台湾の平均寿命について、平均寿命の統計データと過去の推移を考察し、台湾で平均寿命が長い理由を考えてみました。
平均寿命が長くなる要因には、医と食と住に関する現地事情が関係していると考えられ、客観的視点と主観的視点の両面から具体的に考察してみました。
さらに、長寿国家となった台湾社会の現地事情と今後の問題点にもスポットを当て、台湾現地からレポートします。
この記事の目次
台湾の平均寿命
台湾の平均寿命の統計データ
台湾の平均寿命は何歳なのか?
中華民国内政部の統計データ(2017年)を調べてみました。
- 男女:80.4歳
- 男性:77.3歳
- 女性:83.7歳
(引用元:中華民国内政部)
上記のように、台湾の男女合計の平均寿命は80歳を超え、長寿国家と認識されるに至っています。
上記の台湾の平均寿命と日本の平均寿命(カッコ内)を比較してみます。
- 男女:80.4歳(85.3歳)
- 男性:77.3歳(81.9歳)
- 女性:83.7歳(88.8歳)
日本の平均寿命が台湾の平均寿命を男女合計では5歳ほど上回っています。
また、男性は3.6歳、女性は5.1歳ほど日本の平均寿命が高いことが分かります。
平均寿命の推移
上のグラフは2013年~2017年までの5年間の台湾の平均寿命の推移を示しています。
男女合計、男女別の平均推移を見ると、ここ数年では僅かながら平均寿命が伸長していることが分かりますね。
合計 | 男性 | 女性 | |
---|---|---|---|
2013年 | 76.9 | 83.4 | |
2014年 | 79.8 | 76.7 | 83.2 |
2015年 | 80.2 | 77.0 | 83.6 |
2016年 | 80.0 | 76.8 | 83.4 |
2017年 | 80.4 | 77.3 | 83.7 |
上表は台湾の2013年から2017年までの5年間の男女合計と男女別の平均寿命を示す統計データです。
今後の平均寿命の予測
今後は、台湾では更に平均寿命が長くなり、日本並みの超長寿国家になると予想されます。
その理由として、先進医療技術の向上や予防医療の社会への浸透などが背景にあります。
以下では、台湾の平均寿命が長くなった理由と、現状の長寿社会の現地事情、および長寿に関する社会問題を簡潔に紹介します。
台湾の平均寿命が長い理由
食文化
台湾の食文化の中心をなしているのが穀物です。
稲作文化が発達してきた台湾では昔から米が食べられてきました。
日本の平均寿命が長い理由の一つが米を主とした穀物の食文化が背景にあります。
台湾での平均寿命が長いのも、穀物を中心とした食文化という共通点が見られます。
関連≫≫ 台湾のお米の味と品種 日本の白飯と比較して美味しい?不味い?
台湾では外食文化が発達していますが、家庭でも料理を作る家庭も多いです。
家庭料理に目を向けると、ご飯、肉・魚、野菜、スープとバランスの良い食事が特徴です。
このように、欧米のように肉やチーズに偏った食文化ではなく、程よい食のバランスが台湾人の健康を支えているのでしょう。
関連≫≫ 台湾と日本で異なるスープの概念と飲み方‐スープの味が薄い理由
台湾をはじめとした中華文化圏では「医食同源」という考え方があります。
医食同源(いしょくどうげん)とは、日頃からバランスの取れた美味しい食事をとることで病気を予防し、治療しようとする考え方。
(引用元:Wikipedia)
中華圏では漢方薬で使われるような材料を食材として使う食習慣があります。
このような医食同源をよく示す事例としては、漢方料理があげられます。
実際に食べてみると、日本にはない匂いや味のため、おいしいと感じる人は少ないかもしれません。
また、漢方の考えから、体の中を冷やさない食文化も医食同源が元になっているのでしょう。
台湾では食事中にお冷などの冷たい飲み物を飲まないで、食後にはスープを飲むか、熱い烏龍茶を飲みます。
身体を温めることで体調のバランスを崩さないという考え方があるのでしょう。
このように、台湾でも医食同源の考えからは随所で見られ、寿命の長さを支えているのでしょう。
関連≫≫ 台湾の漢方食材10選(お土産にも)|医食同源と食習慣
医療水準
台湾の医療水準は日本と同様に世界的にも非常に高いレベルにあります。
また、国民皆保険として健康保険制度が整備されているため、医療費の負担が低く、病院にかかることができます。
