台湾の世帯構成と親子関係から見る台湾人の国民性

台湾の世帯構成と親子関係および祖父と孫の関係から見えてくる台湾人の国民性についてレポートします。日本では、数十年も前から核家族化が進んでいます。実は台湾でも台北などの都市部ではその傾向があるように感じます。とは言っても、日本ほどは核家族化が進んでいるわけではなく、家族の世帯構成も3世代が同居している家庭が多いと思います。そこで、私の周囲にいる台湾人家族の世帯構成を簡単に紹介しながら、親子関係や台湾人の国民性にどのように関係しているのか、考えてみます。

l_107

 

台湾での家族の世帯構成は3世帯同居・4世帯同居は普通!?

日本では核家族が進み、もはや親子2代の家族構成が一般的となり、祖父や祖母を含めて3世代同居の世帯構成は、珍しくなりつつありますね。ところが、台湾人の家族構成を聞くと、意外にも祖父母、父母、兄弟姉妹(本人も含む)といった3世代同居世帯や、父母、兄弟姉妹、孫といった3世代同居世帯の家族構成が多いことに驚きます。どこか日本の昭和の時代を思い出すような家族関係が存在します。

そして、兄弟姉妹は結婚しても両親と同居して、彼らの子供が生まれても、そのまま同居し続けることも珍しくはありません。祖父母が健康の場合は、状況によっては4世帯家庭も存在していたりします。そのため、場合によっては台湾の世帯構成が、20人になったりして文字通り「大家族」となることもよくあります。

 

台湾でよく見かける世帯構成と家族構成が親子関係に与える影響

このような家族構成で生活していると家庭では、必然的に最も年齢が高い祖父母や父母が、経済的にも、精神的にも、家族の柱になっていることが多いようです。このような世帯の家族構成の家庭を何度も目にしてきましたが、多くの場合は、資産家の地主や家族を中心として事業を営んでいる家庭が多いように感じます。そのため、必然的に最も年配の方が家族の中では最も尊敬される立場になるのでしょう。これ自体は非常によいことだと思います。

また、両親が共働きの世帯が多い台湾では、孫がいる家庭は、お爺ちゃんやお婆ちゃんと孫との関係が強くなる傾向があります。その孫は両親が尊敬する祖父母に対して、更に畏敬の念を持つことになるのは、自然の成り行きです。このようにして、祖父母や父母の影響を強く受けて、大人になっていくのでしょう。何となく日本の昭和の時代の理想型のようにも見受けられます。

 

両親には物申すことが出来ない台湾人!?

結論から単刀直入に毒を吐きます。多くの台湾人の親子関係では子供は親に対して尊敬の気持ちが強いため、親の言うことに反論することはあまりないように見受けられます。(例外もあるけれど)そもそも親の言いなりになりたくない子供は、親との同居はしないですね。

日本人の場合であれば、(少なくても自分の家庭では)自分が社会人となり、両親が隠居生活をはじめたころから、両親は特に私には強くものを言わなくなりました。いや、個人的には昔から自由奔放に育てられたので、今までほとんど上から目線で両親から彼らの意見を押し付けられたことはなかったのですが・・・。両親も年老いてくると、子供たちのことは子供たちに任せる、というような考えが芽生えてきて、親子関係の発言権は親から子へと委譲されていくのが、一般的だと思っていました。

ところが、台湾では、年齢が高ければ高いほど、その人の意見を最大限に尊重するというような雰囲気がプンプンします。年齢だけのことではなく、例えば、私は現在、台湾の大学で大学生と接する機会がありますが、台湾の大学生は教師に対して、非常に従順です。自分達の意見を主張することはありますが、年上であり教師である私には、非常に素直な態度で対応する学生がほとんどです。そのような態度は、まるで彼らが高校生であるかのように感じることもあります。それでは、彼らが上位の人(祖父母や両親など年上の人や教師)に対して、なぜこれほどまでに従順で素直な態度を示すのでしょうか?

