介護福祉士(介護士)の方が日本語教師を目指すことのメリットと今後の展望について、日本の現状と日本語教師として日本語教育の現場にいる者として少しだけ考えてみたいと思います。
介護福祉士とは?その現状は?
専門的な知識や技術をもち,身体上・精神上の障害があるために日常生活を営むのに支障がある人に対して,入浴,排泄,食事などを含む介護や,介護に関する指導を行なう人。社会福祉士及び介護福祉士法 (昭和 62年法律 30号) の規定に基づいた資格職。 (参照元:コトバンク)
上記の通り、介護福祉士とは、主に体が不自由な方へのサポートをする仕事をする方のことですが、高齢者の方が増えるにつれて、その人手は不足傾向になり、介護士の需要は高まるばかりです。仕事の厳しさと給料の低さにより、離職をする人が後を立たないと言われています。
平均年収 : 約380万円(270~400万円)
そして、今後は日本の高齢化はさらに進むことが予測されているため、それに伴い介護士の人手も比例して必要になることでしょう。ところが、介護職とは肉体労働そのものでありならが、職場環境や人間関係などのストレスも多いと言われており、介護士にを目指す人が高齢者の増加に伴っていないようです。こうなると、海外から介護職の外国人労働力を呼び込む必要に迫られます。
介護士の方が日本語教師に転身するメリットは?
介護業界の現状として、経済連携協定(EPA)により、インドネシア、フィリピン、ベトナムから介護福祉士候補者を招きいれ、介護福祉士の国家資格試験の受験を期限付きで受験することが出来るようになっており、合格すれば、そのまま日本に滞在し就労することが出来るようになっています。
この過程で、外国人の介護福祉候補者は日本語を学び日本語で日本人と同じ国家資格試験に合格しなければならないというように、彼らにとってはかなりハードルが高くなっています。日本人であっても介護福祉士の国家資格試験の合格率は60%程度だという現実を見れば、その実情がお分かりになることでしょう。
つまり、逆に考えると、介護業界のノウハウや介護士の知識および介護職のスキルがある方が、日本語教師を目指すメリットは、介護士の専門性を活かした日本語教師として活躍できるというところにあります。
実際に、このような専門的な分野の日本語を教えることは、一般的な日本語教師には至難の業です。介護で必要な専門用語だけではなく、介護の現場で必要な知識やスキルがなければ、介護士の卵たちに日本語を教えることは到底無理なことです。
日本語教師を目指す介護士が習得しておくべきスキルは?
現在、介護士の方で日本語教師を目指す方が、習得しておいたら役立つであろうスキルとは、ズバリ「英語」でしょう。もちろん、日本語教師の資格試験に合格することや、420時間の日本語教師養成講座の受講を修了することは、必要条件となりますが、それ以外のスキルと言えば、やはり世界共通言語である英語でのコミュニケーションが出来ると日本語教師としての幅も広がります。
将来、日本で介護職を目指す東南アジア出身の方たちのなかでも、フィリピンでは公用語として英語を使用しているだけではなく、インドネシア人やベトナム人でも海外で介護職の仕事を得ようと考えている若い方たちはバイタリティに富んでいて、簡単な英語は既に身に付けている方が多いです。
そのため、介護職を目指す東南アジア出身の方たちに日本語を教える場合は、簡単な英語だけでも習得しておけば、日本語を教える時には役立つことでしょう。もう既に、日常会話程度の英語を身に付けている方は、日本語教師になった時には、自分の英語のスキルが役立つことでしょう。
介護士経験ありの日本語教師に関する今後の展望
もし、介護士の方が、英語でのコミュニケーションが可能で、日本語教師としても認められれば、働く場所は日本ではなく、海外に向けてもよいでしょう。実際に、東南アジアの介護士候補者の方たちは、日本へ渡航する前に自分の国で基礎的な日本語を学ぶことが一般的です。
彼らは自国で数ヶ月間、日本語のトレーニングを受講してから日本へ向かいます。そのため、フィリピンやインドネシアあるいはベトナムでは、現在、介護士の専門知識を持った日本語教師が求められており、そのような仕事の需要が高まっているという現状もあります。
そのため、現在介護職の十分な知識と経験があり、海外で働いてみたいと考えている方は、上記のような場面では日本語教師が不足しているためチャンスでしょう。また、今後は日本での高齢化に伴う介護士の不足により、更に海外からの介護士の受け入れが必要になることでしょう。
そのようになれば、介護職を目指す外国人へ日本語を教える日本語教師の不足は更に進むものと予測されます。是非、人に教えるという仕事に興味があり、強い意志がある介護士の方はチャレンジしてみてはいかがでしょうか。
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