台湾の大学で新米日本語教師1年目の1学期を振り返ります

経験談

台湾のとある大学に日本語教師として採用になり、約半年が経過したため、昨年の9月からの前学期を振り返っておこうと思います。

9月から大学で台湾の学生(中国からの留学生も)に日本語を教え始めたのですが、それ以前は日本語を教えた経験も日本語教育のバックグラウンドもない自分が大学の教壇に立っているのが最初の1~2ヶ月間は不思議でたまりませんでした。

これは、同じ状況で同じ経験をした方でないと分からないと思います。

一般的には、海外の大学で日本語を教える場合は、日本で大学の主専攻か副専攻で日本語および日本語教育に関する学習をするか、日本語教師養成講座を受講して、日本語学校か地域の日本語教室などで日本語教師としての助走期間があり、海外の学校へ転職することが多いようです。

今回、私は全くの素人だったため、大学の新学期が始まる前に急遽、台湾で定期的に開催されている日本語教師養成講座を受講して、日本語学習者にどのように接して、どのように教えるべきか、などの一般的な知識と教授法を学習しました。

ところが、大学では今まで日本語を全く学習したことがない入門者を相手に日本語を教えなければいけなくなりました。

少しだけでも日本語の学習経験がある学生に教えるのと全く日本語の学習経験がない学生に教えるのとでは、教える側の負担が全く違います。

まず、一番最初の授業では、座席数50席以上の教室にほぼ満席の学生が集まっていたのを今でも忘れません。

学部事務室の方でも、一クラスの学生数が何人になるのか授業の登録状況によって変わるためハッキリとは分からないと伝えられていたため、多くて30名くらいだろうと思っていましたので、あまりの学生の多さにびっくりしました。

一番最初の授業は、クラスの登録をしている学生も未登録の学生も入り交ざっているようなので、あれほど多くの学生が集まったのでしょう。

それでも、学生数が最も多いクラスは50人以上の登録があり、最も少ないクラスでも30人以上でした。

どの大学でも同じかもしれませんが、回を重ねるごとに学生の出席人数は少しずつ減っていき、中間試験や期末試験前になると教室内は学生で熱気を帯びるという状況でした。

自分の教え方が、もっと熟練していて学生を飽きさせない技術があれば、毎回の学生の出席率は変わらないでしょうが、素人で新米の日本語教師にはそれ程の技量はなかったようです。

そして、学生に日本語を効率よく身に付けてもらうため、あるいは学生を飽きさせないで授業に集中させるために、毎回授業が終わってから反省をして、また次の授業のための試行錯誤のために頭を悩ましました。

自分の頭でいくら考えても限界があるので、ベテランの先生に話を聞いたりやインターネットや書籍などで最も自分にあった教授方法を探る毎日でしたが、結論的には一般的な教案を真似して授業を進めることが最も効率的だということに最後になって気が付きました。

そして、最もショックだったのは、こちらがどんなに頑張ってよい授業の準備をしてみても、外国語を習得することの難しさにぶつかって習得することを諦めかけている学生を振り返らせることができなかったことです。

日本語だけではなく、外国語の習得は非常に時間が掛かる反面、必要な文型や単語は暗記しなければ習得が進まないのが現実ですが、このプロセスは必ずしも楽しいものではないため、1人2人と脱落者が出てくると、雪崩のようにクラス全員にそのような風潮が蔓延していきます。

そして、学習意欲に満ちた少数の学生とほとんど学習意欲がなくなった多数の学生という二つの集団にグループ化していきます。

そして、学習意欲が高い学生に基準を合わせるとやる気のない学生から難しすぎる、学習進度が速すぎるなどの不満が出てきます。

一方で、学習意欲が低い学生に基準を合わせると、やる気のある学生からは、反対に学習進度も遅く、学習内容も薄く受講していても為にならない授業だとの不満が出てくることになります。

この辺の学習者間のギャップを上手に操って、クラス内での習得レベルの異なる学習者に対応して、学習者全員に高いモチベーションを持たせることは、熟練した日本語教師の腕の見せどころなのだろうと思います。

そして、先日期末試験が終わり、私が担当する前学期の授業は全て終了しました。

台湾の大学で日本語教師として日本語を教えたこの半年間を振り返って、一言で表すとすれば、「疲れた!」(笑)

期末試験の結果は、各クラスに大きなばらつきが出て、よく理解できているクラスとそうでないクラスがありました。

どのクラスもほとんど同じ教え方で、ほとんど同じ内容を教えたにも関わらず、教え方が下手だったためか、あるクラスはかなりひどい試験結果になってしまいました。

逆に言えば(プラスの発想をすれば)、あるクラスではかなり順調に学生が日本語を学習してくれたおかげで、良い試験結果になったともいえます。

最後に付け加えると、一般論として、日本でも台湾でも同じことで、勉強だけに限ったことではなく仕事でも同じことですが、モチベーションの高い人は放置していても自ら道を切り開いていきます。

その反面、モチベーションの低い人は放置しておくと堕落していくばかりで、このような人たちのモチベーションを上げるのは非常に難しいということを思い知らされた半年間となりました。

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