台湾人の環境変化に対する適応力や順応力と彼らのホスピタリティーの高さ、その背景にある要因について、台湾現地からレポートします。
「台湾を旅行したら台湾人は心優しく温かかった!」
「台湾人とビジネスをしたら行動力がありバイタリティに圧倒された!」
「不動産の仕事をしていた台湾人が突然起業してラーメン屋を始めた!?」
台湾を旅行中に台湾と交流する機会があった方、台湾人とビジネスをしたことがある方、あるいは台湾人の友人がいる方は、上記のような経験はないだろうか?
これらは台湾人の典型的なプロトタイプだと思います。今回は、台湾人の「環境適応力」の高さと「ホスピタリティ」の高さに関しては日本人は背伸びをしても勝てないという話をしましょう。
それと、その背景にある要因を、私が台湾で暮らしてきた経験と台湾と日本の歴史や社会にスポットを当てて解き明かしていきます。
外部環境の変化に適応してきた台湾と台湾人
世界的に見ても、台湾人は商売が上手い、金儲けが上手だと言われることがあります。
実は、台湾は九州ほどの大きさの広さで資源がほとんどない島国で、形式的には国際的に国と認知されていない孤立した状態です。
それにも関わらず、アジア諸国の中では経済的に裕福な社会を築き、最近では台湾企業が日本企業を買収するまでに至っています。
経営リソースが限られているのにも関わらず、国策として半導体産業を育成し、他国にはない素晴らしい気候や環境を活かし観光産業の発展が醸成されてきました。
この背景には、台湾人には環境変化に適応する能力が優れているという独特の国民性があるのではないでしょうか。
台湾人は流行りもの大好きで金儲けが大好き
半導体の需要が上がると見れば半導体事業に集中し、観光業が儲かると見ればホテル経営やレジャー産業に乗り出す。
身の回りを見渡してみても、日本から進出したラーメン店が大繁盛している、日本の回転寿司店に大行列が出来ている、こんな状況を察知したら台湾人はどう行動すのか?
商魂たくましい台湾人は我先にと一目散に日本の飲食業に目を向けます。そして、時流に乗ってお金を稼いで成金を目指す、こんな傾向が強いです。
ところが、実際には、ビジネスのピーク時に人手が足りなくなり運営がパンクしたり、時流に乗り遅れてピークアウト時に投資をしてしまい事業破綻するという事例も多くあります。
台湾人はビジネスでお金を稼ぐことに関しては貪欲で、その時の状況により無計画に行動することが多い傾向もあります。その結果、大成功する人もいれば失敗する人も出てきます。
台湾人は商売が上手!? 彼らのビジネスセンスとは?
台湾人は商売が上手だということを聞いたことがある方は多いのではないでしょうか。
台湾では日本食ブームがキテいるというのは以前、記事にしたことがありますが、日本食に関連して面白い逸話をご紹介しましょう。
台湾では日本のラーメンが人気でラーメン店が乱立している状況ですが、ある台湾人がラーメン店を開店しました。
そして暫らくすると、今度は日本のうどんもブームになっていることに目を向けました。そして、うどん店をオープン。
ラーメンブームに乗った店主はラーメン店では稼げる時に稼ぎ切って、客足が遠のいたら、さっさと閉店して…いたのか?
