世界競争力ランキングが発表されていましたので、台湾の現状を私なりの視点で考察し、台湾現地からレポートします。
2018年の国際競争力ランキングで、台湾は137の国・地域中、13位となったと公表されました。ちなみに、日本は5位だった。
「世界競争力ランキング」とは?
そもそも、「世界競争力ランキング」とは何でしょうか?
調査組織:スイスに本部のある非営利財団・世界経済フォーラム
評価前提:国際競争力を「国家の生産力レベル」と定義している。
調査項目:インフラ・教育・労働市場・金融サービス・ビジネスの洗練度などの項目で調査される。
※スイスの国際経営開発研究所(IMD)が公表している世界競争力ランキングとは別物
2017年の世界競争力ランキングの結果
アジア太平洋地域だけを抽出してみると、下記のようなランキングになります。
3位 シンガポール
5位 日本
7位 香港
14位 台湾
14位 オーストラリア
15位 韓国
18位 ニュージーランド
27位 マレーシア
28位 中国
上記のランキングで注意したい点は、台湾は徐々に順位を挙げ、韓国を抜いて、世界競争力ランキングで世界の中心に食い込もうというところまで来ているということ。
評価の定義も漠然としていて、調査項目やそれらの評価方法も詳しいことは分かりませんが、世界ではスイスが生産力レベルが最も高く、アジアではシンガポールが生産力レベルが最も高いということだけは分かりました。
そこで、スイスやシンガポールの国家としての特徴を考えてみると、金融サービスは突出していることが分かります。
また、7位に香港がランクインしていることを考えると、やはり金融サービスの評価比率が高いのかなと感じます。
国際競争力を評価する社会的要素・4項目についての個人的視点
そこで、台湾に在住している私が生活者目線で勝手に、下記の主要項目について、日本と台湾の比較をしてみようと思います。
- インフラ
- 教育
- 労働市場
- 金融サービス
- ビジネス
インフラ
インフラには建設を主体としたハードと法的整備などのソフトの両面があると思いますが、目に見えるハードの部分に注目してみると、日本では戦後、インフラ整備は一巡して再開発を含めて二巡目に入っている感があります。
一方、台湾では地下鉄工事など未だに一巡目の開発をしている部分があると感じます。現在の日本のインフラ状況に10年後には台湾は追いつくレベルだと思います。とは言っても、現在の台湾は日本人が生活していても何ら不自由しないハード面でのインフラが既に整備されているとも言えます。
教育
日本を離れ海外から見ると、日本の教育は特徴的だということが分かります。それは主に台湾と比較して特徴的だと言うことですが、日本や日本人の素晴らしさとは、「行動の確かさ」にブレが非常に少ないことだと思います。
例えば、日常生活の中では電車やバスの発着時間は分刻みで正確です。あるいは、各人の組織内での行動は整然と乱れることが少ないです。物事をきちんと進める能力は日本人が世界でナンバーワンだと感じます。これらは日本の独特な教育システムの土壌の上に醸成された日本が誇るべき教育の結果ではないでしょうか。
一方で、日本人には「個性」が足りないと批判を受けますが、組織を重視すれば個性が失われがちになるのもやむを得ません。今までの日本の教育は個性よりも組織を重視した教育をとってきたということでしょう。どちらが良い悪いというよりも、教育の目指す方向性の違いだと思います。ただ、日本は日本人の国民性に合った組織を重視する教育で、これまで成功してきたのだろうと思います。
最後に台湾の教育の特徴についてですが、現在の台湾の教育を全て把握しているわけではありませんが、その前提で話を進めると…。小学校に通学する自分の子供を見る限り、小学校低学年から毎日たくさんの宿題を出されて、かなり多くのことを覚えなければいけない状況です(台湾の小学校事情≫≫こちらの記事)。考える能力を身に付ける教育というよりも、暗記力を身に付ける教育を推し進め、記憶力競争をしているように感じます。これが良いのか悪いのかは分かりませんが…。
労働市場
労働市場に関しては、日本は戦後長い間、長期雇用・年功序列型の安定した雇用制度の下で労働市場が形成されてきました。ところが、小泉政権以降弱肉強食の勝ち組み負け組みを生む、労働市場に競争原理の要素を導入し、貧富の差が少しずつ広がってきたという経緯があります。
ところが、台湾で生活していると、日本はまだまだ貧富の差が大きな社会とは思えません。中国へ行けば更に大きな貧富の差を目の当たりにするのかもしれませんが、台湾も中国大陸ほどではないかもしれませんが、裕福な勝ち組と貧困を強いられている負け組みが目に見える形でハッキリしています。貧富の差が最も現れるのは家と車です。台湾では裕福な方は、周りの目を気にすることなく新車の高級車を所有します。(台湾の貧富の差≫≫こちらの記事)
また、台湾では日本以上に労働市場の流動化が進んでいます。具体的には、雇用される人は、より待遇の良い条件を求めて何度でも転職します。日本のように、転職回数が多いと次の転職に不利になるというような考えはなく、仕事の出来る人ほど、より給料の良い仕事へと転職していきます。一方で、日本ではまだまだ職場のしがらみや世間体を気にして労働市場の流動化はなかなか進んでいないのが現状ですね。
ビジネス
金融サービスは台湾での現在の暮らしの中で、あまり触れる機会がないので割愛しますが、ビジネスに関しては、日本よりも台湾の方がビジネスを起業する環境は整っているように感じます。
その最大の理由は、「許認可」制度だと思います。日本では、何か新しいことを起業する場合は、何でも許認可を得てからでなければ、全てのことが前に進んでいかないため営業することが出来ないですね。
ところが、台湾では兎に角始めてしまえば後から何とかなるという、ルール上の緩さがあります。私の台湾人の友人も日本語学校を始めたのですが、補習班と呼称される塾の形態の学校を運営するには、通常は市政府の認可が必要なようです。
そこで、私は日本人的な発想で、学校を運営する上での認可は受けているのかと突っ込んだところ、そんなの必要ないとの回答でした。チェーン展開するような大きな学校であれば、必要かもしれませんが、個人で運営するような小さな教室なら必要ないよ、と言っていました。
たぶん、厳密には認可を受けなければいけないのでしょうが、台湾人の考えでは、ルールありきでビジネスを始める人はほとんどいないという事例でしょう。多くの台湾人は、事業を始めてみて成功したら、その時に正式の手続きを踏めば問題ないという考えなのでしょう。何事も小さなことに拘ることなく、大雑把にかつスピーディーに物事を進めていくのが台湾流のようです。
このように、台湾人は気軽な発想でビジネスを起業する方が多く、そのため、小さなビジネスが乱立する中で社会が形成されています。そのような意味では、台湾はビジネスを始めるという点では、日本よりも起業しやすいと思います。
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