台湾人が日本へ不動産投資をしたいと考える5つの理由と背景

台湾人による日本への不動産投資について、台湾現地からレポートします。もう5年くらい前から日本の不動産への投資傾向はあったようですが、最近は更にその流れが加速しているようです。今回は、台湾人が日本の不動産を買いたいと考える理由や背景について、台湾人と接触する中で感じる個人の独断と偏見の視点で考えてみたいと思います。

 

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日本への不動産投資の最大の理由は?

このサイトで何度もお伝えしている通り、日本に観光旅行へ行く台湾人が急激に増えており、日本で爆買いをする台湾人も多いとのことですね。

最も大きな要因は、「円安」の影響でしょう。数年前であれば為替レートが、80円/ドルの時代であったのに比べて、現在は110円~120円/ドルの時代です。

一方的な円安誘導であるため、米ドルのみならず、台湾元に対しても、台湾元高&円安の傾向になっております。

この為替の状況を台湾人の視点から視覚化してみます。下のグラフは、日本円と米国ドルの為替レートを台湾元を基軸とした場合の過去10年間の変動の推移です。

2008年~2017年の10年間の為替レートの変動を2008年1月を100とした場合の変動率(為替レートを示しているわけではない)を示しています。

このグラフから台湾人の目線からは日本円がどのように移っているのかが分かると思います。

このような影響を受けて、台湾人視点からは日本の不動産を購入する際、単純に考えると、1500万円(80円/ドルの場合)であった物件が、現在は1000万円(120円/ドルの場合)で購入できるようになったということになります。

台湾の投資家からすれば、日本の不動産物件が割安に感じられるのも頷けます。

 

台湾の不動産と日本の不動産の利回りの違い

次に、ご紹介したいのは、不動産利回りについての両国の違いです。一般的に、日本の不動産の年利回りは、4~10%くらいだと言われています。

一方、台湾では、なんと平均的利回りは、たったの1~3%くらいだと言われています。と言うのも、後述しますが、台湾では不動産投資をインカムゲイン(不動産収益)目的ではなく、キャピタルゲイン(売買差益)目的で投資する場合が多いためです。

私が住んでいる台中市の例を挙げて、不動産利回りについて考えてみましょう。

台湾の台中市郊外の新築マンション価格を見ると、割安物件というものはほとんどなく、数千万元との表示をよく目にします。円安の現在、日本円に換算すれば、紛れもなく億ションになります。

一方、こんなに高い物件が立ち並ぶ郊外の賃貸物件の家賃を調べてみると、新築の賃貸物件ではないですが、日本の賃貸物件よりも広いマンションやアパートが、日本の家賃の2分の1以下で借りられます。

大家さんからすれば、不動産物件の価格は高いのにも関わらず、家賃収入は低いという現象になっており、非常に不利な経営状況になります。台湾のこのような不動産状況が、台湾の利回りの低さを象徴しているようです。

 

台湾の不動産はピークを迎えバブル?

台湾の不動産価格は過熱気味で、そろそろピークを迎えているという噂もチラホラ聞こえてきます。

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国民党政権になって以降、台湾と中国の関係は少しずつ密接になり、中国からの「人・モノ・金」の流入も加速していました。

特に、注目したいのは、お金の移動により、台湾から中国への投資のみならず、中国から台湾への投資も増加していました。中国からの台湾の不動産への投資の影響を受けて、台湾の不動産価格はバブルを迎えているという方もいます。

下のグラフは台湾の各都市ごとの不動産価格の上昇率(下落率)を示しています。2001年を基準にした場合、不動産価格は2.5倍~3倍に高騰していることがわかります。

事実、台中郊外の物件にまで中国からの資金が流れ込み、至るところで上昇した不動産価格の張り紙を目にします。かなりの田舎の農地でさえ、数百万元の価格表示があったりします。

先述のマンションの価格に至っては、日本の地方都市の価格を上回っているのではないかというくらい割高に感じます。

台湾政府は、過剰な不動産投資を懸念して、住居用不動産以外の投資目的の不動産に対して、重い税金を掛けることで、不動産価格の高騰を抑制しようとしているようです。

このような状況では、台湾においては、もうそろそろ転売して売り抜けようという投資家がいても不思議ではないでしょう。

 

日本の不動産価格の安定性

日本と台湾の不動産価値の安定性について、カントリーリスクを加味すれば、日本の不動産の方が圧倒的に安定していると言えるでしょう。

2016年の台湾総統選挙により、民進党の蔡英文総統が誕生して以降、両岸関係は外交をはじめとしてギクシャクし始めています。その結果、国民党政権の時とは異なり、台湾独立の政策が中国との距離を遠ざけています。このようなカントリーリスクに対して、金融や投資は非常に敏感に反応するものです。

一方、円安とは言え、依然として、日本円は、米ドル、ユーロ、円の三大通貨として認識されています。つまり、日本の不動産を通した円への投資は、非常に信用力の強いものと考えられているのでしょう。

中国の不動産投資はバブルだと言われて久しいですが、このような不安定な中国の不動産投資と比べると、世界的に見ても日本の不動産の安定性は抜群でしょう。

日本の不動産価格に関する指標として、不動産価格指標というものがあります。下記は日本の不動産価格指標(引用元:国土交通省)を示しています。

日本の不動産価格指数の上昇率(下落率)の推移

日本の不動産価格指数の上昇率(下落率)の推移

 

グラフは2010年を100とした場合の上昇率(下落率)を示しています。上記の台湾の価格と比較してみてください。台湾の不動産価格が高騰しているのが一目瞭然でしょう。

このようにみると、台湾人の中には高くなった台湾の不動産を売却して、まだまだ安い価格の日本の不動産に投資をしてみようと考える人が増えるのも納得ですね。

 

台湾人にとっての日本ブランドの信用力と強い日本志向

台湾人にとって、日本自体がブランドであるという意識は、まだまだ薄れていません。自動車や家電などの日本製品の品質、日本の大学や大学院への留学、日本のアニメや音楽などのコンテンツの人気、いずれを取り上げてみても、日本はアジアでNo.1の国だという意識はまだまだ健在なようです。

そんな中、台湾人にとっては「日本」自体がブランド価値を持っているのかもしれません。そうなると、日本で比較的割安で(土地も含めた)不動産を所有することができるとなれば、不動産投資に目が向くのも頷けます。たとえ、価格の安い物件であっても、日本の不動産を所有していることは、社会的ステイタスとなりうることでしょう。

 

まとめ

アベノミクスにより、為替相場の円安傾向が加速し、台湾人にとって日本の不動産価格が割安になったという投資環境が整ったこと。

そして、台湾の不動産の投資利回りの低さや不動産価格が過熱気味であること。また、日本の不動産や通貨に対する安定性に加えて、台湾人にとっては日本ブランドや未だに強い日本志向などが相まって、台湾人は投資家のみならず、一般人にとっても日本の不動産投資は魅力的に映るのかもしれません。

 

最後に、最近は非常に身近な台湾人の方からも、日本での不動産投資に関心があるという声を聞くことがあります。特に大金持ちの投資家ではなく、一般的な台湾人の方からですよ。

リーマンショック後に日本の不動産価格も都市部を中心に回復し上昇していることなどがマスメディアで取り上げられていることも一つの要因です。

また、日本で不動産投資をして、2倍以上の不動産価値を手に入れている台湾人の方もいると聞いたことがあります。そのような噂を聞けば、日本の不動産に興味が向かない台湾人の方はいないでしょう。

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