日本語教師にとって資格よりも重要な特技や能力

コラム

日本語教師として働くために、持っていると便利だと思う特技や趣味についてのレポートです。日本語教師になるための条件として、多くの場合は、日本語教育能力検定試験に合格していること、あるいは日本語教師養成講座を修了していることなどの条件があります。そのため、日本語教師の経験がない方が、そのような仕事を目指す場合は、先ずは客観的な基準となる資格が必要になります。

ところが、実際に日本語教師になってみると、資格を取得する過程で学んだ内容よりも、重要なことはその他のところにあるということに気付かされましたので、実際に日本語を教える現場から得られた経験を基に私見を簡単にご紹介します。

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日本語教師の資格よりも重要な特技や能力

実は、日本語教師になるためには資格は必要ありませんし、資格試験の学習過程で学ぶ内容ではなく、下記のような能力や特技の方が重要だと感じることが多くあります。

1.文字をきれいに書く能力
2.絵を上手に描く能力
3.大きな声でゆっくりハッキリ話す能力
4.日本文化に関する特技

 

文字をきれいに書く能力

日本語教師をしていると黒板やホワイトボードに文字を書くことが非常に多いです。私も、文法を説明したり、例文を提示したりするときには、よく文字を書きます。実は、最近では授業準備としてパワーポイントを使う機会が多くなっていますが、学生からの質問などがあり説明をする時には100%、文字を書くことになります。

そんな折、ミミズが這ったようなヘナチョコな文字を書いた時には、学生から文句を言われるだけではなく、教師の品格さえも疑われかねません。やはり、ハッキリキレイな文字をスラスラと書くと学生からの教師に対する印象も全く異なるものとなります。

また、綺麗な文字を書いて見せることも学生への学習機会の一つでもあります。綺麗な文字を書いてお手本を見せることも日本語教師の役割だと思います。そのように考えると、綺麗な文字を丁寧に書く能力は日本語教師にとって必須能力かもしれません。

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絵を上手に描く能力

日本語教師をしてみて初めて気が付いたことですが、コミュニケーションとは言葉だけではないということを実感しています。時には、言葉を教える時には言葉が邪魔になることさえあります。

例えば、台湾人の学生に間接法で日本語を教える場合には、簡単に中国語を使ってしまい、学生に考える機会を奪ってしまうことも多くあります。そんな折に、素早く上手に絵を描いて学生との間合いをとることが出来れば、教えたことを強く印象付けることが出来る場合も多くあります。

台湾で中国語を学び始めた時には、台湾人の中国語教師は上手に絵を描いていたため、その当時は外国語を教える際に絵を描くことが重要だということに無関心だったのですが、逆の立場になり、外国語として日本語を教えることになり、初めて絵を上手に短時間で描くことの重要性を実感しました。実は、私は絵を描くことが、あまり上手ではないため、絵を描くと学生から笑われてしまうのですが、出来るだけ多く絵を介してコミュニケーションをとるようにしています。

それは、絵を描いて学生に対して授業に集中してもらう狙いがあります。それだけではなく、下手糞な絵を敢えて描いて見せることで、学生から苦笑いをさせることで、学生との心理的距離を縮める狙いもあります(言い訳)。日本語教師にとって、絵を上手に簡単に素早く描く能力があれば、非常に授業が進め易くなることは間違いないことでしょう。

 

大きな声でゆっくりハッキリ話す能力

「日本語教師は日本語を日本人に話すように話してはダメ。」
これは、私が1年目に感じた日本語教師が話すスピードに関する教訓でした。場合によっては、外国語である日本語を外国人に対して話すときには、教壇では演じなければならないことがあります。しかも、いつもよりも大きな声を斜め15度に向かって、声を張り上げるようにハッキリとした発音で話すことが重要だということを実感しました。

とは言っても、常にこのような話し方が必要と言うわけではないですし、例え必要だとしても、常に実行できるわけではないのが現実です。つまり、私が1年目に担当した日本語科目は入門者・初級者のクラスだったため、単語一つを発音する場合もゆっくりハッキリと発音しないと学生は正確な発音を認識して聞き取ることが出来ませんでした。逆に、中・上級者クラスであれば、受講生の日本語レベルによっては、日本人が話すようなスピードで発話することの方が学生にとっては学習効果が高まるかもしれません。

そして、上記のようなことに気が付いた私は、それ以来、かなりゆっくりとハッキリと大きな声で発音をするように心掛けました。ところが、何十年間も掛けて身に付いた自分の母語である日本語の話し方(スピード、声の大きさ、声の高さなど)を授業中だけ変えることは至難の業です。実際には、常に「ゆっくり・ハッキリ・大きな声」で話すことは、自分にとってかなり違和感のある難しいことだということも実感しました。

授業中は、かなり意識して話していても、いつの間にか、話すスピードは徐々に速くなり、視線が落ちてくるにつれて声の大きさも小さくなり、一部の人に語り掛けるように話していたりします。このような経験から、演劇などの経験がある方は、日本語教師に向いているのではないかとも思うようになりました。

どちらかと言うと、普段はボソボソと低い声で分かり難い声質で話していることが多い私は、授業中に大きな声で、ゆっくり、ハッキリと発話して、全ての学生に問いかけるように話すことが苦手なのですが、担当するクラスによっては常に演じる能力が求められています。

 

日本文化に関する特技

日本語教師の仕事をして以来、私が最も必要だと感じたことは、日本特有の文化に関する特技です。逆に言えば、それは、私がそのような特別な日本の文化に関する特技を持ち合わせていないためだと思います。具体的には、下記のようなスキルを身に付けていると日本語教師には非常に便利です。

・書道
・茶道
・華道
・香道
・武道
・和食(日本料理)
・和服の着付け など

上記のような特技があれば、海外で日本語教師として日本語を教えるだけではなく、日本人として文化交流という形で日本文化を伝えることができます。また、外国人の方たちは意外にも自分たちの国にはないもの(文化)に関しては、非常に高い関心を持っているものです。

日本語教師を目指すのであれば、是非、日本語以外の日本特有の文化に関する特技を一つくらいは身に付けておいたほうが、日本語教師として現場に立った時に役立つことは間違いでしょう。


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