「台湾人生」というドキュメンタリー映画を視聴した感想と少しだけネタバレを簡単にご紹介します。実際に、台湾で生活していると日本統治時代に教育を受けた方たちと会って話をする機会もあります。
そのような方たちがどのような社会背景で育ったのか、国民党一党独裁政権時代の社会で育った台湾人、そして李登輝政権後の民主化後の世代と三世代の台湾人を理解するには十分な内容となっています。
ドキュメンタリー映画「台湾人生」の概要
日本統治時代の台湾で青春時代を生き抜いた、いわゆる日本語教育を受けた世代の5人の台湾人が出演しています。それぞれの半生をドキュメンタリー形式で撮影された酒井充子監督の映画です。
出演者の背景は大きく以下の3つの時期に区分されます。
- 日本統治時代
- 国民党支配時代
- 台湾民主化以降
最も波乱に満ちた時代を生きた日本語世代の台湾人が語る、もうひとつの歴史とは―。
1895(明治28)年から1945(昭和20)年まで、実に51年もの間、日本の統治下にあった台湾。教育の普及にも積極的に取り組み、学校教育は日本語で行った。そのため、この時代に教育を受けた人々は日本語を話すことができる、いわゆる“日本語世代”だ。彼らの歴史は、苦難の連続と言っても過言ではないだろう。第二次世界大戦が始まり、台湾人も日本軍として参戦するが、日本は敗戦。
やがて、台湾は中国国民党政府による統治の時代を迎えた。しかし、その圧制に対する市民の怒りが、1947(昭和22)年の二・二八事件を招く。これをきっかけに、1949(昭和24)年から38年間の長きにもわたり、戒厳令が敷かれる異常事態に。この間、多くの台湾人が激しい弾圧にさらされ、台湾語や日本語の使用も禁じられた。“日本語世代”の台湾人たちは、口をつぐまざるを得なかったのだ。
本作は、台湾各地、そして日本へと舞台を移しながら、“日本語世代”5人の人生を振り返る。時代に翻弄されながらも、ふたつの時代を力強く歩んだ彼らがそれぞれの人生を語るとき、私たちはその言葉の背後に、もうひとつの歴史の姿を垣間見ることになる。
“日本語世代”の老人との偶然の出会いから、取材活動は足かけ7年。台湾のことを広く知ってほしいという強い思いが原動力となり、国や時代を超えた、人間の存在そのものを見つめる大らかで優しいまなざしのドキュメンタリー映画を完成させた。近くて遠い台湾の、知られざる一面に光を当てた衝撃と感動の作品として大きな話題を呼んだ。
(アマゾンより一部抜粋)
視聴後の感想
青春時代である若い時期の教育は、その後の人生に大きな影響を与えるものです。日本統治時代に日本の教育を受けた台湾人の方は、出演されているどの台湾人の方も、日本人以上に日本の心を持っています。
彼ら5人の台湾人は、自分の生きてきた歴史について、一つ一つの言葉に重みがあります。私とは生きている時代が違うため、彼らの考え方や感性が新鮮に感じて、終始この映画に見入ってしまいました。
年齢にして80歳以上の方たち(撮影当時)ですが、心は日本人のようでもあり、国籍は台湾人なのですが、アイデンティティは・・・という点に焦点を当てているようにもあります。
私には、彼らのアイデンティティは日本人と台湾人の両方のように感じました。日本人と台湾人の1/2づつというわけではなく、「1+1=2」のアイデンティティを持っているように思えます。
日本統治時代の日本人は規律正しく、人間として信じられる人間でした。今の日本(政府)よ、今の台湾(政府)よ、もっとしっかりしろとの意見がちりばめられているように感じました。
私はドキュメンタリー番組や映画をよく見るほうなのですが、現在住んでいる台湾に、昔、日本人と机を並べた台湾人や元台湾人日本兵が健在で日本の精神が未だに生き続けていることに驚きます。
過去・現在・将来の台湾と日本の関係を考える原点
一般的に、日本では「台湾」に関する歴史教育は、あまり詳しくは学習する機会が少ないですね。それは中国と台湾を切り離して考えることができない国交関係もひとつの要因かもしれないです。
かつて、日本と中国は何度か戦争ををしたことがありますが、日本と台湾は戦争をしたことはありません。そのため、日本人が考えているほど、一般的に台湾人は日本のことを敵視していないのかもしれないです。そのため、日本人にとっては、多くの台湾人が日本に対して友好的で親日家が多いと感じるのかもしれません。
このドキュメンタリー映画でも、日本統治時代を生きた台湾人日本兵の方は当時は日本国民として日本という国家国民のために戦ったと考えているようです。
そして、元々台湾に住んでいた本省人にとって国民党が中国大陸から台湾に来てから228事件を始めとする、暗黒の苦しい時代が始まったという流れで描かれています。
この時代を生きた80歳以上の方の意見を総合すると、規律正しい日本統治時代の社会から、腐敗に満ちた国民党支配時代へ、そして李登輝総統以降の台湾民主化時代へと時代が動いていっていることがよく分かります。
今後は、日本統治時代の世代の方たちと現代の台湾民主化以降の世代の人たちとの台湾アイデンティティの違いにスポットを当てたドキュメンタリーが見てみたいものです。
現代を生きる台湾人の若者と古き良き時代を生きた日本のアイデンティティを持った台湾人の方のコントラストが新しい台湾アイデンティティを浮き彫りにすることでしょう。
もう1度見たくなるような内容の濃いドキュメンタリー映画でした。
コメント
日本で偶に台湾のDVDを買ってみています。
台北に降る雪、あの頃、追いかけた等々、面白いです。
ただ1作品、3500~で、高いですね。
楽しめれば良いですが、KANOは来年、やるようですので
楽しみにしています。
> 日本で偶に台湾のDVDを買ってみています。
> 台北に降る雪、あの頃、追いかけた等々、面白いです。
まだ見たことがないので、youtubeの予告編を見てみました。
面白そうですね。
> ただ1作品、3500~で、高いですね。
> 楽しめれば良いですが、KANOは来年、やるようですので
> 楽しみにしています。
KANO待ち遠しいですね。
私も近々見に行こうと思っていて・・・まだ行けてないです。
このドキュメンタリー見てみたいですね。私の母は日本人ですが、子供の時から新竹の女学校出るまで台湾育ちです。ロスにもこのドキュメンタリーで出てくるような日本教育を受け日本時代を懐かしむ台湾のじいちゃんばあちゃんに時々出会うことがありますよ。
コメントありがとうございます。
(元日本人の)台湾人の方達の複雑な気持ちが率直に語られていて、心打たれます。
台湾人生で出演しているような、元台湾人日本兵の方達と会うことも時々あります。
またいつか、このブログで台湾人日本兵についての記事もアップしたいと思います。
いずれにしても日本統治時代を否定的に語るおじいちゃんやおばあちゃんがほとんどいないことに更に驚かされます。
> このドキュメンタリー見てみたいですね。私の母は日本人ですが、子供の時から新竹の女学校出るまで台湾育ちです。ロスにもこのドキュメンタリーで出てくるような日本教育を受け日本時代を懐かしむ台湾のじいちゃんばあちゃんに時々出会うことがありますよ。