台湾での風水について、現地での日常生活での経験や台湾社会の考察から見えてきた、現地事情を台湾現地からレポートします。
みなさんは風水と聞いて、どのようなイメージを持っているでしょうか?
日本では黄色いハンカチを○○の方向において置くと、幸福を引き寄せる…などの話を思い浮かべるかもしれませんね。
実は、台湾での風水の考え方は学術的で、風水師の社会的ステイタスも高く、尊敬される存在で、責任感の重いポジションです。
ここに注目
- 風水って何?
- 風水の歴史は?
- 台湾の日常生活での風水
- 台湾で建築に応用される風水
- 台湾での風水師のステイタス
この記事の目次
風水とは?
そもそも、風水とは何か?
風水(ふうすい)は、古代中国の思想で、都市、住居、建物、墓などの位置の吉凶禍福を決定するために用いられてきた、気の流れを物の位置で制御する思想。
風水では都市や住居(すなわち生者の居住空間)を「陽宅(ようたく)」、墳墓(すなわち死者の居住空間)を「陰宅(いんたく)」と呼んで区別している。
風水は大別すると、(1)地形読破の術である「巒頭(らんとう)」と(2)時間によって変化する天地間の気を判断する「理気(りき)」とに別れる。
(引用元:ウィキペディア)
上記の解説をともに簡潔にまとめると、下記のようになります。
- 風水は古代中国の思想
- 都市、住居、建物、墓などの位置の吉凶禍福を決定するツール
- 気の流れを制御する思想
- 陽宅風水とは居住空間に関する風水
- 陰宅風水とは墓場の位置に関する風水
- 風水の術は地形(巒頭)と時間(理気)に分けられる
上記のことを踏まえ、一言で表現すれば、場所の良し悪しを決定する「生活環境学」と言えるかもしれません。
世界での風水の系譜
台湾は世界で最も風水思想が社会に浸透している国の1つです。
元来、風水思想は中国大陸で起源したもので、陰陽説や五行説という思想に基づいた考え方が根底にあります。
ところが、文化大革命により中国の伝統的思想が排除されるに至り、中国の古典的思想である風水も没落することになりました。
その後、台湾や香港でその思想研究が継承されたという歴史的系譜があります。
そのため、台湾や香港は風水の古典に関する研究が世界でも最も発展しているとされています。
このように、現在に至っては風水思想や風水文化が集積している場所が台湾であるとも考えられます。
台湾での日常生活での風水
日本では、風水と言えば、一部の若者の間で流行している社会的ブーム、あるいは特定の人だけが信じている迷信という考え方が主流かもしれません。
台湾では、ひとたび街を歩けば、風水師や命理師などの看板をよく見かけ、風水や占いを生業としている人が多く存在します。
このように、台湾では日常生活のあらゆることに風水師や命理師の助言に耳を傾ける人が多く、そのサービスに需要があるということを意味しています。
台湾では風水の考え方やサービスをありとあらゆる所で見聞きします。
例えば、都市計画などに関連した比較的大規模な国レベルや都市計画レベルのシーンでも風水思想が活用されています。
もちろん、個人宅としての住居やオフィスのレイアウトなどの比較的身近で日常生活に密接に関係した場面など多くの場面で風水思想が関わっています。
風水思想と建築の事例
台湾で風水が必要とされる場面を日常生活に注目して、もう少し具体的に考えてみましょう。
以下に、台湾での風水の活用シーンを挙げてみます。
- 家屋の建築やお墓の場所を決める時
- 建築の設計で風水原則に則しているかの確認
- 室内・屋外インテリアの設計が環境に則しているかの確認
更に具体的に風水の考え方が家屋にどのように応用されているのかを見てみましょう。
例えば、家を建築する場合には家屋の場所として、下記のような位置関係や方向や広さなどを決定するための判断として、風水の考え方が利用されます。
- 家の最も適した場所
- 門や玄関の方位
- 敷地内の庭や駐車場などのレイアウト
- 家屋内の応接間、寝室、書斎、キッチン、トイレなどのレイアウト
- ドアや窓の配置や大きさ
上記のようなことをセンチ単位で決めていくのが台湾でよく見られる風水の現状です。
日本で、よく知られているような室内の西側に黄色のモノを置くと、運気が増すなどといった考え方とは、随分と異なる思想文化と言えましょう。
台湾での風水の実践 ‐ 玄関とドアの関係
風水の思想が台湾の日常生活でどのように影響を与えているかという実践的な例を挙げてみたいと思います。
例えば、風水学という視点から最もよく知られているのは玄関のドアです。画像の玄関ドアを見てください。
これは家の中から外へ向かって玄関ドアを撮影した様子です。
日本の玄関ドアと違いがありますが何か分かりますか?