また、町を見渡してみると、病院やクリニックの数が非常に多いことに気付きます。
このように、高度な医療水準で、全国民が過度な負担なく医療を受けられ、いつでも医者の受診を受けられるのが、医療に関しての現地事情です。
台湾の平均寿命が長い理由の一つとして、医療制度と医療水準がその背景にあることがよく分かります。
生活習慣
台湾では昼寝の習慣があり、例えば、学校では食事をした後、昼寝をする時間が設けられています。
昼寝は社会にも浸透しており、お昼の休憩時間には、みんな机に頭を伏せて、昼寝をしている光景を見たりします。
このように、子どもも大人も少しの時間でも日中に身体を休める時間を設けていることが長寿の背景にあるのかもしれません。
台湾のタバコの喫煙率を調べてみると、日本と比べてみても低いことが分かります。
タバコは肺がんの原因にもなり、受動喫煙により周囲の人への悪影響もあり、台湾では喫煙場所は厳しく制限されています。
関連≫≫ 台湾のタバコと喫煙マナー|日本より厳しいルール罰金10,000元
タバコの喫煙率は年々下がり、平均寿命は年々長くなっている現状を見ると、長寿の背景に喫煙率が関係しているように感じます。
気候
台湾の気候は年間を通して夏の時期が長く、冬の時期は比較的温暖で短いのが特徴。
台湾での温暖な気候と平均寿命の因果関係を証明するのは難しいですが、暖かい気候が身体に過度な負担を掛けないのは事実。
例えば、日本の例では、寒さが厳しい東北地方と沖縄の平均寿命を比べると、沖縄の女性の平均寿命は最も長く、東北地方の平均寿命は相対的に短くなっています。
以上の事例を参考にすると、台湾での平均寿命が長い要因として、温暖で過ごしやすい気候が影響しているのかもしれませんね。
国民性
台湾人の性格は「個人主義で、相手にも自分にも大らかな」ことが特徴。
ストレスが多い社会で暮らしている人とストレスが少ない社会で暮らしている人の寿命を比べると、ストレスレスな社会で暮らしている人の方が長生きしそうです。
現代の台湾社会での若者が必ずしもストレスを感じていないとは言えないですが、台湾人は上記のように大らかな人が多いため、周りにも過剰な気を遣うことが少ないため、ストレスを感じにくい社会です。
精神的なストレスが少ない社会で暮らしていれば、自然と長生きができるように感じます。
長寿国家・台湾の現地事情
長寿社会の台湾事情
平均寿命が長くなればなるほど長寿国家が形成され、高齢化社会となりますね。
そのため、昼間に外出して街を見渡すと、高齢者の比率が高いことに驚かされます。
電車やバスに乗っても、スーパーで買い物をしても、公園で散歩をしても、年配の人ばかりが目に付きます。
これが現在の台湾社会の現地事情で、特に近年、台湾は高齢化が急速に進んだ社会として知られています。
外労の家政婦・介護事情
高齢化社会を支えるため、人手不足を解消する手段として、外労(外国人労働者)が多く働いています。
台湾では外労は台湾人の家政婦や介護ワーカーとして働いているケースが多いのが実状。
昼間に公園を散歩すれば、東南アジア出身と思われる外労が高齢者の手を引いたり、車椅子を押している光景をよく目にします。
これが、台湾での長寿社会をよく示している光景であり実態です。
社会保障費の膨張
台湾では平均年齢が高くなるにつれ、長寿国家だと喜んでばかりいられない現状があります。
これは日本と同様の現象ですが、社会保障費が膨張して国家予算を圧迫する要因になります。
年金支出や国民健康保険(台湾では全民健康保険)の支出が増大するため、社会保障費が増加するというわけです。
今後も台湾では平均寿命の伸長と社会保障費の増加は二律背反の関係にあり、社会問題としてクローズアップされそうです。
まとめ
以上、台湾の平均寿命について、平均寿命の統計データ、平均寿命が長い理由、長寿国家の社会問題に関して、現地事情を踏まえて詳しく解説しました。
世界の中では台湾ではアメリカの平均寿命を超え、先進国の中でも平均寿命は長い社会を形成しつつあることが確認できました。
以下では、上記で述べてきたポイントをいくつかまとめておきますので、参考にしてみて下さい。
- 台湾の平均寿命は2015年以降、80歳以上を維持
- 最新の台湾の平均寿命は男性は77.3歳、女性は83.7歳
- 台湾の平均寿命が長い理由は医と食と住が影響
- 長寿国家・台湾では高齢化が深刻で外労が高齢者を支えている
- 今後は社会福祉など社会保険費の膨張が懸念される