今度はうどん屋を開店して、うどん屋も過当競争で客足が遠のいたら、今度は蕎麦屋を始める…、ビジネスで成功する台湾人の一つのケースでもあります。
「頂譲」という中国語は台湾では不動産売買の場面でよく目にしますが、「居抜きで売却すること」を示す言葉です。つまり、不動産物件と店内の全ての什器など一切合切を売却するというわけです。
実は、上記で紹介した台湾人の方の本業は不動産屋でした。ラーメン、うどん、蕎麦、いずれも元々は手に職はなく、独学で身に付け、時流に乗ってお客を集めて、店舗に客の列が出来たところで、不動産物件を居抜きで売り抜くことを目的としていたというわけです。
日本人に関して、ラーメン店の店主がうどん屋に転業したり、うどん屋の店主が蕎麦屋に転業することは稀でしょう。これは代々受け継いだ看板を下ろすことに、後ろめたさがあるからでしょう。
一方で、台湾人に関しては、お店を経営するのは美味しいラーメン、うどん、蕎麦をお客さんに提供する目的よりも、お金を稼ぐためにお店を経営するという明確な目的意識があるのでしょう。
上記はほんの一例ですが、台湾人の商売の上手さは外部変化に柔軟に対応する環境適応力の一面を映し出している典型例でしょう。
「台湾人は優しい」と「台湾人はホスピタリティが高い」の真実
台湾人は優しいと言われることが多いです。ところが、実際には日本人と同じように、長く台湾人との交流があれば分かりますが、優しい人もいれば優しくない人もいます。
ただ、全体的な傾向として優しい人が多い気がするのは、台湾人のホスピタリティが高いからでしょう。もう少し厳密に言うと、日本人から見て台湾人のホスピタリティが高く感じるということです。
- 台湾旅行中に道に迷っていたら、わざわざ目的地まで連れて行ってくれた
- 夜市で注文の仕方が分からず困っていたら、知らない台湾人が奢ってくれた
- 財布を落として困惑していたら、追い掛けて来た台湾人が持ってきてくれた
このような経験は私も台湾で何度か経験したことがあります。日本人は外国人に対して、このような行動がなかなか出来ないため、台湾人は優しいと感じたりします。
台湾人は初めて顔を合わせた人に対して心理的な距離感を感じさせないで壁を作らないため、相手が外国人であっても話し掛ける人が多くいますが、日本人はまず相手との心理的距離感をとるのが一般的ですね。
台湾人と日本人では「心理ー行動」という面でのコミュニケーションの取り方が異なるため、気軽に話しかけ行動する台湾人を優しいと感じるのでしょう。
一般的に、台湾人は困っている人がいれば、その場に応じて後先考えずに手助けしてあげたいと考える傾向にあります。手助けした結果、困っている人が満足する結果になるかならないかは考えず、取敢えず何かしてあげるというのが台湾スタイル。
一方で、「知人に~がいるから聞いてあげる。」「来週、時間があるから~しよう。」、「あなた、日本語教師ですか? 日本語を勉強したい。」、台湾人はよくこのようなことを言ったりします。
いずれも将来のことについて「~する」という意思表示をしているように聞こえるかもしれませんね。ところが、実際には、その時の自分の気持ちを表現しているだけで、将来の約束をしているわけではないのです。
これも、しばしば台湾人が相手に対してする配慮の一つであり、ホスピタリティの一要素でしょう。日本人は出来ない口約束はしない傾向にありますが、台湾人は出来るかもしれない口約束をよくします(少なくても口約束をした時点では出来るという感情が強い)。
そのため、日本人が台湾人と交流する中で、日本人と台湾人の口約束の意味合いと考え方の違いを理解していないと、すれ違いが起こることになります。とりわけ、ビジネスの場面では深刻な問題に発展することもあることでしょう。
日本人の考えでは「あなた(台湾人)はあの時~すると言ったよね?」に対して、台湾人の考えでは「私はあの時は~できるだろうと言っただけ。(当時と今は違うよ。)」こんな感情のすれ違いが起こってしまうのです。
このように手助けと口約束だけを取り上げてみても、台湾人は相手への配慮で自分がその時点で出来る手助けをするため、日本人にとっては「台湾人は優しい。」と感じます。
一方、台湾人は相手への配慮で将来の口約束をしてしまうため、実際に口約束が実行されないと、日本人にとっては「台湾人はいい加減だ!」と感じてしまいがちです。
以上、私が台湾人と交流してきた経験から見えてきた「台湾人のホスピタリティ」の真実です。良い意味でも悪い意味でも、台湾人は相手に配慮して、自ら何か出来ることがあればしてあげたいという気持ちが根本にあり、それが悪いほうに捉えられると、日本人にとっては「お節介」だと感じるのでしょう。
台湾人の環境適応力とホスピタリティの高さの背景にある要因は?
日本人と比較すると、台湾人は環境変化に対する適応力が優れていること、それと日本人には台湾人はホスピタリティが高いと感じることの背景には何があると思いますか?
