消費者物価指数、インフレ率、実質経済成長率との関係から、日本と台湾の直近30年間の経済状況を比較してみました。
それらの経済指標の結果と台湾で実際に生活している日本人が実感する物価上昇について、台湾現地からレポートします。
過去30年間の消費者物価指数とインフレ率と経済成長率の推移
台湾の過去30年間の消費者物価指数
- 2011年の基準年を100とした指数
- 2004年から台湾の物価は右肩上がりに上昇
台湾の過去30年間のインフレ率
- 30年間の長期的な視点ではインフレ率は下落傾向
- 経済成長には今後のインフレ率の維持が課題になりそう
台湾の過去30年間の実質経済成長率
- 実質経済成長率とは物価上昇率を引いた経済成長率
- 実質経済成長率も30年間の長期では下落傾向
- 今後の経済発展には実質経済成長率の維持が課題
上の3つの経済指標のグラフの通り、台湾のインフレ率は1980年代半ば以降は上がったり下がったりしながらも安定していることが分かります。
一方、消費者目線で経済指標を見ると、物価の上昇を示す消費者物価指数は一貫して右肩上がりであることが分かるかと思います。つまり、この30年間では、日常生活に密着した物価は上がり続けてきたわけですね。
また、実質経済成長率も直近の30年間では二度の危機がありながら、それなりに持ち堪え、経済成長率は鈍化しながらも、経済発展していることが分かります。
過去30年間の日本と台湾のインフレ率と実質経済成長率の推移
過去30年間の日本と台湾のインフレ率の比率
- インフレ率を日本と台湾で比べると、一貫して台湾のインフレ率が高い
- 直近の10年間では日本も台湾もインフレ率は低くレンジで安定している
過去30年間の日本と台湾の実質経済成長率の比率
- 実質経済成長率を日本と台湾で比較すると、一貫して台湾が高い傾向
- 直近10年間では日本も台湾も経済ショックをのぞくと低いレンジで推移し鈍化
経済指標から分かる台湾と日本の景気動向とは?
この2つの経済指標で全てを語ろうとは思いませんが、直近30年間での経済成長に関する傾向や景気の動向が少し分かると思います。
両指標とも、日本と台湾を比較してみると、おおむね台湾の経済指数が日本の経済指数を上回っていることが分かります。
例えば、実質経済成長率が毎年5%違うと20年間でどれくらいの違いが生まれるのでしょうか?
250%以上、つまり単純に考えると、経済規模において2.5倍の差がつくことになります。
たったの数パーセントの違いですが、長いスパンで考えると、社会に大きな影響を及ぼすことになります。
インフレ率についても同じことが言えます。グラフで明らかなように、よく言われていることの確認になりますが、直近30年間で日本のインフレ率はマイナスつまりデフレの状態だったことがよく分かります。
一方、台湾のインフレ率は直近30年間で、デフレに陥った時期も2回ほどありますが、一貫してインフレ傾向のようです。
台湾と日本の物価差は縮小している?
その結果、日本ではモノやサービスの値段が下がり、台湾ではモノやサービスの値段が上がったことになります。
このことにより、少なくとも、過去30年間で、日本と台湾の物価差は縮まり差が小さくなったことを意味することになるのでしょう。
私が初めて台湾へ旅行に来たのが20年くらい前のことだったと思います。
台湾に移住して、実際に台湾で暮らしてみた結果を踏まえて、台湾の生活費の一部を再考してみます。
その当時と比べて、感覚的に台湾の物価がどう変わったのでしょうか?
自分の感覚では、モノやサービスの値段が非常に高くなった印象です。
日常生活での台湾の物価については上昇傾向にあります。
例えば、食品スーパーで売られている食品などの商品は日本とほとんど変わらないものが多いです。
先日、ガソリンの日台物価比較をしたがガソリンについても日本と台湾の価格は拮抗している状況です。(原油は日本も台湾も輸入に頼っているという事情もあり、仕入れ値は同じ程度と推測できますが・・・)
ついでに日本と台湾のガス料金の比較もアップしておきましょう。
台湾では食費の物価上昇が最も大きい?
上記の中でも、物価が最も高くなったと感じるものは食材です。
一方、何年経過しても電車やバスの公共性の高い料金は、価格の変化を感じません。
夜市や屋台などで販売されている食べ物なども、以前と比べると、価格が少し上がったと感じます。
それらは極端な値上がりではないにもかかわらず、食材の価格は高くなった印象が非常に強く感じます。
このような屋台などで、商売をしている方たちは、どこで食材の仕入れ値上昇分のコストを吸収しているのか?本当に不思議です。
台湾で暮らして、インフレ率以上に価格変動が大きいと感じるモノやサービスを、下記に挙げておきます。
- 生鮮野菜・果物
- 肉・魚介類
- ガソリン
- 民間の教育サービス
- ファストフードでの外食
- レストランでの外食
- 輸入品全般
郊外では建設ラッシュが続き、貧富の差は更に拡大
現在、日本人の目から見ると、台湾(台中)の郊外では建設ラッシュでマンションや公共工事が盛んに行われている印象です。
これらの建設関連の工事は、景気がよいから行われているのか、それとも景気が悪いから政府が後押ししているのか?
あるいは、今まで景気はあまり良くなかったが、少しずつ良くなりつつあるから、政府が後押しして、景気刺激策を打ち出しているのか?
上記の2つの経済指標から考えると、台湾の経済状況は、徐々に上向いているように感じます。
一方、日本と台湾の物価差はありますが、台湾の物価は高くなったため、台湾の貧富の差は広がりつつあるように感じます。
経済の動向は日本と台湾では同じように景気が良くなり始める時期にはより一層貧富の差が生まれやすい状況にあるのだろう。
関連記事:台湾の貧富の差は大きい!?所得格差が更に拡大【実態とデータ】
関連記事:台中駅前地下通路のホームレスから見えてくる現在の台湾社会
コメント
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横からですが台湾はデフレですよ。
世界経済のネタ帳ではインフレ率を「消費者物価指数の対前年上昇率のこと。」と定義しています。
この定義では原油高や台湾元安の為替レート、
消費増税、異常気象による食品価格の高騰でも消費者物価指数は上がってしまいます。
私はインフレ率を見るのであれば(台湾の場合には)GDPデフレーターを見るべきだと思います。
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コメントありがとうございます。
ご指摘ありがとうございます。
インフレ率を使った理由は他に纏まった長期データがなかったためです。
経済学の学問的な視点から指標だけに注目して判断すればデフレなのかもしれないです。
ところが、台湾在住あるいは多くの台湾人の意見を総合しても、とてもデフレという状況にはなくこちらにアップした「インフレ率」以上にインフレ傾向です。
つまり、消費者視点と学問的なデータ視点では大きなかい離があります。
台湾では誰一人としてデフレと感じる人はいないと思います。
生活物価も不動産価格も長期的にはかなり上昇しているという状況をお伝えしたいと思いこのトピックを採り上げました。
> 横からですが台湾はデフレですよ。
> 世界経済のネタ帳ではインフレ率を「消費者物価指数の対前年上昇率のこと。」と定義しています。
>
> この定義では原油高や台湾元安の為替レート、
> 消費増税、異常気象による食品価格の高騰でも消費者物価指数は上がってしまいます。
> 私はインフレ率を見るのであれば(台湾の場合には)GDPデフレーターを見るべきだと思います。