台湾の男女格差やジェンダーについての実態を簡易なデータと台湾での少しばかりの経験を基に、台湾現地から台湾での現状をレポートします。一般的に、台湾では女性の社会進出が日本より進んでおり、夫婦別姓だけではなく、夫婦共働きの家庭が多く、男女格差も小さいと聞いたことがある方が多いのではないでしょうか。本当に台湾では、女性が社会で活躍しており、日本とは比べ物にならないくらい、男女格差が小さいのか、と検証したくなりました。
予め断っておきますが、私はジェンダーに関しては、特に関心が高いわけではなく、台湾社会の一側面として、一般的に台湾人の方はどのような働き方をしているのかという、ちょっとした関心を持っていたところに、新聞の報道で台湾人女性の未就労状況の記事を見かけたため、今回は台湾人女性と就労について簡単にご紹介します。
ジェンダーって何?
先ず始めに、そもそもよく聞く「ジェンダー」とは何でしょうか。よく目にする言葉ですが何となく意味はイメージできますが、他人には説明できないもどかしさがあります。
ジェンダーは社会的・心理的性別を指す。 生物学的性別に関してはセックス。ジェンダーとは、ある社会において、生物学的男性ないし女性にとってふさわしいと考えられている役割・思考・行動・表象全般を指す。男性にとっては男らしさであり、女性にとっては女らしさである。(ウィキペディア)
もう少し噛み砕いて言えば、動物界にはオスとメスが存在し、人間界には男性と女性かいます。動物界では、オスがメスにアピールをして交配を求め、他のオスから自分だけのメスを守ろうとしますが、このようなオスとメスの役割と理解できます。これを人間界に当てはめると、大雑把に言えば「社会の中での男性と女性の役割」と言えそうです。
これらのジェンダーについての考え方が、個人の社会での生き方や生き方の多様性が認められるようになり、女性の社会進出が進むにつれて、少しづつ変化し始めていると言うのが現状でしょう。
本当に台湾での女性の社会進出は進んでいるのか?
「未勞動女性達247萬人 10年新高」(中時電子報)という報道がありました。その報道によると、未就労女性は247万人で過去10年間で記録を更新したという内容です。60歳以下の就労率は男性が66.9%に対して、女性は50.7%となり、その差は16.1%になったとのことです。女性の就労率を国際比較をすると下記のような状況です。
- 台湾:50.6%
- 日本:49.2%
- 米国:57.0%
- 英国:57.6%
- 香港:54.6%
- 韓国:51.3%
日本以外の国は全て台湾を上回っています。つまり、女性の社会進出に関しては、統計的には日本以外では、台湾よりも香港や韓国の方が女性の進出が進んでいることを示しており、アメリカやイギリスなどの欧米先進国と比べると、圧倒的に台湾の女性進出は遅れているという結果になっています。
これらの主な要因は、結婚して子どもを出産後に仕事を辞めることが最も大きな原因になっていると綴られています。また、出産後の保育施設などが整備不足で就労の機会を失う要因にもなっています。これらは、日本でも同様に社会の問題となっていることで、台湾でも全く同じ問題を抱えていると言えるでしょう。
台湾では夫婦共働きが多く、女性の社会進出が進んでいると思い込んでいましたが、実際には統計データを見ると日本での女性とも、それ程大きな差があるわけではないことがよく分かります。
台湾が男女平等社会だと認識される理由
なぜ、台湾での女性の社会進出が進んでいるという幻想を抱いてしまったのでしょうか。その最も大きな要因は、別の統計データが示しています。台湾行政院が独自に行った調査結果の「ジェンダー不平等指数(GII)」ではオランダに次いで、台湾は世界2位になったようです。
この指数は出産比率、女性の国会議員の比率、女性の学歴に関する比率、人口比率や就業比率などから算出されているとのことです。例えば、国会議員の女性の比率では台湾では33.9%(日本:13.4%)です。未成年の出産比率が4%などと低いことなどが影響し、台湾行政院では、世界的には台湾は男女平等社会ではトップクラスだと判断しているのだそうです。
台湾の年収面での男女格差
ある統計データを基に、台湾での男女格差について考えて見ましょう。一般的に台湾では、公務員は年収が高い業種です。準公務員とも考えられる電力会社に携わっている従業員の年収(2015年)を男女別に比較すると、男性が約125万元に対して、女性は約115万元でした。その差は約10万元程度となり、10%未満だということが分かります。民間企業での男女間の年収差は更に大きくなる傾向にあります。
このように考えると、女性が活躍しやすい業界は公務員や教育関係の業界だと考えられ、必然的に女性が活躍しやすい業界では年収差は少なくなる傾向にあります。つまり、データの見せ方により男女の格差は小さいとも言える反面、男女格差が大きい業界もあります。
台湾社会の男女格差に対する私の台湾での経験則
台湾では、ことあるごとに台湾人の働き方やサービス産業での対応の違いなどを観察してきました。その中でも、特に女性に焦点を当てて観察していたわけではありませんが、台湾では男女問わず、自分で店を開業したりビジネスを始めて社長になりたいと考えている方が、日本と比べると圧倒的に多いです。
その要因は、おそらく民間企業に勤務するよりも自分で小さなお店を開店して、繁盛店にでもなれば、サラリーマンの数倍の年収を手に入れられる現状があるからでしょう。あるいは、日本とは異なり、一度失敗しても、実力さえあれば、次の勤務先へと転職が可能な組織風土があるからかもしれません。そのため、台湾では女性でも事業を立ち上げたり、自分でお店を切り盛りしている女性が多いというのが私の印象です。
また、名刺交換などをした時に知ったのですが、公務員や準公務員、あるいは女性が活躍しやすい業界では、女性でもマネージャークラスの方は、ごく一般的なようです。このような現状を見ると、日本よりも台湾の方が女性が活躍できる背景があるのだと思い知らされます。
あるいは、日本では建設業界などの現場ではあまり女性がスコップを持って汗水垂らしている姿を見かけませんが、台湾では土木作業や建築現場でも女性が働いている光景をよく見かけます。この現状を見ると、台湾では女性の側も男女の仕事に対する役割についての偏見のハードルも低いように感じます。つまり、男だから女だからと言う基準では仕事を考えておらず、自分に合った仕事や報酬の良い仕事を純粋に選択しているという印象を受けます。
まとめと感想
台湾での男女格差に関して、まとめると、台湾では蔡英文総統に象徴されるように政治分野での女性の活躍は世界的に見てもトップクラスなのかもしれませんが、社会全体での女性の就業率などに目を向けると、必ずしも特別に女性が社会進出をして、社会で働きやすい環境にあるとは言えないでしょう。
ただし、女性が働きやすい業界では年収面での男女格差は日本ほどは大きくなく、台湾では働くことが出来る環境に恵まれた女性は、能力があれば昇進する出来る組織風土が整っているのだと感じます。つまり、台湾では女性の社会進出は未だ発展途上にあるのでしょうが、いわゆる「ガラスの天井」の存在は台湾では皆無に近いという印象を強く持ちました。
コメント
大学で、台湾の女性について学んでいます。参考にさせていただきました。よかったら、参考文献を教えていただけませんか?
コメントありがとうございます。
データに関しては、台湾労働部のHPにて確認ください。
その他の意見については、経験上の私見です。