日本の玄関ドアは引き戸でなければ、多くの場合は外開き(外に向かってドアが開く)ように設計されていますよね。
ところが、台湾の玄関ドアは必ずと言ってよいくらい、内開き(内側に向かってドアが開くよう)で設計されています。
この内開きドアの発想は何故だと思いますか?
実は、風水の考え方に基づいているのです。
家の外側から内側に福や財を招き入れるという考えから、玄関ドアは内開きに設計されているのです。
実例を挙げれば、台湾でのレストランや会社事務所の玄関ドアを確認してみれば一目瞭然です。
ほぼ100%の入口の玄関ドアが内開きになっており、財を招くように設計されています。
それでは、家の中の部屋のドアはどうなっていると思いますか?
台湾の家の中の各部屋のドアも多くの場合は引き戸か内開きで設計されています。
以下は、部屋の外側から撮影した画像です。
日本の場合は、家の中の部屋のドアは部屋のスペースを有効に利用するため、多くの場合、外開きで設計されています。
部屋のドアを内開きで設置すると部屋内の利用スペースが削られることが容易に予測できるかと思います。
台湾では、そのような機能性やデザイン性よりも何よりも、風水の考えに基づいた縁起が最も重視されているのですね。
台湾に来た時は、ぜひ、家やホテル、レストランの入口のドアの開く方向を確認してみてください。
台湾での風水師のステイタス
台湾では、生活環境に関する重要な決定をする時には、風水師からの助言を求める人が非常に多くいます。
ある家に病人が多かったり、事故で亡くなるなどの事案が発生した場合は、生活環境つまり風水に問題があると考え、風水師に分析と判断を委ねることも多々あります。
また、ビジネスや商売をする場合には、その場所が商売繁栄に適した場所かどうかなどの助言を求めることも多々あります。
このように、台湾では、風水思想は日本で考えられているような一時的な流行や社会のトレンドのような位置付けではありません。
台湾での風水の位置付けは、歴史的に受け継がれてきた思想文化であり、日常生活に欠かすことができない思想文化であると言えます。
そのため、台湾での風水師のステイタスは社会の中で非常に重要な役割を担う存在であり、尊ばれるほどの存在感があります。
風水を勉強したい方へ
風水に興味を持ち、風水を勉強してみたいという方もいるかもしれませんね。
私も風水について調べてみたことがありますが、結論を言うと、挫折しました。
風水理論を一から学習して習得するには、数十年の継続学習が不可欠だと言うことに気付かされました。
実際に、台湾で風水師として活躍している方は、日々、研究をしており、各地で研究会や研究や研究発表会が開かれています。
もし、風水を極め風水師になりたいと思う方がいれば、それは一生を風水の研究に捧げ、研究者を目指す覚悟がなければ続けられない職業だと実感しました。
まずは、日常的なところで、風水グッズとしても知られる、吉凶判断に使用される風水メジャーの見方から始めてみてはいかがでしょうか?
まとめ
以上、風水について、主に台湾での風水事情、風水思想、風水文化、日常生活での風水、風水の応用、風水師のステイタス、風水を勉強したい方へのアドバイスをまとめました。
台湾での風水の社会での位置付けは日本で考えられている風水事情は少し異なることが伝わりましたでしょうか?
最後に、上記で書いてきた内容のポイントをまとめておきますので参考にしてください。
記事のポイント
- 風水とは生活環境学の一つ
- 風水の歴史は中国が起源で台湾や香港にて継承された
- 台湾では風水が日常生活のあらゆるシーンで応用されている
- 特に風水理論が応用されているシーンは建築設計の場面
- 台湾では風水師は重要な役割を担っており、ステイタスが高い
- 風水を勉強したい人は一生研究継続の覚悟が必要