅行保険などでリスクをカバーすることを考えた方がよいでしょう。

 

台湾での所得税と所得税率

日本の年金受給による台湾での所得税はゼロとなると思います。個人所得税が課せられる可能性がありますが、実際には所得の足跡を付けなければ、課税されるとは考え難いです。

一方、台湾で仕事をするなどして所得が発生したものに関しては、台湾の所得税法によって個人総合所得として課税されます。台湾の所得税は、年間滞在日数183日未満の外国人の場合は、個人所得税率18%で、183日以上の外国人の場合は、台湾人と同様に、5%~40%の累進課税になるようです。

 

台湾へ年金生活者が移住した場合の税務

コメントなどでお問合せをいただいたり、自分自身も関心のあるトピックだったため、採り上げてみたいと思います。

過去に、以下のようなご意見を頂きました。

居住者に対する各国の課税スタンス:

台湾の法令では183日以上、居住する場合、その所得が本国で発生しているか、台湾で発生しているかにかかわらず、そのすべてを課税対象とします。

ビザを取らずに、89日居住を3回繰り返せば、その要件に当てはまります。

但し、台湾は日本からお金を持ってきて、台湾で消費してくれる外国人(日本人)に対して、厳しい取り締まりを実施していません。法令と実態が違うのです。

ロングステイヤーが多いタイも183日以上住んでいる日本人に対して、租税条約にかかわらず、現在でも厳しい取り締まりをしていません。

ここで言う取り締まりとは、あくまで年金等に対する、所得税の納税の事です。それ以外の意味はありません。

対応策:
ロングステイヤーは気楽ですから、納税が求められたら、払うか、もう翌年から、182日の
滞在にするかです。

 

以下はJETROからの引用です。(重要そうな部分を赤字にしています)

3. 個人総合所得税(所得税に相当)
*ここでは外国人の一般的なケースについて説明
「台湾源泉の所得がある」外国人は、その台湾源泉の所得について、法律に基づき所得税を納めなければならない。外国人は台湾での居留期間により、非居住者と居住者に分けられ、それぞれの納税方式は下記の通りである。

3.1 非居住者
(1) 1課税年度(1月1日~12月31日)において、台湾での滞在が90日以内の場合、台湾源泉の所得はそれぞれの徴収率(給与は原則18%)に応じて源泉徴収され、申告する必要はない。ただし、源泉徴収に該当しない所得(家賃収入等)は出国の際に申告しなければならない。
(2) 1課税年度において、台湾での滞在が91日以上183日未満の場合、台湾源泉の所得は源泉徴収され、源泉徴収に該当しない所得(海外雇用主が台湾での役務提供に対して支払う報酬を含む)については徴収率に応じて納税申告をする必要がある。

3.2 居住者
1課税年度において、台湾での滞在が183日以上の場合は「居住者」に該当し、当該年度の台湾源泉の各種所得、および台湾での役務提供に対して支払われる海外雇用主からの報酬等の合計より各種控除を行った後の残額が課税所得となり、累進税率に従い総合所得税の納税申告を行う。

 

台湾の税務に関して、あまり詳しくは分かりませんが、上記の内容をかいつまんで判断すると、以下のようになるかと思います。

1.台湾での滞在が年間90日以内の場合
→ 年金受給額を申告する必要がある。(納税の義務はなさそう!?)

2.台湾での滞在が年間91日~183日未満の場合
→ 台湾での役務など(年金は含まれない?)の所得に関して申告して納税する義務がありそう。

3.台湾での滞在が年間183日以上の場合
→ 台湾での役務など(年金も含まれる?)に対しての所得に関して申告して納税する義務がありそう。

上記の文面からは年金を海外へ(この場合は台湾へ)送金すると、その送金額に対しても課税されるかどうかは判断できませんが、タイの場合は送金額に対して課税されるようですね。

台湾のもタイと同様に総合課税というスタンスであれば、年金を日本から台湾に送金した場合は、居住者の場合は送金額に対して課税されるということになりそうです。

それならば、現金(1万ドル以上の場合は入国時に申告)を持ち込んだ場合は、どのようになるのか?