単なる個人的な仮説ですが「歴史」の違いによる影響が最も大きい要因だろうと思います。日本と台湾の歴史と社会に関して異なる点のポイントを超簡潔にまとめると、下記のようになります。
日本と台湾の歴史の違いのポイント
歴史と社会の特徴 | |
---|---|
日本 | 歴史が長い(紀元前660年~) 外国に支配された経験がない(終戦直後の沖縄以外) 鎖国政策 少数民族社会 |
台湾 | 台湾400年の歴史 外国に支配され続けてきた(オランダ→鄭成功→清→日本→中華民国) 多民族社会 |
日本は外敵(外国)に占領されることもなければ、支配されることもなく(終戦直後の沖縄は一時的に支配されましたが)、歴史上常に一つの国家として歴史を築いてきました。
一方、台湾は歴史上は原住民しか居住していなかった台湾本島に、上記のように海外からの圧力を受け、外敵に支配され続けてきたという歴史があります。
また、日本人は単一民族国家あるいはアイヌ民族や琉球民族を含めて少数民族国家とされていますが、台湾人は外国からの移民により混血が進み、現在の多民族国家が形成されたという違いがありますね。
このような歴史の違いと社会の違いにより、日本人は歴史や伝統をより重んじ、受け継がれてきたものを守り続けるという保守的な国民性が形成されてきたのだろうと思います。
その一方で、台湾人は常に外敵の外圧を受け、外国との交流をしてきたことにより、その時代その社会に応じた環境変化に適応せざるを得ない状況を受け、外国人に対して友好的な国民性が形成されてきたのだろうと思います。
また、民族形成に関しても、鎖国政策を採った歴史に象徴されるように、日本では単一民族国家を維持し続けようとする気運は現在もあります。その一方で、台湾は自国だけでは不足している人的資源は海外から受け入れる政策(外労政策など)を採っています。
現在でも、外国人を積極的に受け入れている台湾と外国人の受け入れに消極的な日本の違いがよく表れています。
国民は社会を映し出す鏡であり、社会は歴史を映し出す鏡でもあります。歴史上の出来事→社会の形成→国民性の醸成と考えると分かりやすいですね。
まとめ
それでは、台湾人の環境順応力とホスピタリティの高さと、その背景にある要因について簡単にまとめておきます。
- 日本人と比較すると、台湾人の環境適応力もホスピタリティも高い
- 台湾は歴史上の外国支配の影響を受け、社会や環境変化に順応できる能力が醸成された
- 外国人との接触を余儀なくされた結果、台湾人は対外的な交渉力に優れ、ホスピタリティも醸成された
- 台湾人の環境適応力とホスピタリティの高さの背景にある共通した要素は歴史であり、その成り立ちに起因する部分が大きい
最後に、面白い話を一つ付け加えておきましょう。
以前、台湾人学生に「日本人と台湾人の違い」というようなテーマで討論・レポート発表をさせた結果、私がこのサイトで過去に記事にした内容を丸パクリした学生がいました(笑)。
台湾人と日本人の学生諸君、ネットで検索して情報収集することに問題はないが、ネットで書かれていることが全て正しいとは限らないぞ。もし、参照するのであればソースをハッキリと明記するか、自分の経験に基づいて意見を述べようではないか(キリッ!)。
コメント
今回のレポートは、すごくアカデミックですね、
内容に、実感、ご経験が感じられ、関心しました、
私も仕事、子供の就職、自立、両親の介護と、
大変ですが、頑張ります。
コメントありがとうございます。
実はアカデミック(的)な要素が強い記事はインターネット上ではあまり需要がないのが残念です。
頑張っている方に頑張ってくださいとは言い難いため、あまり頑張り過ぎずにお体を大切に。
いやいや、台湾に住んて、台湾の方と付き合ったり、
仕事をした方は、なるほどと、思うでしょうね。
実感が感じられます、
素晴らしいと思いますよ。
いつか、動画も進出してください、
私もいつか、動画を撮ってみたいです
動画撮影は機会と時間があれば、いつかチャレンジするかもしれません。
独創的で魅力的な動画が撮れればいいのですが…。
台湾の方の半分は、だいたい24000元くらいの給料だと思います、
凄い個人事業者の方もおられますが、
みんながみんな、そうではない、
台湾の方は、男性でも家から通って、余り自分一人で外で家を借りないか、
2万元が自分一人で使えれば、実感として、つかいがいがあるのでしょう
男女とも、一人暮らしの方は、日本より少ないでしょうね
コメントありがとうございます。
台湾の月収は最近は28Kと揶揄され28000元を意味しています。
それでも最近は物価上昇に給料の上昇が伴っていないため、政治トピックでもしばしば取り上げられています。
収入はあまり高くないですが、可処分所得が高いのが台湾の特徴です。
ご指摘の通り、生活費に占める家賃など(税金も含め)の固定費が低いためです。
可処分所得の比率が高くなるという点は、日本と台湾の所得で大きく異なる点ですね。
(下記記事ご参照)
台湾人の平均年収と平均月収はいくら?
わかりやすく教えて頂き、ありがとうございました、
私が留学した1980年代は、15000元くらいでした、
それに比べれば、上がりました、
わかりやすい解説ですね
言い忘れましたが、28K(28,000元)は大卒新入社員の平均初任給です。