 

台湾の教育を歴史的背景から掘り下げてみると・・・

日本人の私の視点からは、台湾人の方は、大人も子供も上位の方や権威・権力のある方に弱い方が多いように思います。例えば、両親の考えに従順な子供、教師に対しては非常に従順な態度をとる学生・生徒、警察や政治家など社会的に権力を持っている職業の方には従順な大人などの人間関係には比較的当てはまると思います。逆に言えば、上記のような一般的に上位だと思われている方たちは、日本と比べると威圧的な考え方や振る舞いが若干強く感じます。

このような背景には、主に人間が成長している過程で大きく2つの環境が最も影響を与えていると思います。その2つの環境とは、学校と家庭です。現在の台湾を支えてきた年代層の方は、戦後の国民党独裁政権下で教育を受けてきた方たちです。そして、国家や社会の成り立ちを考える際、台湾の歴史的背景において特徴的な点は、国を司る公務員になることが出来る人は国民党に属する方のみでした。

李登輝という総統により社会の変革は進みましたが、つい最近まで非常に閉鎖的な社会だったわけです。そしてその当時、台湾の教育を司っていたのも国民党だったわけです。現在の大学レベルでは、台湾では海外留学経験の教員が大勢を占めており比較的自由な雰囲気がありますが、現在も教育機関には「修身」(?)という教科があり、今も尚、軍人の方が教えるような科目が教育の中に根強く残っています。

このように、権力を振りかざして社会を統制し閉鎖的な社会や教育を作り上げてきた歴史的背景があり、その中で教育を受け育ってきた方が、祖父母や両親の年齢層(50~70歳代)であり、その子供たちも国民党一党独裁政権時代の教育を受けてきた人たちです。彼らの孫世代(20歳代以下)は政治的な抑圧から解放された時代に教育を受けてきてはいますが、今も尚、公立学校の場合は教育の中に権力色の強い部分が残されているように感じます。

 

台湾では上位の人に従順な人が多い理由を考えてみた結果

人の考え方に最も影響を与える「学校」教育の中で抑圧的な発想が育まれ、そのように成長した大人が「家庭」の中で子供に対しても抑圧的な考え方を伝承しているようにも感じます。対照的に日本では「謙譲の美徳」という言葉に象徴されるように人に対して謝ることは、特に恥ずかしいことではないでしょうが、例えば、特に年配の台湾人の方が他人に対して謝ることは、あまり目にすることはありません。学校教育や家庭環境の中で上位の人を敬い、従順である人間を醸成してきたのではないかと思います。

台湾ではバスに乗れば若者は必ず高齢者に席を譲ります。これは素晴らしい社会のマナーだと思います。一方で、台湾では高齢者の方はこのような場面では、席を譲られるのが当たり前だというように対応します。

家庭内でもこの力学は働き、祖父母や父母の考え方に子供が従うのが当たり前だと考えられているのではないでしょうか。そして、息子や娘、あるいは孫に至るまで、祖父母や両親の考え方に真っ向から反対するのは良くないと思われているのではないでしょうか。

国家によって社会の成り立ちや歴史的背景が異なるため、当然のこととして国民性も異なってきます。台湾は今では海外留学などで外の空気を吸ってきた人たちが台湾に戻り、社会も解放され、若者世代は抑圧的な教育環境ではない状況にあると思います。今後、国を支える者も世代交代していくものと思われます。そうなった時には、また新たな潮流が生まれ、世代交代とともに国民性も少しずつ変化していくのかもしれません。

コメント

  1. tomo より:

    素晴らしいレポートですね。
    感服します。
    また、私の些細な感想を参考にしてもらい、
    感謝感激、あめあられです。
    有難うございます。

    台湾も秋の気配を感じますでしょうか?
    たぶん、いいぞ様の奥様は美人なんでしょうね。
    少しお酒が入ってのハイテンションな感想でした。

    • いいぞっ より:

      こちらこそ、記事ネタのヒントを頂き、ありがとうございました。
      普段、漠然と感じていることを、少しだけ深掘りしてみましたが、台湾人の親子関係に関しては、まだまだ伝えきれない部分が多いですが、文章が長くなってしまったので、一旦切り上げました。
      機会があれば、別の角度から考えてみたいと思います。

タイトルとURLをコピーしました