この場合は、足跡が付かないのでどうしようもないのではないかなと思います。

やはり、台湾に183日以上滞在した日本人年金受給者は納税申告という制度は制度として存在しながらも、実際には厳密な制度適用はされないというのが結論のようですね。

(この件について、どなたかハッキリとした情報のソースがあれば教えてください。)

 

台湾の健康保険料

台湾の健康保険料については、こちらの記事に掲載していますので参考にしてください。

簡単にポイントだけ列挙しておきます。

  • 年間滞在日数183日以上の台湾滞在者は加入の義務と権利があります。
  • 台湾での所得によって月額の費用負担は変わってきますが、日本の年金受給だけであれば、一人700元程度だと思います。

以上のことから、台湾に183日以上滞在した上で台湾の全民健康保険(日本の国民健康保険に相当)に加入手続きをした後、日本に帰って住民票を抜けば、それ以後、日本の国民健康保険料を支払わなくてもよくなり、台湾の全民健康保険にうまく引き継げそうです。

 

海外移住やロングステイ時の健康保険と住民票の関係

住民票を抜くと、上述したように海外転出手続きをした翌年の市県民税の支払い義務はなくなります。その一方で、必然的に日本の国民健康保険からも脱退することになります。

つまり、住民票を抜き海外転出届をした場合は、台湾の全民健康保険に加入できるまでの6ヶ月間は日本の国民健康保険にも加入できなくなり、台湾の全民健康保険にも加入できませんので、6ヶ月間は健康保険に未加入のリスクが伴います。

その場合の対応として、下記の記事が参考になると思いますので興味があればご覧ください。

海外長期滞在中の病気・ケガに健康保険はどうする?|国民健康保険vs海外旅行保険

その他にも、裏技的に「クレジットカード付帯保険」も上手に使えば十分利用できると思います。
海外旅行保険付帯クレジットカードの効果的な利用法は以下を参考にしてください。
クレジットカード付帯海外旅行保険で移住・ロングステイ・長期滞在に備える

(購読者企画5)

コメント

  1. いいぞっ より:

    いつもコメントありがとうございます。

    また、ご質問などがありましたら、ブログを通してコメントください。

    お問合わせメールからでも結構ですが、返信が遅くなることがあります。

    今後ともよろしくお願いします。

  2. tomo より:

    居住者に対する各国の課税スタンス:
    台湾の法令では183日以上、居住する場合、その所得が本国で発生しているか、
    台湾で発生しているかにかかわらず、そのすべてを課税対象とします。
    ビザを取らずに、89日居住を3回繰り返せば、その要件に当てはまります。

    但し、台湾は日本からお金を持ってきて、台湾で消費してくれる外国人(日本人)に
    対して、厳しい取り締まりを実施していません。
    法令と実態が違うのです。

    ロングステイヤーが多いタイも183日以上住んでいる日本人に対して、
    租税条約にかかわらず、現在でも厳しい取り締まりをしていません。

    ここで言う取り締まりとは、あくまで年金等に対する、所得税の納税の事です。
    それ以外の意味はありません。

    対応策:
    ロングステイヤーは気楽ですから、納税が求められたら、払うか、もう翌年から、182日の
    滞在にするかです。

  3. いいぞっ より:

    詳しいコメントありがとうございます。
    以下、私が調べたことを記事にしています。
    http://clubtaiwan.net/blog/2014/07/08/post-0/

    > 居住者に対する各国の課税スタンス:
    > 台湾の法令では183日以上、居住する場合、その所得が本国で発生しているか、
    > 台湾で発生しているかにかかわらず、そのすべてを課税対象とします。
    > ビザを取らずに、89日居住を3回繰り返せば、その要件に当てはまります。
    >
    > 但し、台湾は日本からお金を持ってきて、台湾で消費してくれる外国人(日本人)に
    > 対して、厳しい取り締まりを実施していません。
    > 法令と実態が違うのです。
    >
    > ロングステイヤーが多いタイも183日以上住んでいる日本人に対して、
    > 租税条約にかかわらず、現在でも厳しい取り締まりをしていません。
    >
    > ここで言う取り締まりとは、あくまで年金等に対する、所得税の納税の事です。
    > それ以外の意味はありません。
    >
    > 対応策:
    > ロングステイヤーは気楽ですから、納税が求められたら、払うか、もう翌年から、182日の
    > 滞在にするかです。

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