「日本語は難しい?」中国語話者の台湾人に聞いてみた結果

日本語教育

台湾人の大学生に「日本語は難しいか?」「日本語のどのような部分が難しいか?」を聞いてみた結果について、台湾現地からレポートします。大学の授業の一環で日本語学科の学生に日本語について考え、グループ学習として各グループに意見をまとめてもらいました。

マインドマップを活用することで自分たちの意見をまとめる演習として、約1時間程度の時間で、出来るだけ多くの観点から意見を出すように指示しましたが、いつものように最後は少し時間が足りなくなってしまいました。

それでも、レポートとして書いてもらったマインドマップはなかなか興味深いものでしたので、各グループから提出された内容の集約的なものを簡単に、ご紹介します。

 

台湾人学習者のマインドマップから分かる「日本語の難しさ」

授業の中で実施したことは、5人前後の小グループを作り、各学生が意見を出し合い、A4用紙にグループで出された意見をマインドマップの形でどんどん書き込んでいく演習です。今回示したテーマは、「日本語は難しい?」です。日本語の難しい部分だけではなく、日本語の簡単な部分も期待したのですが、結果的には日本語の難しい点に焦点が当てられました。

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文法

  • SOVとSVOの違い
  • 助詞の使い方・使い分け
  • 動詞の変化
  • 敬語の使い方・使う場面
  • 自動詞と他動詞の違い
  • 動詞の表現の違い(あげる・もらう・くれる=給)

私が台湾人学習者に日本語を教えていて、中国語話者が日本の文法に関して難しいと思われる点は、「助詞の使い方」、「動詞の変化」、「敬語の使い方」の3点でした。と言うのも、日常会話が問題なくできる台湾人の学生や教師でも、文章を書く練習をさせたり、会話をしてみると、上記の3点に関しては、間違えてしまっているケースが非常に多く見受けられます。これらの意見は、予想通りの回答でした。

それから、中国語と日本語の動詞の違いにより、台湾人学習者には理解し難いことが、自動詞と他動詞の使い分けです。中国語には自動詞も他動詞もなく同じ表現を使いますが、日本語には場面により動詞を使い分ける必要がありますね。また、中国語では「給」で示される言葉も、日本語では状況と場面により、「あげる、もらう、くれる」を使い分けなければなりません。これらの使い分けを理解できるように教えるのも、日本語教師の腕の見せ所ですね。

発音

  • アクセント
  • 清音と濁音の違い
  • 長音・促音
  • 訓読みと音読み

中国語と日本語の違いから中国語話者の母語の干渉が起こり、中国語話者である台湾人には、日本語の清音と濁音の聞き分けができない場合が多くあるようです。例えば、「タタミ」と「タダミ」は、日本人が畳と言ったつもりでも、台湾人には「タダミ」と聞こえる場合があります。これは、t(有声音)がd(無声音)の中国語と日本の違いから起こるものですね。中国語の「t」は有気音になり、かなり強く息を吐き出すように発音するため、日本語にはそのような発生音がないため、強く息を吐き出さない「t」の日本人の発音は台湾人には「d」(無気音)のように聞こえてしまうというわけです。

長音は「ー」で示される音で、促音は「ッ」で示される音です。例えば、日本人が良く使う言葉で、「ちょっと待って。」を、学習暦の浅い台湾人学習者に発音させると「ちょと待て!」と言う発音になってしまいます。たまに、学生からこのように言われるとドキッとしてしまいます(笑)。相手にお願いするつもりで言った言葉が、非常に失礼な命令になってしまいます。

聞き取り(リスニング)

  • 話すスピードが速い
  • 未習の単語
  • 清音と濁音の違いが聞き分けられない
  • 方言は分からない
  • 同音異義語(発音が同じでも意味が複数)

聞き取りに関しては、話すスピードが速いと聞き取れないと言う教科書通りの意見が大半でした。それでは、ゆっくり話せば聞き取れるのかどうか、と問いかけたところ、分からない(未習)の単語が含まれると、途端に聞き取れなくなってしまうという意見に落ち着きました。

文字

  • 繁体字と日本の漢字は少し違う
  • 同じ漢字でも意味が異なる
  • 外来語(カタカナ)が正しく書けない
  • 外来語の意味も分からない

台湾の中国語は繁体字で表記されるため、非常に日本語の漢字と似ていますが、意外にも台湾人の学生は繁体字から日本の漢字の変換が苦手のようです。台湾人学習者の多くは「発音」ではなく「發音」と表記してしまいます。日本人にはどちらで表記されても理解されますので、台湾人学習者は意識して日本語の漢字を学習しない傾向があるのかもしれません。

また、同じ漢字でも中国語と日本語では異なる意味、あるいは使い方が異なる言葉(単語)が多くあります。台湾人学習者に多い間違えの例は下記のようなものです。
「私は、未来、日本に留学したいです。」
意味は通じますが、未来ではなく「将来」を使うべきですが、多くの台湾人学習者は間違えてしまいます。

また、日本語には外来語が非常に多くなっていますが、台湾人学習者を悩ませているのは、外来語の表記と発音です。例えば、「イメージ」と表記しても、多くの台湾人は理解できないという事情があります。当然、文章を書く時に、外来語をカタカナで表記するのは更に難しいものです。台湾人学習者には、インターネットも「インタネット」という表記が多くなります。

 

まとめ:台湾人学習者の視点から日本語の難しさを理解する

以上が、中国語話者である台湾人の大学生の視点から、日本語の難しさを討論してもらった結果です。これらの結果から、学習者の立場での日本語の難しさが分かるだけではなく、日本語を教える立場にある日本語教師が気を付けるべきポイントが良く分かるのではないでしょうか。

それと同時に、自分の母語(日本語)と学習者の母語の文法、発音、文字などの違いを知っておくことが、結果的に、日本語を教える時には学習者が間違えやすいポイントを理解することに役立ち、日本語学習者の効率的な習得に繋がっていくのだろうと実感した次第です。



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