日本のお冷文化と台湾の漢方文化の違いから分かる食文化比較

日本のお冷の文化と台湾のレストランでの対応の違いから、その背景にある漢方の思想をご紹介します。

購読者の方から以下のようなコメントを頂きましたので、少し考えてみたいと思います。

レストランでのお水のサービス

日本ではレストランで、水は冷やして、提供されます。
生ぬるい水が出されることはありません。冬でも。

台湾の方は、日本の寒い冬にどうして、冷やした水を出すのか?
不思議に思っています。

それは日本ではおもてなしの精神から、わざわざ冷やした水を出すと言う気持ちからですが、漢方の習慣でキンキンに冷やした水を飲むと身体に悪い、身体を冷やすと考えている台湾人が多いようです。

いいぞ 様のご意見は如何でしょうか?

 

頂いたコメント通り、季節を問わず日本ではレストランや飲食店に入ると多くの場合は、冷たいお水、つまり「お冷」が出されます。ところが、台湾では、多くの場合、冷たいお水がレストランや飲食店では提供されません。なぜ、1年中、暑いあるいは暖かい国であるのにも関わらず、台湾では冷たいお水が気軽に飲めないのでしょうか。

 

いまや、台湾ではコンビニに行けば、必ず何種類かのペットボトルのミネラルウォーターが販売されています。つまり、コンビニで20元程度のミネラルウォーターが売れると言うことは、それくらい日常的に飲み水の需要は高いと言うことを示していると思います。そうであるはずなのに、日本ではメニューと同時に出される、お冷が台湾では提供されないのはなぜか?その理由の一つは、お水を提供する事にもコストが掛かるという考え方もありますが、それは欧米的な考え方だと思います。レストランの経営側から見れば、食べ物も飲み物にも物理的なコストとサービスコストが掛かっているからお金を払って買ってくださいというのが当然の考え方でしょう。

 

かつて、台湾にはお冷文化がないことを知らなかった時に、ホテル内のレストランのスタッフにお水をくださいと頼んだところ、ペリエ(Perrier)が運ばれてきました。一瞬、「エッ!」と思いましたが、この経験が全てを物語っています。日本人としては、食事時にはお冷が無料で提供されるために、その感覚でお冷を貰おうと思ったのですが、サービスとして水を頼む時には、料金が発生するものなのです。よく、そのレストランを観察してみると、フロアーの隅のほうに申し訳なさそうに、セルフで提供されている無料のお水があったことには食事後に気が付きました。

 

台湾ではコスト以上に、台湾にはお冷文化がない理由は、食文化の違いにありそうです。台湾では、レストランで食事をする時には必ずスープを付けてオーダーをします。自助餐などのローカル食堂でも必ずスープが用意されていて、スープは無料で提供されています。当然、そのようなレストランではお水は提供されていません。そのスープの味は、日本人にとっては非常に薄い味付けとなっていて、台湾人はそのようなスープを食事の最後に飲んで食事が終了する流れになります。

 

一般的には、台湾人は食事中にお水を飲むことはありません。そのために、レストランに行ってもお冷が提供されることがない反面、必ずスープを注文します。台湾人は日本の味噌汁を飲むと塩辛いと言いますが、日本人にとっての味噌汁は上記のような台湾のスープとは、食文化としての位置付けが違い、味噌汁そのものが料理の一品です。ところが、台湾人にとってスープは、料理の一品であると同時に、日本のお冷のような食事中の水分補給の一つの手段の役割があるため、スープの味は非常に薄いのだと思います。蛇足ですが、ローカル食堂では多くの場合、お茶が用意されていますが、そのお茶には一杯お砂糖が入れられて、甘くしてあるのはなぜでしょうか。(笑)

 

さらに、食事中のお冷とスープの関係で奥深い文化の違いが、歴史的に根付いている漢方食文化だと思います。台湾人と生活を共にして、あるいは台湾人とお付き合いをする中で、台湾人と日本人では冷たい飲み物に対する考え方が全く違います。漢方では、冷たい飲み物を常用することは、胃腸を冷やし消化機能を低下させ病気の原因になると言われています。そのため、子供がお水に氷をたっぷりと入れたお冷を食事中に飲もうとすると年配の方は声を荒げて止めさせます。特に、年配の方ほど、そのような台湾に伝統的に伝わる漢方の思想に敏感のように感じます。

 

実際に、暑い夏であれば冷たい飲み物を飲んでも汗として熱を体外に排出するため、あまり体調を崩すことはないですが、比較的涼しくなる冬に冷たいものをたくさん飲むと体調を崩すことが多くなりましたので、体調に合わせて飲み物も選択しようと思います。台湾に移住して、日本ではあまり見聞きしない考え方の一つは、医療も含めた中国漢方の思想ですが、知れば知るほど奥深く興味深いテーマです。最後に、街を歩けば、ドリンクスタンドにあたり、冷たい飲み物をいつでもどこでも購入できるのは、暑い国・台湾そのものですね。

コメント

  1. F野 より:

    はじめまして、私はいつも当ブログを愛読している台湾人です。
    ご指摘通り、台湾のローカル食堂で提供しているお茶は甘いですよね。
    あくまで私の観察だけど、台湾のお茶(紅茶)に砂糖が入っているのは、暑い天気に影響し消化能力が低下するためではないでしょうか。
    日本で旅行した時に、旅先のホステルでイギリス人と出会って紅茶について言葉を交わすことがある、彼の話によるとイギリスには日本のファーストフード店で提供してくれるの「アイスティー」が存在しない。そう、イギリスは緯度が高くて気温が低く、冷やした紅茶は美味しく飲めないからです。
    逆に台湾の場合は天気が暑くて食欲不振になりやすく、紅茶が一般的になるまでは漢方薬として砂糖水を飲んで、水分とエネルギーを補充する習慣がある。
    やはり天気は文化を大きく影響するんですよね。
    ちなみに台湾の紅茶と麦茶には体に優しく、苦味を抑えて香りをつけてくれるケツメイシを入れる。本当に漢方薬は台湾の食文化と一体化したと実感してきました。
    検証は必要だと思いますが、とりあえず自分の知る限りのことだけコメントにしました。ご参考いただければ幸いです。

    • いいぞっ より:

      はじめまして、コメントありがとうございます。
      (たぶん)台湾人の方からははじめてのコメントだと思います。
      日本人だけではなく、台湾の方からも当ブログをご覧頂いているとは、嬉しい限りです。
      暑い台湾で、エネルギー補給や消化を良くするために紅茶などの飲み物に砂糖が入っているというのは、凄く納得できる部分です。
      ご教示頂きありがとうございます。
      それと、日本語(文章)が本当にお上手ですね。日本を上手に話すことができる台湾の方は多くいますが、文章を上手に書くことができる台湾人の方はあまり多くないため、ビックリしました。今後とも当ブログをよろしくお願いします。

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